ロバーツ監督に欠ける「きめ細かい判断」 “安直”だったシュワーバー対策…専門家は疑問視

シュワーバー、ハーパーの対左投手打率はいずれも対右投手を上回る
【MLB】フィリーズ 6ー5 ドジャース(日本時間16日・ロサンゼルス)
大谷翔平投手を擁するドジャースは15日(日本時間16日)、本拠地で行われたフィリーズ戦に延長10回タイブレークの末、5-6で惜敗。フィリーズのナ・リーグ東地区優勝が決定した一方で、ドジャースは同西地区首位も優勝マジックが「10」のまま足踏みし、2位パドレスとはわずか2ゲーム差で予断を許さない(成績は16日現在、以下同)。
監督の思惑が裏目に出た。ドジャースはこの日、フィリーズが誇る2人の左打ちの大砲、2番打者のカイル・シュワーバー外野手と3番ブライス・ハーパー内野手を抑えるため、中継ぎ左腕のアンソニー・バンダ投手をあえて今季初先発させた。
しかしバンダは初回1死、よりによってシュワーバーに先制53号ソロを被弾。カウント2-2から、外角のスライダーを右中間席へ運ばれた。ナ・リーグ本塁打王争いでトップを走るシュワーバーは、これで2位の大谷に4本差をつけた。バンダは続くハーパーを四球で歩かせたところで、早くも降板を命じられた。
後を継いだ2番手の右腕エメ・シーハン投手はもともと先発要員で、なんと6回まで無安打無失点(3四球)の快投。3回無死一塁の場面でシュワーバー、ハーパーを連続三振に斬って取ったのは、バンダに賭けたデーブ・ロバーツ監督にとっては皮肉な結果だった。
「シュワーバーもハーパーも、左投手を苦にするような打者ではありません。しかもバンダには、左打者の内角に鋭く食い込むような球種が無い。シュワーバーとしては、ストレートとスライダーを頭に入れておけばいいわけで、安心して踏み込んで打つことができたと思います」。こう指摘するのは、現役時代にNPB通算2038安打を放ち、MLBにも詳しい野球評論家・新井宏昌氏だ。
シュワーバーの対左投手の打率は今季.252、ハーパーは同.278で、いずれも対右投手の打率を上回っている。新井氏は「ロバーツ監督には深い考えがあったのだろうと思いますが、投手起用は右・左だけでなく、相性、データ、現在の調子など様々な面を考慮した、きめ細かい判断が必要になるのは間違いありません」と語る。
「無警戒」延長10回1死一、二塁でダブルスチール決められた
この後も、投手交代は裏目、裏目に出た。3-1とリードして迎えた7回、快投を続けていた2番手のシーハンが先頭打者に初安打(左線二塁打)を許すと、投球数が「94」に達したこともあって、左腕ジャック・ドレーヤー投手にスイッチした。ところが、このドレーヤーが相手の8番打者に中前適時打、9番打者に逆転2ランを喫してしまう。
試合展開は一進一退。4-4の8回、先頭のハーパーに勝ち越しソロを食らったのも、ドレーヤーから4番手の左腕アレックス・ベシア投手への代わり端だった。そして5-5で迎えた延長10回、この回から登板した右腕ブレイク・トライネン投手が1死一、二塁の場面で相手にダブルスチールを決められた後、決勝右犠飛を許したのだった。
「トライネンはもともとモーションが大きい投手ですが、重盗を決められた場面は無警戒でした」と新井氏。「ここにきてドジャースはリリーフ投手陣が総じて振るわず、試合終盤にひっくり返されるパターンが目立っています。それだけにトライネンは、打者を打ち取ることで頭がいっぱいだったのでしょう」と察する。
ドジャースのフィリーズとの今季対戦成績は1勝3敗となった。仮にドジャースが西地区優勝にこぎ着けるとしても、現状では勝率で中地区首位のブルワーズ(.607)、東地区優勝のフィリーズ(.596)を下回っており、このままならポストシーズンは、ワイルドカード3位チームとのワイルドカードシリーズ(最大3試合)から始めなくてはならない。その先の地区シリーズ(最大5試合)では、シードされたフィリーズが待ち構えることになる。
2年連続ワールドチャンピオンを目指すドジャースが苦境を打破するには、リリーフ陣の奮起とロバーツ監督の采配が鍵になりそうだ。
(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)