1時間25分の中断後も続投 日本のエース里が6回1失点の粘投で接戦勝利に導く

カナダ戦で好投した侍ジャパン女子代表・里綾実【写真:Getty Images】
カナダ戦で好投した侍ジャパン女子代表・里綾実【写真:Getty Images】

雷警報で試合前の練習はなし、1回裏に激しい雨で一時中断

 第8回WBSC 女子野球ワールドカップ(米国フロリダ)で6連覇を目指す侍ジャパン女子代表は24日(日本時間25日)、オープニングラウンド第3戦で世界ランク2位のカナダを2-1で撃破した。

 無傷の3連勝の立役者になったのは里綾実投手(愛知ディオーネ)だ。6回を投げて6安打3四球と走者を背負ったものの、1失点と踏ん張り、抑えの田中露朝投手(尚美学園大)につないだ。

「カナダはずっと打倒日本と思ってやってきているので、相手を少しでも有利な状況にしてしまうと、流れが行ってしまう。状況判断しながら冷静にできて良かったです」。満面の笑みでスタンドに手を振った里は、そう言って胸を張った。

 悪天候により、スケジュールが次々に変わる難しい状況を乗り越えた。雷警報のため、ホテル出発は予定より2時間遅れ、試合前の練習はなし。球場に到着して55分後に試合が始まったと思ったら、1回裏の日本の攻撃中に激しい雨のために中断した。1時間25分の中断の間はバスの中で待つしかなかったが、10年から5大会連続出場し、14年と16年にMVPを獲得している大黒柱は動じなかった。

「キャッチボールをするタイミングだけイメージしていました。いつかは試合になる。カナダの守備から始まるし、焦ることはなかったです」

 再開直後に1点の援護をもらうと、2回表のマウンドへ。2四球と内野安で2死満塁のピンチを迎えたが、右飛に打ち取って切り抜けた。2回、3回と味方打線が得点に走者を置きながら無得点に終わると一気にギアを上げる。3回裏に無死満塁機を逃した直後の4回表は3者連続空振り三振でチームを鼓舞した。1点差に迫られ、なおも2死満塁となった6回には、渾身のスライダーで空振り三振を奪い、リードを守りきった。

 試合時間の変更と中断、初めてのマウンド、雨、味方打線の拙攻と次々に課される難易度の高い条件を経験値で見事クリアした。「今日のプレートは硬くて、右足が踏ん張れずに滑る感じでした。蹴ることができないのでコントロールが難しく、四球を出してしまいました。以前はそういうケースで置きにいって打たれたことがありましたが、今日はバッターを冷静に見て、ボールから入ろうとか考えながら投げられました」と、里は振り返った。

 前日の香港戦の23-0の大勝から一転、手に汗握る接戦をものにした。「序盤で守備のミスが出たり、打線も1本が出ず、日本の悪い流れでしたが、勝ちきれた。これをどんどんプラスに捉えて、これ以上悪いプレーはないと思うので、しっかり修正して、日本らしいプレーをしていきたいです」。戦う姿勢を全面に出して日本に大きな1勝をもたらしたエースは、その右腕とタフな精神力でチームを引っ張っていく。

(石川加奈子 / Kanako Ishikawa)

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