WBCの「保険制度」とは? 辞退者続出…適用不可の2つの理由、高騰続ける“保証金”

大量の保険適用外となったプエルトリコ代表はボイコットも示唆
3月に開催されるワールド・ベースボール・クラシック(WBC)。大谷翔平投手(ドジャース)やアーロン・ジャッジ外野手(ヤンキース)ら、球界を代表するスターが国の威信をかけて激突する夢舞台への期待が高まる一方で、「保険」という巨大な壁が影を落としている。なぜ今大会、この問題がこれほどまでに紛糾しているのだろうか。
波紋を呼んだのは1月31日(日本時間2月1日)、プエルトリコ代表の主将フランシスコ・リンドーア(メッツ)ら主力選手8~10人が保険適用外と判定されたニュースだ。これを受け、同代表のジョーイ・ソラ運営責任者は、代役の確保が困難な場合は「大会への不参加も選択肢にある」と言及。開催国の一つである強豪がボイコットを示唆する異常事態となっている。
そもそもWBCにおける「保険」とは、選手自身ではなく、高額な年俸を支払う「球団」を守るためのものだ。負傷欠場中の年俸を保険会社が肩代わりする仕組みだが、審査で「不適格」とされた選手が負傷した場合、球団がリスクを全負担しない限り、その損失は補償されない。前回大会でホセ・アルトゥーベ内野手(アストロズ)やエドウィン・ディアス投手(現ドジャース)らスター選手が重傷を負ったことで保険料が高騰し、審査が極めて厳格化されているのが現状だ。
米スポーツメディア「ジ・アスレチック」のケン・ローゼンタール記者とエバン・ドレリッチ記者は、この保険問題を深く考察。関係者の証言として、審査基準が主に以下の「2つのポイント」に集約されていると報じている。
第一に「直近の手術歴・長期離脱歴」だ。リンドーアはオフに右肘手術を受けたが、現在は完治しキャンプにも万全で臨める状態にある。しかし、保険会社は個人のコンディションよりも「手術の事実」や「60日間の負傷者リスト入り」といった履歴をリスクとして重く見る。
第二に、今大会から導入されたとされる「年齢制限」だ。37歳以上の選手(あるいは補償期間中に37歳に達する選手)は原則として保険対象外とされている。ベネズエラ代表を熱望しながら辞退を余儀なくされた37歳のミゲル・ロハス内野手(ドジャース)は、「ドジャースでプレーできるのに、なぜ代表ではダメなのか」と、現場の感覚と乖離した審査基準に不満を爆発させている。
保険が下りない選手が出場するには、所属球団が「無保険」の状態を承諾し、万が一の負傷時には自ら年俸を肩代わりする覚悟を決めるしかない。2023年にタイガースがミゲル・カブレラに対して行った特例措置はあるが、これは引退イヤーの英雄に対する敬意が背景にあった。現役バリバリのスターに対し、数十億円の損失リスクを負ってまで送り出す決断を下す球団は極めて稀だ。
第1回大会から20年。WBCの価値は高まり、「国のために戦いたい」と願う選手は確実に増えた。しかし、肥大化する年俸と負傷リスク、そして実態にそぐわない保険制度の不整合という構造的な欠陥を解決しない限り、スター選手が「書類審査」で夢を絶たれる悲劇は、今後も繰り返されることになるだろう。
(Full-Count編集部)