練習では森下も中堅へ…亀井コーチ「危機管理として」
3月にWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)を控えている野球日本代表「侍ジャパン」で、“外野の要”の中堅を守るのは誰か──。2023年の前回WBCではラーズ・ヌートバー外野手(カージナルス)が中堅手として大活躍したが、昨年10月に両かかとの手術を受け、今回は不在。打線の編成も絡み、その人選が大会連覇の鍵になるかもしれない。
宮崎合宿で19日、守備練習で中堅に周東佑京外野手(ソフトバンク)と森下翔太外野手(阪神)、左翼に近藤健介外野手(ソフトバンク)とサポートメンバーの中山礼都内野手(巨人)、右翼に佐藤輝明内野手(阪神)が就くシーンがあった。
“メジャーリーグ組”が未合流の現時点でも、侍ジャパンの亀井善行外野守備・走塁コーチ(巨人1軍外野守備兼走塁コーチ)の苦悩は始まっている。「大会では何が起こるかわかりません。とにかく危機管理として、あらゆる準備をしておこうということです。バリエーションをつけて、(井端弘和)監督が使いやすいように。勝つために、何かあった時にもバタバタしないように、準備しておくことが僕の仕事だと思っています」とまなじりを決する。
今回の代表選手のうち、中堅手として最も守備力が高いのは周東だろう。昨季はもっぱらセンターを守り、2年連続2回目のゴールデン・グラブ賞に輝いた。打撃も昨季打率.286をマークしたように進境著しいが、パワーに秀でた外国人投手相手となると、やや分が悪いかもしれない。
また、周東の場合は、ここぞの代走でこそ生きるケースもある。前回WBCの準決勝・メキシコ戦で、1点ビハインドの9回無死一、二塁の場面で一塁走者の代走で登場し、村上宗隆内野手(現ホワイトソックス)がセンターオーバーの大飛球を放つと、二塁走者の大谷翔平投手(現ドジャース)を追い越しそうなほどの快足を飛ばし、逆転サヨナラのホームを奪ったことは記憶に新しい。
昨季カブスで1試合だけ「4番・中堅」でフル出場した
言うまでもなく、チームにとってセンターライン(捕手、二塁手、遊撃手、中堅手)の守備力は極めて重要だが、打線の編成上、“守備優先”の遊撃の源田壮亮内野手(西武)と周東のうち、スタメン起用はどちらか1人にしたい思惑も見え隠れする。
そこで取り沙汰され始めたのが、鈴木誠也外野手(カブス)の中堅起用だ。実は昨年7月21日、鈴木は本拠地リグレー・フィールドで行われたロイヤルズ戦に「4番・中堅」でフル出場している。同僚で普段中堅を守るピート・クローアームストロング外野手が前日の試合で負傷した事情があった。これは鈴木がメジャーでプレーした4シーズンで、唯一中堅を守った試合となっている(右翼では通算342試合、左翼で16試合、指名打者で167試合に出場)。
仮に鈴木が中堅に入れば、左翼もしくは右翼を守れる選手は、吉田正尚外野手(レッドソックス)、近藤健介外野手(ソフトバンク)、前出の森下、佐藤、岡本和真内野手(ブルージェイズ)ら強打者がひしめいており、迫力のある打線が組めそうだ。
亀井コーチは「スタメンでいく人も、途中からいく人も、複数ポジションを守れることが世界一を取るために大事なこと。みんなで助け合いながらやっていきたいと思っています。メジャーの選手については体の状態にもよるので、(合流後に)話しながら決めていくことになります。僕の役割としては、試合が始まり求められた時に、『準備していない』ということがないようにしたいと思います」とあらゆる選択肢を排除しない。
2009年大会出場の亀井コーチ「複数ポジションを守る気持ちはよくわかる」
2021年の東京五輪でも、侍ジャパンは中堅手をめぐってざわついたことがあった。レギュラー中堅手と目されていた柳田悠岐外野手(ソフトバンク)が、大会開幕前に右脇腹の違和感を発症。直前の強化試合で鈴木と近藤が中堅を守り、「意外にコンちゃん(近藤)が上手い」との声が上がった。結局は、柳田が故障を押して東京五輪の全5試合に「6番・中堅」でフル出場し、金メダル獲得に貢献したのだった。
近藤は2023年にスタメンで4試合、森下も同じく2023年に6試合守ったのを最後に、公式戦で中堅の守備には就いていない。今回のWBCで選択肢に入ってくるかどうか……。
昨季二塁手としての出場が多かった牧原大成内野手(ソフトバンク)は、中堅でも17試合にスタメン出場しており、安心して見ていられる。
亀井コーチは「複数ポジションを守る気持ちは、僕もそういう選手でしたから、よくわかります。できる限りのサポートをしていきたいです」と語る。自身は巨人外野手時代の2009年、第2回WBCの日本代表に選出されている。練習では右翼の守備に就くことが多く、“イチロー(現マリナーズ会長付特別補佐兼インストラクター)の控え”と呼ばれたが、実際の大会には3試合に途中出場し、守ったのは左翼だけだった。
日本中の期待を背負いながら、慣れないポジションでも急ごしらえで戦わなければならない国際試合の難しさがここにある。
(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)