合流即ブルペン入りし39球「凄い景色が見られるのだと思う」
3月のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で大会連覇を狙う野球日本代表「侍ジャパン」の宮崎合宿に2月22日、菅野智之投手(ロッキーズ)が合流。いきなりブルペン入りし、捕手を座らせた状態で39球のピッチングを披露した。36歳でチーム最年長となるが、旧知のコーチはメジャーリーグの舞台を1シーズン経験した右腕に、進歩のあとを感じ取った。
「僕は1度も、日本一にも世界一にもなったことがないですから……」。菅野が自嘲的にこう切り出した時、実に意外な気がした。確かに、2013年から2024年まで12年間の巨人在籍中、通算136勝(74敗)を挙げ、MVP3回、沢村賞2回、最多勝4回、最優秀防御率4回など輝かしい実績を残しながら、なぜか日本一にだけは縁がなかった。リーグ優勝にも5度貢献したが、クライマックスシリーズ(CS)で2度、日本シリーズで3度敗退している。
侍ジャパンの一員として出場した国際大会もしかり。2015年の第1回WBSCプレミア12では、菅野が登板しなかった準決勝の韓国戦でチームは逆転負け。2017年の第4回WBCでも、菅野は準決勝の米国戦に先発し6回3安打1失点(自責点0)に抑えたが、チームは1-2で競り負けた。
それだけに、今回のWBCに懸ける思いには並々ならぬものがある。「(優勝すれば)きっと凄い景色が見られるんだろうなと思っているので、なんとか力になれるように、しっかりやっていきたいと思います」と力を込めた。
そんな菅野が合流初日から腕を振ったブルペン投球。19球目以降は実戦を想定し、村田善則バッテリーコーチ(巨人バッテリーチーフコーチ)が左打席に立った。
村田コーチは菅野の巨人在籍中ずっと、スコアラーあるいはコーチとして関わった。菅野が出場した2017年の第4回WBCでも侍ジャパンのコーチとして共闘している。その村田コーチの目に、この日の菅野の投球はどう映ったのだろうか。
村田コーチ「こういう風に使っているの?」…菅野「そうです」
「配球のことだから、詳しくは言えないのですが……」と断った上で、村田コーチはこう明かす。「コースの使い方や、球種の使い方が変わったなと思いながら、打席の中で見ていました。投球後、僕が『こういう風に使っているの?』と聞いたら、(菅野)智之が『そうです』と答えるみたいな感じで、確認もできました」
2024年オフに巨人から海外FA権を行使しオリオールズ入りした菅野は、メジャー1年目の昨季、35歳の“オールドルーキー”として30試合に先発し、10勝10敗、防御率4.64と健闘した。村田コーチが目にした菅野の変化は、メジャーの猛者たちを抑える上で必要不可欠なものだったのだろう。
「智之には多分、メジャーでプレーしている選手の特徴がもうわかってきているのだろうと思います。それを踏まえた上で、こういう風なピッチングスタイルに変えたのだなと思いながら見ていました。引き出しをどんどん増やしていると感じます」と推察する。菅野が得た“メジャーの強打者を抑える術”はそのままWBCで役立ち、他の選手にとっても貴重な情報となる。
菅野自身には1次ラウンドもさることながら、準々決勝以降、ドミニカ共和国、ベネズエラ、カナダ、プエルトリコ、米国など、NPBの選手が名前負けしてしまいそうなメジャーリーガーを多数擁する強豪国を相手に、先発して抑え切る役割が求められそうだ。
「責任あるポジションを任せていただいたので、結果で応えたいと思います」とキッパリ。自身の悲願成就のためにも、負けられない戦いが始まる。
(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)