WBCで時の人→直後の試練「腹が立った」 オリ宇田川の今…忘れぬダルビッシュの言葉

オリックス・宇田川優希【写真:北野正樹】
オリックス・宇田川優希【写真:北野正樹】

宇田川優希が振り返るWBC、その後に待っていた苦悩

 前回のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で世界一に貢献したオリックスの宇田川優希投手が、トミー・ジョン手術(TJ)からの復活、その先にある支配下再登録を目指し調整を続けている。

「また、ああいうところで野球をしたいので、イチから上り詰めていきたいと思います。ただ、先は見すぎず、目の前のことをしっかりやろうと思っています」。野球日本代表「侍ジャパン」と中日との強化試合が行われた27日、月に一度の肘の診察を終えた宇田川が、大阪の球団施設・舞洲で静かに口を開いた。

 宇田川は2020年育成ドラフト3位で仙台大から入団。150キロ超の直球とフォークを武器に実績を重ね、2022年7月末に支配下登録されると、中継ぎとして19試合に登板し2勝1敗3ホールド、防御率0.81でリーグ連覇に貢献した。2023年1月末には第5回WBCの日本代表に選出され、2試合の登板で打者4人に対し被安打0、3奪三振、無失点。決勝ラウンドでは登板機会はなかったものの、ブルペンで何度も肩を作り準備を続けるなど、陰で世界一を支えた。

 支配下登録から半年余りで日本代表に選出され、世界一に貢献し日本中の野球ファンに名を知られることになった宇田川。目覚ましいキャリアアップに“シンデレラボーイ”と呼ばれることもあったが、努力を怠らず目の前のチャンスを確実につかんできたことが躍進の秘密だ。

「WBCで、憧れのダルさん(パドレス・ダルビッシュ有)や大谷(翔平)さん(ドジャース)に出会えたのは、不思議な感覚でした。テレビの(中の)人なんで。代表に入るのはWBCが初めて。支配下になって半年で選ばれたというのは、すごく夢があるなと思います。自信もつきました」と振り返る。

 ただ、その後は順風満帆とはいかなかった。WBCから帰国後、初めて開幕を1軍で迎えたが、上半身のコンディション不良で2軍落ち。状態は上がらず再昇格に1か月半を要した。「2軍でも抑えられなくて何をしてもうまくいかず、どうしたらいいのか分からなくなり、パフォーマンスを出せない自分にすごく腹が立ったこともありました。今、思えばただの知識不足。勢いだけでやってきて、勢いが消えた時にすごく悩んでしまって」。この年、最終的には46試合に登板し、4勝0敗20ホールド、2セーブ、防御率1.77でリーグ3連覇に貢献した。

ダルビッシュに感謝と憧れを抱くも「頼り過ぎるのは違うのかなと」

 しかし、その後も怪我に見舞われた。2024年9月には、ブルペンで1球も投げないまま緊急登板した試合で右肘を痛め、5球で降板。中継ぎ登板していた吉田輝星投手が右肘の違和感を訴えて降板した直後の登板だった。初球で違和感があったが、ブルペンで控える投手陣に迷惑をかけるわけにいかないという責任感で続投したことが裏目に出た。「あの試合が(TJ手術の)きっかけになったのは事実なのですが、いずれ(大きな怪我を)やっていたというのはあります」と語り、自らと向き合った。

 今年2月、1軍は宮崎で春季キャンプを行っていたが、宇田川は故障や怪我明けのリハビリ組10人余りと舞洲で残留し、復帰に向け調整を続けた。12月中旬からブルペン入りし、2月27日には60球を投じ、初めてフォークも交えた。「打席に立ってもらって確認しましたが、落ち(幅)もよく、試合で投げられる体に戻っている感じがします」と表情も明るい。投球後、背中が張るタイプだったが、フォームを崩してからは肘や肩が張ることが多かった。「いいフォームで投げているからこそ、背中に張りが来ていると思います。いい反応がどんどん増えてきています」と復調を実感している。

 憧れだったダルビッシュには、いまでも感謝しかない。宇田川のシャイな性格を知るWBCの厚澤和幸投手コーチ(現オリックス投手コーチ)が、日本ハム時代に指導していたダルビッシュに紹介してくれてから、声を掛けてもらえるようになった。オリックスの中嶋聡監督(当時)が、宇田川の体重増加を指摘していたことを知っていたダルビッシュの第一声は「(太った投手は)アメリカにはいっぱいいるからね」だった。「ちょっと前まで育成選手だった自分にまで『フォークはどうやって投げているの』『どういう意識でマウンドに立っているの』などと聞いてこられるんです。また、自分の調整があるのに、いろんな選手にアドバイスをしたり、気遣いをされたりするところも尊敬しています」。

 2度目のTJ手術を受け、同じように再起を目指すダルビッシュには、新年の挨拶となるメッセージを送った以降、連絡は取っていない。「ダルさんは優しいですから、僕の相手をしてくださると思います。本当に尊敬していますし、憧れの人でもあるのですが、頼り過ぎるのは違うのかなと思って。次に連絡を入れるのは、支配下になってからですね」と今後を見据える。

「WBCは本当に気になりますし、見たい思いもあるし、応援もします。でも、本戦が始まるころには自分も対バッターでやっているので、そこは自分のことを頑張ろうと思っています」。日本中がWBCで沸くなか、宇田川は復活に向け本格的なスタートを切る。

(北野正樹 / Masaki Kitano)

RECOMMEND

KEYWORD

CATEGORY