近藤健介の復調を「待っていられない事情も」 専門家が深慮…指揮官の心情「胃に穴が空く」

驚異の出塁率「状態が上がってくれば絶対に外したくない凄い選手」
野球日本代表「侍ジャパン」は14日(日本時間15日)に米マイアミで、第6回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の準々決勝・ベネズエラ戦に臨む。大谷翔平投手(ドジャース)をはじめ、MLB所属の猛者が並ぶ強力打線にあって、心配されているのが、東京ドームでの1次ラウンドを12打数無安打1四球で終えた近藤健介外野手(ソフトバンク)の状態だ。果たして準々決勝以降もスタメンに名を連ねるのだろうか──。
「井端(弘和)監督にとっては、本当に悩ましい問題です。胃に穴が空く思いだと思います」。こう指揮官の心境を思いやるのは、現役時代に日本ハム、阪神など4球団で捕手として活躍した野球評論家・野口寿浩氏だ。
「状態が上がってくれば絶対に外したくない、凄い選手なのです。一方で、準々決勝以降は負ければ終わりのトーナメントですから、復調を待っていられない事情もある。さらに、ここまで来ると近藤のメンタルも心配です。この状態で日本が負けたら“戦犯”扱いされかねず、重圧は計り知れません」と続ける。
近藤は1次ラウンドでは初戦のチャイニーズ・タイペイ戦と2戦目の韓国戦で、1番・大谷の後の2番を任され、計8打数無安打1四球。3戦目のオーストラリア戦では大谷と離され3番を務めたが、4打数無安打。4戦目のチェコ戦は欠場し休養を取った。
とはいえ、過去に首位打者、本塁打王、打点王に1度ずつ輝いている他、最高出塁率のタイトルを4度も獲得しているように、驚異的な出塁率を誇る。腰の手術などで75試合出場にとどまった昨季も、出塁率は.410。この抜群の実力は捨てがたい。
野口氏は「現状では微妙にタイミングがずれています。近藤は今年から打撃フォームを少し変え、グリップの位置を高くしています。フォームを変えた時というのは、最初うまくいき始めてから、必ず調子が落ちる時期が来るものです。そこからまた上げていくのですが、今は“底”の時期にあたるのではないでしょうか」と不振の原因を分析する。
日本が優勝する時には、」不振の左打者が決勝Tで大殊勲の働きをする?
対戦するベネズエラの先発が、左腕のレンジャー・スアレス投手(レッドソックス)と発表されていることから、「左打ちの近藤を右打ちの森下(翔太外野手=阪神)に代えるのも一手だと思います」と野口氏。
一方で「近藤が試合を迎えるまでの数日の練習で、おっ、というところを見せてくれたら、スタメンで使い続ける可能性も十分あるでしょう。その場合も、打順だけは(2番とは)変えてあげてほしい気がします」とも。
勝負どころになるほど、四球で歩かされるケースが増える大谷の直後の打順は、過酷な重圧にさらされる。野口氏は「大谷の後は、オーストラリア戦で結果が出た(鈴木)誠也(外野手=カブス)でいいと思います(2番で2打数無安打も押し出しを含む3四球)。1番・大谷、2番・誠也でもいいし、2番・大谷、3番・誠也でもいい。一方、近藤を使う場合は、大会前のオリックスとの強化試合でそうであったように、大谷の前の1番でいいと思いますし、6、7番に下げてもいい」とシミュレーションする。
ちなみに過去、WBCで日本が優勝した時には必ず、不振に陥っていた左打者が決勝トーナメントで大殊勲の働きをしてきた。
2006年の第1回大会では、第1・第2ラウンドで不振に陥り、準決勝・韓国戦でスタメンから外れた福留孝介氏(中日)が、両チーム無得点で迎えた7回に代打決勝2ラン。2009年の第2回大会でも、不振だったイチロー氏が韓国との決勝で、延長10回に決勝2点適時打を放った。2023年の前回大会でも、1次ラウンドの打率が.143だった村上宗隆内野手(当時ヤクルト、現ホワイトソックス)がメキシコとの準決勝で、1点ビハインドの9回に逆転サヨナラ2点二塁打。米国との決勝でも1号アーチを放った。その系譜に近藤が名を連ねてもおかしくない。
「僕ら評論家は好き勝手に意見を言わせてもらっていますが、選手の起用は監督の専権事項ですから、井端監督が思うとおりに貫き通してもらえればいい。その決断に対して、終わった後での批判はしたくないですし、してはいけないと思います」と述懐する野口氏。それほど難しい決断を、指揮官は迫られている。
(尾辻剛 / Go Otsuji)