侍Jコーチが衝撃「失礼ながら全く知らない情報」 大谷の通訳とは別の顔…「ドジャースの頭脳」が授ける戦略

戦略スタッフとして侍ジャパンを支えるウィル・アイアトン氏【写真:小林靖】戦略スタッフとして侍ジャパンを支えるウィル・アイアトン氏【写真:小林靖】

ドジャースのウィル・アイアトン氏は、戦略スタッフとして侍ジャパンの一員に

 野球日本代表「侍ジャパン」は13日(日本時間14日)、ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)準々決勝・ベネズエラ戦へ向けてローンデポ・パークで最終調整した。ベネズエラは30人のうち25人がメジャーリーガー。ロナルド・アクーニャJr.外野手(ブレーブス)、ルイス・アラエス内野手(ジャイアンツ)らを擁するスター軍団を撃破するために欠かせないのが、戦略スタッフとして侍ジャパンに参戦しているウィル・アイアトン氏の存在だ。

 大谷翔平投手の通訳として知られるアイアトン氏は、ドジャースで編成部選手育成・能力開発の主任を務めている。試合前のミーティングでは、相手投手・野手の配球や戦略などを伝達。果たしてミーティングの中身は、どんな内容なのか? 吉見一起投手コーチは「もう本当に、失礼ながら全く知らない情報ばかりでした」と驚きを隠さない。

「『知識ないな、僕』と思いました。打者の傾向や攻め方というのは、日本の野球でも理由や根拠があるんですけど、そんなレベルではなくて。『初球はこのボールを使おう。2球目はこれ』というふうに明確に指示を出してくれるんです」

 2013年WBCの予選でフィリピン代表としてプレー経験があるアイアトン氏は、2016年に前田健太投手の通訳としてドジャース入り。2019年から傘下3Aオクラホマシティでデータコーチに転身し、翌2020年にパフォーマンス・オペレーション担当としてメジャー昇格。相手チームを徹底的に調べ上げ、いわば「ドジャースの頭脳」として3度のワールドシリーズ制覇に貢献した。吉見コーチに言わせれば、アイアトン氏の戦略ミーティングは、日本のプロ野球とは明らかに違うものだという。

侍ジャパンの吉見一起・投手コーチ【写真:小林靖】侍ジャパンの吉見一起・投手コーチ【写真:小林靖】

吉見投手コーチも衝撃「ただただ、すごいなと。ビックリしました」

「日本だったら『この打者は初球から打ってくる』『初球は待ちが多いけど、150キロ台のストレートだったら打ってくる』とか、それぐらいの情報しかなかった。ウィルさんは『初球はこれでいきましょう。なぜなら理由はこうだから』『この球種とコース、配分はこうしましょう』とか。すごくプログラムがしっかりしていました」

「日本でもデータ担当はいるんですけど、そこまでは言わないです。バッターの傾向とか、打てるゾーン・打てないゾーン、特徴、走塁とか。そういうことがメインだったんですけど、ウィルさんはそれにプラスして、具体的な攻め方を提示してくれるんです。理由や根拠もしっかりしていて、ただただ、すごいなと。ビックリしましたし、聞いていて新しい発見ばかりでした」

日本のファンにとっては大谷翔平の通訳のイメージが強い【写真:荒川祐史】日本のファンにとっては大谷翔平の通訳のイメージが強い【写真:荒川祐史】

 アイアトン氏によるバッテリーミーティングは試合前に30分かけて行われるという。アイアトン氏から送られる情報は徹底したものだという。中日で2度の最多勝に輝くなど技巧派右腕として鳴らした吉見コーチも、衝撃的だったという。

「打順の1巡目、例えば9番打者への初球、2球目、3球目ぐらいまでは、投げる球が全部決まっています。『ボール、ボールになったら、どうするんだろう』と思っていたんですけど、『ボール、ボールでもカーブでいきます』と決まっているんです。そういうことも初めて知りました。『全部決めているんだ』って。2巡目以降は話していません。それはまた試合中に変わってくるので」

「バッターの特徴とかが全て数値化されています。もちろん感性も大事になってくるし、『投手も嫌なら首を振ればいい』と思います。ただ、あらかじめ全て決めておくというのはいいことだな、と今は思っています」

井端監督から侍ジャパン入りを求められ「是非と即決した」【写真:小林靖】井端監督から侍ジャパン入りを求められ「是非と即決した」【写真:小林靖】

 フィリピン出身の母と日米ハーフの父を持つアイアトン氏は1年半以上前に井端弘和監督から侍ジャパン入りを求められ、「東京生まれ、東京育ち。本当にありがたい機会ですし、是非と即決した。迷うことは何もありませんでした」と話す。ドジャースで同僚の山本由伸投手は「とにかく多才な方。ゲームプランも一緒に作ってくれる。いつもと変わらないように整えていただいた」。3回途中無失点と試合を作った6日のチャイニーズ・タイペイ戦前に、こんな感謝の言葉を述べている。

 準々決勝以降は各国代表とも一流メジャーリーガーがいる。「ドジャースの頭脳」として活躍してきたアイアトン氏の存在はWBC連覇を目指す侍ジャパンの大きなアドバンテージとなる。

(小谷真弥 / Masaya Kotani)

RECOMMEND

CATEGORY