大谷翔平、侍に全身全霊捧げた18日間 初戦・満塁弾、2戦連発→“お返し弾”も、無念に散った終幕

WBCで躍動した侍ジャパン・大谷翔平【写真:Getty Images】
WBCで躍動した侍ジャパン・大谷翔平【写真:Getty Images】

大会13打数6安打3本塁打の打率.462、OPS1.842で終幕

 歓喜の優勝から3年。世界一の称号を胸に戦った男は、今度は“敗者”としてその結末を見届けるしかなかった。野球日本代表「侍ジャパン」は14日(日本時間15日)、ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)準々決勝・ベネズエラ戦に5-8で敗れた。最後の打者となったのは、他でもない大谷翔平。彼が打ち上げた力ない遊飛が27個目のアウトになった瞬間、日本野球界にとって最も熱く、そして最も残酷な18日間が幕を閉じた。

 大谷は昨年11月、自身のインスタグラムで侍ジャパンへの参加を表明した。2023年の前回大会は投打二刀流でチームを牽引し、決勝・米国戦では胴上げ投手になった。感動から3年、大谷が再び侍ジャパンのユニホームに袖を通したのは2月26日だった。

 アリゾナ州でのトレーニングとオープン戦をこなして2月24日に帰国。その後、バンテリンドームでの練習に参加した。3月2日の強化試合から試合出場が解禁されたが、まさかのノーヒットで本番を迎えることになった。状態を案ずる声もあったが、それは彼にとって、ただ本番の熱狂へと感覚を研ぎ澄ますための静かな時間に過ぎなかった。

 3月6日、1次ラウンド初戦のチャイニーズ・タイペイ戦。大谷は「1番・指名打者」として、初回の第1打席でいきなり初球を叩いた。右翼線への二塁打。塁上で仲間と約束した「お茶点てポーズ」を披露すると、球場の熱気は一気に沸点へと達した。さらに2回、1死満塁の絶好機で右翼席へグランドスラムを叩き込んだ。今大会の日本代表の初得点は、スターが最高の形で刻んだ。

 7日の韓国戦では2-3の3回に完璧弾を叩き込んだ。直後には侍ベンチに向かって“落ち着け”とのジェスチャーを送った。試合後、「みんなが先制されて『やばい、やばい』となって、急ぎがちなリズムっていうのがあったので。ベンチ内で感じたそれを少し同点になったことで『ちょっと落ち着いていこうか』っていう、そういうメッセージというかベンチへの声かけだったかなと思います」と真意を明かした。

 日本代表の顔としての自覚。大谷の振る舞いからは随所に滲み出ていた。試合前にはシーズン中でも珍しいフリー打撃に登場して豪快アーチを連発。キャッチボールなどで汗を流したあとは観客に向かってボールを投げ込むなど、ファンサービスも忘れなかった。

 日本が4連勝でグループリーグを突破したあとは、そのままチャーター機でマイアミに向かった。同級生の鈴木誠也外野手とイジリあいをしたり、自身がアンバサダーを務める「Beats」のヘッドホンをナインにプレゼントしたりと、チームの士気を高めることも忘れなかった。すべては、再び頂点に立つために――。

ベネズエラ戦、最後の打者となった侍ジャパン・大谷翔平【写真:Getty Images】
ベネズエラ戦、最後の打者となった侍ジャパン・大谷翔平【写真:Getty Images】

アクーニャの先頭打者弾後にお返しの一発…最後は遊飛に終わった

 負けたら終わりの準々決勝。先発の山本由伸投手がいきなり先頭打者アーチを被弾するまさかの展開となった。しかし、大谷は違った。ベンチでは“OK、わかった”と言わんばかりに頷き、そして打席に向かった。役者が違った。苦手として左腕スアレスから右翼席へ確信の一発。一瞬にして空気を変えた。

 だが、野球の神様はそこから厳しい試練を与えた。以降の打席は申告敬遠と2つの三振。そして3点を追う9回2死。球場の全視線が背番号16に注がれる中、大谷が放った打球は、願いも虚しく内野の頭を越えることはなかった。 打った瞬間、大谷は“終わり”を悟った。力なく、ゆっくりと一塁へ向かうその姿は、あまりに切なかった。

 侍ジャパンにとって“最低順位”となるベスト8での敗退。試合後、ベンチの隅で一人、道具を片付けながら裏に戻る大谷の姿があった。それは、誰よりも「勝ち」を信じ、全力を尽くした男の、あまりに早すぎる終戦だった。

「本当に悔しいの一言」

 誰の目にも大谷がチームを牽引していたのは明らかだったが、大谷は自分を責めた。「優勝以外は負け、というか失敗。監督もスタッフもそこを目指して頑張っていたので、こういう形で終わってしまうのは非常に残念です」。

 名古屋での合流から始まった18日間の旅。最高の輝きで幕を開け、最悪の悔しさで幕を閉じた。しかし、大谷は最後、こうも付け加えた。「必ず次があるので」。

 マイアミの夜風の中、静かに球場を後にしたその背中は、この屈辱を糧にさらなる高みへ登ることを誓っているようだった。

(Full-Count編集部)

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