“判断遅れ”が招いた悲劇…投手登録15人→14人に 大谷翔平が久々に味わった“敗者の現実”|侍の誤算。#2

大谷翔平【写真:小林靖】大谷翔平【写真:小林靖】

侍ジャパンはWBC準々決勝敗退、第6回大会で初の屈辱となった

 薄暗い通路で、悔しさをにじませた。早すぎる終戦。「失敗」「力不足」……。淡々とした口ぶりとは裏腹な強い言葉が、現実を直視させた。

  ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)連覇が宿命づけられた、野球日本代表「侍ジャパン」。14日(日本時間15日)に迎えたベネズエラとの準々決勝に逆転負けで散った。試合後、大谷翔平投手が、言葉を紡いだ。

「本当に悔しいの一言。惜しいゲーム。勝てる要素も多いゲームだったと思うので。本当に全部押し切られたというわけではない。ところどころ勝てる要素があったんじゃないかなと思う」

 バットで引っ張った。1点を追う初回、左腕のスアレスから先頭打者弾。大会通算4本目は吉田正尚に並んで日本人最多だった。3回1死二塁では申告敬遠で勝負を避けられたが、続く佐藤輝明の右翼線適時二塁打で同点に。途中出場の森下翔太の勝ち越し3ランにもつながった。試合の主導権を握ったが、4回1死一、二塁では空振り三振。打線は大谷の三振から13者連続アウトと完全に流れを失った。

1点を追う初回、先頭打者弾を放った大谷翔平【写真:荒川祐史】1点を追う初回、先頭打者弾を放った大谷翔平【写真:荒川祐史】

「あそこで一本出ていれば、もう少し違う展開になったのも事実だなとは思う。自分の力不足も含めて、そこも勝てる要素の一つだったんじゃないかなと思います」

 2023年WBCで自身初の世界一を経験。メジャーでは3年連続MVPに輝き、チームもワールドシリーズ連覇とまさに全盛期で今大会を迎えた。

 だが、2025年は投手復帰1年目でワールドシリーズまで投打にフル回転してきたこと、さらに長期的な二刀流の実現を見据えた中で、今大会は投手として登板回避。大谷本人は「納得している」と語っていたが、二刀流出場ができていれば、投手力に泣いた今大会も変わっていたはずだ。

大谷の登板回避が決まったのは1月末、最終ロースター選考に影響も

 登板回避の“判断遅れ”もチームに影響を及ぼした。各チームとも2月3日までに最終ロースターの提出が義務づけられる中、大谷の登板回避が決まったのは1月末とギリギリだった。投手・大谷を起用できるかハッキリしなかったことは、ロースター選考に少なからず影響したのも事実だ。

 井端弘和監督は二刀流・大谷の実現を望む一方、「投手はボールへの調整がある。早めに通達しないといけない」と語っていた。大谷はメジャーでもエース級の能力を持つだけに簡単には諦めにくいが、仮にもっと早い段階で分かっていれば、今大会で14人だった投手登録を前回大会と同じ15人にするなど、投手陣に厚みを持たせることも可能だった。

「代表戦はもちろんリベンジというか、また挑戦したい。どういう形で次に出場できるか。自分自身も含めてわからないですけど、次の機会にまた集中したいなと思います」

試合後に取材対応する大谷翔平【写真:小谷真弥】試合後に取材対応する大谷翔平【写真:小谷真弥】

 試合後、大谷は野球が復活する2028年ロサンゼルス五輪への出場意欲を語ったものの、持ち味である二刀流として出場できるかは、もちろんハッキリしない。次回の国際大会でも、その起用法の決定は難航するのは間違いないだろう。ただ、1日でも早く起用法を決めることは、強固なチーム作りにつながることを忘れてはならない。

 まさかの準々決勝敗退。打者専念で臨んだ2026年WBCは、大谷にとってどんな大会になったのか。大会連覇へ大きなプレッシャーを感じていたようだ。

「素晴らしい経験ではありましたけど、優勝以外はやっぱり失敗というか。結果的にはそうなるんじゃないかなと思ってます。みんな優勝だけを目指して頑張ってましたし、監督、コーチ、スタッフ、裏方の人たちもそこを目指して頑張ってきたので。こういう形で終わってしまうのは非常に残念ですけど、必ず次があるので。そこに向けてまた頑張りたいなと思います」

 ドジャース移籍後はずっと勝ってきた。久々に味わった敗者の悔しさを胸に、二刀流が再出発する。

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 WBC連覇を逃した敗因に迫る緊急連載「侍の誤算。」。現場で目撃した舞台裏と、専門家やデータによる分析で検証する。
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(小谷真弥 / Masaya Kotani)

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