大谷翔平が「笑顔で寄ってきたのは驚いた」 死球めぐる“価値観”に一石…敵軍大砲の思い「僕らのお手本」

死球直後、一塁でサンタナに笑顔を向ける大谷翔平【写真:荒川祐史】死球直後、一塁でサンタナに笑顔を向ける大谷翔平【写真:荒川祐史】

開幕戦で右肘付近に死球を受けた大谷翔平、本拠地は不穏な空気も…

 ヒヤリとする場面だった。26日(日本時間27日)のダイヤモンドバックスとの開幕戦。ドジャース・大谷翔平投手が迎えた7回先頭の第4打席だった。右腕テーラー・クラークが投じた93.2マイル(約150.0キロ)のカットボールが右肘付近へ。エルボーガードに当たって事なきを得たが、本拠地は瞬く間にブーイングが響いた。

 周囲の注目を集めたのは、大谷のその後の対応だ。まずは一塁へ向かう際に「次はオマエだ」と言わんばかりの表情で、一塁を守るカルロス・サンタナを右手人差し指で差す。その後に満面の笑みを浮かべた。死球で漂った不穏な空気は、大谷のユーモアで一瞬にしてなくなった。

 開幕戦から一夜明け、大谷とやり取りをしていたサンタナに死球後の笑顔について聞いた。メジャー17年目、通算335本塁打を誇る39歳のベテランには驚きだったようだ。

「彼は本当に楽しんでプレーしているよね。いつも笑顔なんだ。彼が一塁に来た時は、いつも色々なことを話しているけど、死球を受けた後に彼が笑顔で寄ってきたのは少し驚いたよ。本当にナイスで面白い男だよね」

 死球をぶつけてしまったクラークは、最初は複雑な気持ちだった。

「カットボールを内角高めに投げようとしていた。いい球を投げようとして、少し力が入り過ぎてしまったんだ」。相手は昨季55本塁打を放ったリーグ屈指のホームランバッター。封じるために厳しい内角攻めは欠かせないが、大谷は自らと同じ投手でもある。死球も当たりどころが悪ければ、戦線離脱になりかねない。それでも、大谷の笑顔に救われたようだ。

「彼が怒ってなくて良かったよ。もちろん、わざとやったわけではなく、手元が狂ってしまった。何より彼に怪我がなく、冗談にできるくらいの様子だったので安心した。無事で本当に良かった」

 一夜明けても申し訳なさそうだったが、ホッと一安心の様子だった。

死球後に相手主砲に「明日な」…怒らず、ユーモアに変える力

 大谷と死球。これまでもその対応には、何度も驚かされた。エンゼルス時代の2022年10月4日(同5日)のアスレチックス戦。左腕アービンから右上腕付近に死球を受けた際、一塁ベース付近で主砲セス・ブラウンへ「トゥモロー(明日な)」と声をかけた。大谷は翌日が登板日だったため、ブラウンは「僕には投げないで」と祈るような目で見つめ、2人は笑顔でハグをした。

パドレス戦で死球を受けるもドジャースベンチをなだめる大谷翔平【写真:アフロ】パドレス戦で死球を受けるもドジャースベンチをなだめる大谷翔平【写真:アフロ】

 死球合戦となった2025年6月19日(同20日)のパドレス戦で死球を当てられた際には、ドジャースベンチに向かって無事を強調。カーショーら同僚が飛び出しそうな勢いだったが、「出てくるな」とばかりに手で制した。その後はパドレスベンチへ歩み寄り、塁上ではイグレシアスと笑顔で会話。一つ対応を間違えば、乱闘になりかねない険悪なムードだったものの、自らの咄嗟の行動で騒動を抑えた。

 メジャーでは両軍から退場者を出すほどの激しい乱闘は付き物。乱闘が起きれば、全員参加などの暗黙のルールもある。それでも、サンタナは言う。

「彼と同じチームでプレーしたことはないけど、本当に素晴らしい選手だし、何よりナイスガイだと思っている。野球をしていれば、死球を受けることだってある。投手なら誰だって抑えたいし、打者なら誰だって打ちたい。でも、彼は僕らにとってお手本のような存在だね。死球を受けた時でさえも、いつも、ああいった笑顔でプレーできたらいいね」
 
 野球に乱闘は不要――。大谷は少しずつ世界の“価値観”を変えつつある。

(小谷真弥 / Masaya Kotani)

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