一発頼みの打線、侍Jから消えた“日本の良さ” いまだからこそ…元MVP捕手の厳しい指摘

侍ジャパン・大谷翔平【写真:荒川祐史】
侍ジャパン・大谷翔平【写真:荒川祐史】

3球団で活躍した中尾孝義氏が振り返るWBC

 第6回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で、連覇を狙った野球日本代表「侍ジャパン」は、準々決勝でベネズエラに敗れ、史上初のベスト8敗退となった。あの日から約半月……1982年に中日で優勝しMVPに輝くなど、巨人、西武と3球団で名捕手として鳴らした野球評論家の中尾孝義氏に、今回のWBCを振り返ってもらった。

 侍ジャパンは、東京ドーム開催の1次ラウンドは4戦全勝で終えた。初戦のチャイニーズ・タイペイは13-0とコールド、韓国には8-6と打ち勝った。オーストラリア戦は4-3で逃げ切り、最後のチェコ戦は8回に打線が爆発し9-0で勝利。中尾氏は「初めて当たる投手は、(球筋が読めないので)打者にとっては難しいものなんです。そんな中でも日本は全部勝ちましたからね」と評価した。

 決勝ラウンドは負けたら終わり。1球の重みがより増してくる中、米国ローンデポパークで行われた準々決勝で、侍ジャパンはベネズエラに5-8で逆転負けを喫した。キャッチャー出身の中尾氏は、若月健矢捕手(オリックス)のリードに注目していた。

「勝負所で打たれた2本のホームランは、どっちも真っ直ぐでしたよね。高くて真ん中近辺。配球の面で……うーん、どうだったのかな」

“勝負所”はまず5回。5-2で迎えたこの回から登板した隅田知一郎投手(西武)が、1死一塁で迎えたマイケル・ガルシアに、カウント2-2から3球ファウルで粘られた後の8球目を左中間席へ運ばれた。続く6回も4番手の伊藤大海投手(日本ハム)が、無死一、三塁からウィルヤー・アブレイユに右翼へ特大の本塁打を運ばれた。

 この場面を中尾氏は「あの2人に対して、ホームランを打たれる直前に変化球を使っていました。ベネズエラはストレートに強い選手が多かったし、(WBCでの)隅田、伊藤ぐらいのスピードだと、向こうの選手にとっては打ち頃のボールです。真っ直ぐを投げるなら完全にコントロールされてないと。直球が甘くなった時と変化球が甘くなった時の打たれる確率は、真っ直ぐの方が高いんですよ。高めの速球が絶対に悪いわけではないですが……。もう1つ2つ上にいけばファウルになった可能性もありました」と振り返った。

侍ジャパン・井端弘和監督【写真:荒川祐史】
侍ジャパン・井端弘和監督【写真:荒川祐史】

苦境を打ち破るには日本ならではの“戦術”も大切

 2発で試合をひっくり返された。どうしてもパワーの印象が強烈に残るが、中尾氏の視点は違う。「相手打線は低めを捨ててましたよ。チーム一丸でやっていて、それが正解と出た。日本のバッテリーは低めをなかなか振ってくれないから、ストライクゾーンで勝負せざるを得なくなってました」。ベネズエラ首脳陣の指示が、細やかで徹底していたと分析した。

 中尾氏は、スピードスター周東佑京外野手(ソフトバンク)の起用についても言及した。「走攻守3拍子揃っている。足が速いし、広角に打てるし、パンチ力もある。バッテリーからしたら本当に嫌な存在なんですよ。ベネズエラ戦は足のスペシャリスト、切り札のため待機してたんでしょうけど……」。結局、準々決勝で、周東の出番は訪れなかった。

 今大会を通じての攻撃陣を、中尾氏はこう振り返る。「もちろん、ホームランが出るのはいい事。ただ、それ以外の形での得点が少なかった。エンドランで好機を広げていくとか。痺れる試合って、そうそう打てるもんじゃない。そういう苦境を打ち破るには動ける選手、流れを持ってくる戦術を使いたい。そうでないと9イニングなんてすぐ終わってしまう。これまで培ってきた日本の野球の良い点も大切だと思います」。振り返ってみると、ベネズエラは、アブレイユの逆転弾の直前に、エンドランで一、三塁とチャンスを広げることに成功していた。

 侍ジャパンにとって8強止まりは悔しい結果と言える。ただ中尾氏は「国際大会ですからね。簡単にはいきません。井端(弘和)監督も選手たちも、みんなよく頑張りましたよ」と労った。続けて「監督、選手の責任じゃないです。今回のWBCでの経験を各々が成長の糧にすれば大丈夫です」と語り、次のWBCでのリベンジに期待した。

(西村大輔 / Taisuke Nishimura)

RECOMMEND