交代“拒否”で執念の完投「後がある立場ではない」 屈辱阻止したベテランの矜持

山井コーチの打診を拒否…自分に懸けた9回のマウンド
■中日 2ー1 巨人(2日・バンテリンドーム)
修羅場を潜り抜けてきた左腕の真骨頂だった。中日は2日、バンテリンドームで行われた巨人戦に2-1で勝利し、開幕からの連敗を5で止めた。先発した大野雄大投手が9回111球、1失点の完投勝利。プライドの滲んだ投球で、屈辱を回避した。
試合は1時間55分で9回に突入する超高速の投手戦。大野は8回までわずか2安打無失点と完璧な投球を見せていたが、9回に代打・増田陸内野手に二塁打を浴びると、トレイ・キャベッジ外野手の左前打を左翼手の細川成也外野手が失策。1点差に詰め寄られ、なおも同点の走者を背負った。
ここで山井大介投手コーチがマウンドへ向かうも、大野は交代の打診を拒み、続投を志願。「自分で決着をつけたかった。チームを勝たせたい思いが一番強かった」と、マウンドを譲る気は微塵もなかった。
後続を渾身の投球で投ゴロ、中飛に仕留めると、バンテリンドームには地鳴りのような歓声が響いた。最後のアウトを取り、大きなガッツポーズが飛び出た。
完全復活を経ても募る危機感「一戦一戦が勝負」
大野を突き動かしたのは、かつて投手コーチや監督を務めた森繁和氏から学んだ「白黒自分でつけてナンボ」という先発としての矜持。そして意外にも“悲壮感”に近い覚悟だった。
2023年には左肘手術による長期離脱、2024年の2勝止まりという苦境を乗り越え、昨季は11勝4敗、防御率2.10でカムバック賞を受賞。完全復活を遂げたはずのベテランだが、その胸中には危機感が渦巻いていた。
「(5連敗で)普段は無いプレッシャーを感じていました。自分自身もそんなに、後がある立場ではないっていうのが分かっていましたし。一戦一戦が勝負だと思って」
この日もし敗れていれば、球団にとって46年ぶりとなる開幕6連敗という不名誉な記録が刻まれるところだった。不屈のベテランが手繰り寄せた今季初勝利が、停滞していたチームに逆襲の火をつけた。
(木村竜也 / Tatsuya Kimura)