ボロボロの日本製“廃番グラブ”でGG賞候補 フリマサイトで「日本の女性から買った」…伝えられていない感謝

  • 上野明洸
    上野明洸 2026.04.06
  • MLB
ミズノ製のグラブを愛用するブルージェイズのアーニー・クレメント【写真:荒川祐史】ミズノ製のグラブを愛用するブルージェイズのアーニー・クレメント【写真:荒川祐史】

ブルージェイズのアーニー・クレメント「めっちゃいいんだよ」

 ボロボロになったミズノ製のグラブをはめ、大舞台で華麗にゴロを捌く男がいた。ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の米国代表にも選ばれたブルージェイズのアーニー・クレメント内野手が使用するのは、2006年までしか使われていなかったラベル(通称ビッグM)が貼られているグラブ。手に入れた経緯と、感謝を明かした。

「このグラブは、とても自分の手にあっているんだ。めっちゃいいんだよ」

 固いポケットはなく、ベンチに置けばもう板のようにぺったんこになるほど、革は薄く柔らかくなっている。黒い革は、背面も捕球面も剥げて白くなりつつある。まさに“ボロボロ”なグラブで、ファンを魅了する華麗なプレーを見せる。

WBC米国代表で活躍したアーニー・クレメント【写真:ロイター】WBC米国代表で活躍したアーニー・クレメント【写真:ロイター】

 このグラブにはミズノ社が2006年までの製品に採用していた「M」のラベルが貼られている。かつてはイチローや松井秀喜らも使用したが、現行ラベルの2世代前も前のモデルとなる。復刻版以外では手に入れるのが不可能な状態だ。プロの世界、ましてやメジャーリーグで使っている選手は極めて珍しい。

 今のグラブを使い始めたのは2024年の6月中旬。もともとミズノのグラブを使っていたが、すぐに実戦で使える別のものが欲しい――。米最大のフリマサイト「eBay」で日本人の女性が出品していた中古品をクリックした。

打撃用手袋をつけ、グラブをはめるスタイル「このグラブのおかげで」

 クレメントは2022年にDFA(事実上の戦力外)となり、加入したアスレチックスでもDFAを経験した苦労人。それでも2023年にブルージェイズとマイナー契約を結ぶと、日本からやってきた“相棒”とともに、堅実な守備で出場機会を増やしていった。

「確か200ドル(3万1000円)くらいで日本の女性から買った。(写真を見ると)ちょうど僕が必要としているもののように見えたんだ。すでに型がついていて、すぐに実戦で使える状態のようだった。たまに、届いてみたら写真と実物が全然違うこともあるけどね……これは良かった。本当に運が良かった」

 届いたグラブをはめてみるとフィーリングが良く、そのまま2年間、内野を守る時に使用している。2024年に139試合に出場すると、昨季は157試合に出場し、チームに欠かせない選手となった。

2025年のワールドシリーズ前日練習時、ウェブにボールが挟まり笑顔のクレメント【写真:アフロ】2025年のワールドシリーズ前日練習時、ウェブにボールが挟まり笑顔のクレメント【写真:アフロ】

 2025年8月のツインズ戦では死球で左手中指の付け根を骨折したが、IL(負傷者リスト)には入らず強行出場。バットを握るだけ痛みが走ったという中で、革が薄くなったこのグラブで硬球を捕球するとなれば痛みは計り知れない。以来、少しでも痛みを和らげるために打撃用手袋を左手につけ、その上からグラブをはめるスタイルを現在も継続している。

 ワールドシリーズ進出に貢献し、2年連続でゴールドグラブ賞のファイナリスト入りも果たした。「このグラブのおかげで、たくさんの良いプレーができたよ」。出品者の詳細を調べようとしたが「eBayのアカウントを削除してしまったみたいで……もう消えていたんだよ」と不明のまま。感謝を伝えられないという。

 革が十字になっているウェブの隙間にはボールがはまってしまうこともしばしば……。それでも今季もスプリングトレーニング、WBC、レギュラーシーズンとこのグラブを使い続けている。「いつかは変えなきゃいけないだろうね。かなり古くなってきているから……完全にダメになるまで使い続けてから、次のグラブを使うよ」。簡単には離れられない……。日本からやってきた“相棒”を、いたわるように撫でた。

(上野明洸 / Akihiro Ueno)

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