「お世話になった方々のためにも、もう一度NPBの舞台に戻って1軍で活躍したいと思っています」。今季からハヤテベンチャーズ静岡でプレーする野口恭佑外野手は、胸に秘めた思いを明かす。「お世話になった方々」のひとりに挙げるのが、DeNAの宮崎敏郎内野手だ。
2022年育成ドラフト1位で九州産業大から阪神に入団した野口は、1年目の2023年オフに支配下を勝ち取り、2024年は1軍で26試合に出場した。同年7月4日に甲子園で行われたDeNA戦。代打でプロ初安打をマークすると、失策が絡んで一気に三塁へと進んだ。
記念の一打に沸く虎党の歓声を浴び、喜びを噛み締めていたときのこと。三塁手の宮崎に声を掛けられた。
宮崎「初ヒット?」
野口「はい」
宮崎「おめでとう」
野口「ありがとうございます!」
長年結果を出し続けるベテラン好打者が、面識のない敵軍の若手の初安打を祝福してくれたのだ。その人柄に感銘を受けた野口は、同年オフの自主トレでの弟子入りを志願した。
12歳差違いも…誰よりも汗を流す姿に「衝撃を受けました」
「宮崎さんが佐賀、僕が長崎出身で同じ九州というのもあって、僕の親戚と宮崎さんに繋がりがあったんです。普通はチームの先輩とかを通じて頼むんでしょうけど、僕の場合はそういうご縁があって一緒に自主トレをやらせていただくことになりました」
2000年生まれの野口にとって、1988年生まれの宮崎はちょうど一回り上の大先輩だが、自主トレで見た姿に衝撃を受けた。
「打撃はもちろん、ウエートの量もパワーもすごい。衝撃を受けました。体力がすごく大事だなと実感しましたし、とにかく練習量にビックリしました」。誰よりも汗を流す、それが活躍し続ける秘訣なのだと間近で感じることができた。ともに過ごした時間は、今でも自分の財産になっている。
2025年限りで阪神を戦力外になった。「やり残したことだらけ」とトライアウトを受けるも、NPB球団からのオファーはなかった。2軍球団か社会人野球など進路で揺れていたときにも、気にかけて連絡をくれた宮崎に相談した。「トライアウトも見てくださっていました。いろいろな話をしてくださって、後押ししてくれたというか選択肢を広げるキッカケを与えてくれました」と感謝する。
中でも忘れられない言葉がある。
「またグラウンドで会おう」――。それは今の野口を突き動かす原動力でもある。「また一緒の場所でプレーできるように。1軍で頑張っている宮崎さんに負けないように、僕も頑張りたいです。かわいがってもらっていましたし、なかなかこういうことってないと思うので大事にしていきたいですし、もっと頑張らないといけない。本当にやるだけですね」。
NPB返り咲きへ「環境は変わりましたが、やることは一緒」
野口にとって、宮崎はどんな存在なのか。そんな問いかけに、目尻を下げた。
「見ての通り背中が大きくて、本当に心が温かい人です。尊敬できる大きな背中というか……。だから、追いかけていけたらと思います」
1軍出場がなかった昨季は、持ち味の打撃に迷いが生じ「戻る場所がなくなってしまった」と反省する。良くなりたい思いが先行し、いろいろな人のアドバイスを聞きすぎるがあまりに自分を見失っていた。現在は「人のアドバイスも大事ですが、一番は自分の感性を大事にやっていこうと思います」と原点に立ち返る。
NPB復帰の期限は7月いっぱい。「本当に圧倒的な数字を残さないといけない。まだ25歳で若いですし、可能性が残っている限りはとことん挑戦したい。環境は変わりましたが、やることは一緒なので、結果を残すためにもしっかり『勝つこと』を意識してやっていきたいです」と野口。“約束”を果たすためにも、宮崎が待つ舞台を目指す。
(町田利衣 / Rie Machida)