村上宗隆が示す矜持「打った価値がない」 3戦連発で笑顔なし…恩師が明かした人間性

ホワイトソックス・村上宗隆【写真:ロイター】
ホワイトソックス・村上宗隆【写真:ロイター】

九州学院時代の監督・坂井宏安氏、村上とのエピソードに言及

 恩師の目には、高校時代と変わらぬ姿が映っていた。ホワイトソックスの村上宗隆内野手は6日(日本時間7日)に本拠地レート・フィールドで行われたオリオールズ戦に「2番・一塁」で先発出場。メジャー移籍後10試合目は、9回に四球で出塁して生還したものの3打数無安打に終わり、チームも1-2で敗れて連勝は3で止まった。

 節目の10試合を終えてチームは4勝6敗。打率.206、4本塁打、7打点の村上の成長を、ヤクルト入団前からずっと見守ってきた人がいる。九州学院時代の監督で、現在は滋賀県の彦根総合高で理事長兼野球部総監督を務める坂井宏安氏だ。

「午前3時ぐらいからの試合もあるし、最近は“時差ボケ”です。他に用事がなくて早起きできた時は、ムネの試合を見ています」。教え子の村上を親しみを込めて「ムネ」と呼ぶ坂井氏は、メジャーでの開幕直後の活躍を予感していたという。

「開幕戦の前日に『明日からシーズンが始まります』と電話がかかってきましたよ。『WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)は少し時差ボケもあったよね?』と聞いたら『そんなことないです』と言っていました。チームにだいぶなじんできていて、気持ち的にはかなりリラックスしている感じを受けましたね」

 毎年、年末に熊本に帰省する村上は、坂井氏の自宅にも顔を出すのが恒例行事。「しょっちゅう会っているわけじゃない。いちいち電話することもない。そんなに仲良くないですよ」と言いつつ、節目節目には必ず連絡が来る。米国出発前にも東京で会食するなど交流が続いている。

 九州学院時代は1年時から主軸を任せた。2015年の夏の熊本大会、藤崎台県営野球場で行われた東稜との1回戦は「4番・一塁」で起用。公式戦初打席となった初回の第1打席で「無死満塁になって、見事にバックスクリーンに満塁ホームランを打ったんです」と振り返る。

 ドラフト1位で入団したヤクルトでも、1年目の2018年9月16日の広島戦(神宮)でプロ初打席アーチを記録。メジャーに移籍しても衝撃の対応力を示した。3月26日(日本時間27日)に敵地で行われたブルワーズの開幕戦の9回に1号アーチ。そこから3試合連続本塁打をマークして鮮烈なデビューを飾ったのだ。

「チームに貢献したいという気持ちが一番じゃないですか」

「初打席ではなかったけどメジャーでも最初の試合でホームランを打ちました。彼は中学から入学してきた時も、すぐに高校のレベルになじむタイプだったんです。例えば大学生との試合でも、それなりに打てるし、社会人の練習に連れていってもそれなりにできる。そういう対応力があるんですよ」

 最高峰のMLBでも早くも順応しており「速い球を打てるのか、疑問の声がありますけど、そこにいけば対応する能力があります」と活躍に太鼓判を押す。もちろん、MLBが甘くないことや今後は壁にぶつかる覚悟はしている。

「私はアマチュアだから詳しく分からないですけど、変化球の方が日本とは違うのではないかと思うんです。米国の投手は指が長いし、手も大きい。今は初対面の投手ばかりと対戦します。変化球の方が対応が難しいと思ってしまいます」

 打率がやや低調なのは、シーズン序盤であることを考えれば仕方がない部分がある。まずは順調に滑りだしたことが何より。そして教え子の頼もしい姿を見ながら、高校時代と変わらぬ姿勢を感じている。「チームのためにという思いが強い選手です。打ちたいと思うのもチームのため。チームを勝たせるために何とかしたいんですよ」と説明する。

「例えば4安打しても、ホームランを打っても、負けたらブスッとしているタイプです。自分だけ活躍しても納得しない。チームが勝って、初めて打った価値がある。チームが負けたら、打った価値がないんです。そんな雰囲気がずっとあります。だから3試合連続でホームランを打っても、負けたから全然喜んでいなかった。勝ち越しの4号だけは、笑顔があったじゃないですか。そういう子なんです」

 高校時代は「暇さえあればバットを振っていた」というイメージがあるそうだが、求めるのは何よりもチームの勝利。「チームが勝たないと野球は面白くない。チームに貢献したいという気持ちが一番じゃないですかね。それは高校の時から全然変わっていない」。フォア・ザ・チームの気持ちは誰より強い。

 昨年まで3年連続100敗のホワイトソックスは、10試合を終えた時点で97敗ペース。厳しい状況には変わりはないが、この日の試合でも9回に1点差に迫り、逆転サヨナラの好機を築いたように簡単には負けない粘り強さを見せている。坂井氏も「今年は100敗しないかもしれない」と“躍進”を期待する。次は村上からどんな連絡が来るのか。それが今から楽しみである。

(尾辻剛 / Go Otsuji)

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