「下手くそだった」村上宗隆、観戦時はいつもヒヤヒヤ…恩師が見た成長「感性を感じた」

九州学院時代の監督・坂井宏安氏、村上の守備を称賛
教え子の確かな成長を感じた。ホワイトソックスの村上宗隆内野手は6日(日本時間7日)、本拠地レート・フィールドで行われたオリオールズ戦に「2番・一塁」で先発出場。メジャー移籍後10試合目は、9回に四球で出塁して生還したものの3打数無安打に終わり、チームも1-2で敗れて連勝は3で止まった。
九州学院時代の監督で、現在は滋賀県の彦根総合高で理事長兼野球部総監督を務める坂井宏安氏は、持ち味である打撃以外の面でのレベルアップに目を細める。「守備は凄く変わってきた部分です」。村上は高校時代、主に捕手としてプレー。ヤクルト時代は2021年から3年連続で三塁手として最多失策を記録するなど、不安が多かった内野守備に言及した。
「高校では捕手だったし、かわいそうなんですけど、三塁の守備は最初は下手くそだった。それは当たり前の話じゃないですか。彼からしたら知らないポジション。プロだからミスしたらいろいろ言われるのはしょうがない。でも途中から上手になってきている。『守りも格好よくなったな』って思ったんです」
メジャーでは一塁が定位置。ヤクルト時代に経験があるとはいえ、勝手が違うのは当然だ。「みんな簡単みたいに言うけど、これが難しいんです。メジャーは土質が違うし、硬さが違います。打球も速い。野手の送球も伸びたり落ちたり曲がったり、いろいろあります」。そんな中で、坂井氏が感心したプレーがあったという。
4日(同5日)に本拠地で行われたブルージェイズ戦。村上は6回の打席で逆転4号2ランを放っていた。直後の7回。1死満塁からルークスが右犠飛を放って1点差に迫られたシーンだ。「二塁走者がワンクッションおいて三塁にスタートを切った。中継に入って捕球すると、三塁に投げてアウトにしました」。三塁がセーフなら2死一、三塁。次は強打者のゲレーロJr.だった。
「1点は取られたけど、同点にされずに、そのまま勝ったんです。次がゲレーロJr.だったし、あのプレーはメチャクチャ大きかったと思います。ホームランを打ったこと以上に、あのプレーが良かった。勝敗を分けたあのプレーを見て『ああっ! 凄くメジャーになじんだな』と彼の感性を感じましたね。あのとっさの感性は素晴らしい。あのプレーは褒めてやりたかったです」
その試合、9回に一発出れば同点のピンチを迎えたが、最後の打者は一ゴロ。ウイニングボールを村上が処理した。「最後に一塁に打球が飛んだ時はドキッとしました」。ヤクルト時代に三塁で試合に出始めた頃、捕手・中村が右打者の内角に構えると「三塁に飛んでほしくないから『外角に構えろ』っていつも思っていました」と回顧する。技術の向上は認めつつ、今でも教え子である村上のポジションに打球が飛ぶと、どうしてもヒヤヒヤするようだ。
気になる生活面「体調を崩すことがないように」
ただ、技術面の心配はしていない。昨年は上半身のコンディション不良で開幕前に離脱しており、気になるのは体調面だ。「怪我に関しては凄くケアしていると思います。でもメジャーは試合数が多い。食生活とかで、冷たいものを飲んで体調を崩すようなことがないようにしてほしい」と普段の生活面にも注意してほしい考えがある。
「常にはうまくいかないですから、そこを自分で自分をどう監督できるか。自分で自分をしっかり監督してもらいたいなと思っています」。自己管理の大切さを訴えると同時に「そういうところはできる選手。野球に関する部分は、これまで全てできています。ただ、あれだけ試合があったら、気を抜く暇もないですよね」とハードスケジュールを心配する。
心強いのは数多くいる日本人メジャーリーガーの存在。ドジャースの大谷翔平投手や山本由伸投手、カブスの鈴木誠也外野手ら侍ジャパンでチームメートだった選手らとの交流があり「自分から寄っていくタイプじゃないけど、食事に連れていってもらったり凄く可愛がってもらっています」という。
村上には兄がおり「長男ではないですし、次男特有の雰囲気があるんじゃないかと思います」と推測。山本の通訳を務める園田芳大氏も九州学院OBで、坂井氏と連絡を取り合う仲であることも、村上にとって心強いのは間違いない。
坂井氏は「野球が職業の選手に気を使わせたくない」と自身から村上に電話することはほとんどない。ヤクルト時代も観戦チケットをお願いすることはなく、全て自力で手配してきた。今年は異国の地で奮闘する教え子の応援に行きたい希望はある。だが「米国に行きたいですけどね。イラン情勢もあって今は物価高だし、難しい部分があります」と複雑な心境を明かした。
村上について「私が育てたわけじゃない。自分で育ったんです」と説明した坂井氏は「うまくなりたいという貪欲さが常にありました」と振り返る。常に高みを見据えて動く教え子は頼もしい限り。安心して全ての試合を観戦できる日も、そう遠くはないはずだ。
(尾辻剛 / Go Otsuji)