つまらないと言われる野球に好機「NBAの人気にやや陰り」 ロス五輪に前向きなMLBの皮算用と切実な事情|MLB Press Box #2

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    ディラン・ヘルナンデス 2026.04.11
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WBC第6回大会で優勝したベネズエラ【写真:ロイター】WBC第6回大会で優勝したベネズエラ【写真:ロイター】

熱狂を呼んだWBC決勝R「『つまらない』と感じる人間は果たしていただろうか」

 米国の有力紙やスポーツ専門メディアの記者が、日本国内の報道とは一線を画す視点を提供するFull-Count+の新企画「MLB Press Box〜米国記者の忖度なき評価〜」。今回はディラン・ヘルナンデス記者(カリフォルニア・ポスト)が、2028年のロサンゼルス五輪にMLBが前向きな理由を読み解く。

ディラン・ヘルナンデス

著者:ディラン・ヘルナンデス
Dylan Hernandez
カリフォルニア・ポスト所属
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エルサルバドル出身の父、新潟出身の日本人の母を持ち、日本語も堪能。カリフォルニア大ロサンゼルス校(UCLA)を卒業。「サンノゼ・マーキュリー」紙を経て、2025年まで「ロサンゼルス・タイムズ」紙に所属し、コラムニストを務めた。2026年から「カリフォルニア・ポスト」に所属。

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 近年のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)が収めた成功は、米国野球界の風景を確実に変えつつある。2028年ロサンゼルス五輪では、五輪大会で初めてメジャーリーガーが参加する可能性が高まっている。これまで国際大会への派遣に後ろ向きだったMLBが、なぜ大会参加へ舵を切ろうとしているのか。そこには、野球界の切実な懐事情と、国際大会が持つ巨大なビジネスチャンスへの計算が見え隠れする。

 コミッショナーのロブ・マンフレッド氏は、ロス五輪へのメジャーリーガー派遣に前向きで、シーズン中断期間など選手会との話し合いを進めている。現実味を帯びてきた最大の理由は、近年のWBCにおける成功だ。

 WBCは第6回大会も国内外で視聴率は過去最高を記録し、大きな盛り上がりを見せた。実際、これまでは多くの米国人にとって野球の国際大会への感心が薄かったのは確かだ。世界最高峰のリーグはMLBであり、ワールドシリーズこそが世界一を決める舞台だという認識が強かったように思うし、まだその考えは一部で根強く残っている。

大きな盛り上がりを見せた第6回WBC【写真:ロイター】大きな盛り上がりを見せた第6回WBC【写真:ロイター】

 野球はNBAなどに比べると試合数も多いし、試合も長く、つまらないと言われるのが現実。それがどうだ。マイアミの球場を埋め尽くすドミニカ共和国やベネズエラのファンが見せた、プレーオフのような熱狂的な盛り上がりを見て、あの大会を「つまらない」と感じる人間は果たしていただろうか。

 WBCは正直、シーズン開幕前ということで選手起用には制限がかかる。ロス五輪は7月の開催のため、各国がフルメンバーを揃えた本気の勝負を見ることもできるだろう。やはり、選手の選出にあたって「無制限」であることはとても大事だ。

 現在、米国内ではNBAの人気にやや陰りが見える。野球が五輪で世界的に盛り上がっていくようなら、NBAを超えるチャンスにもなりうる。

 前回のWBCで、米国代表は強力なロースターを組みながらも、頂点には立てなかった。日本やドミニカ共和国など米国以外のチームは、自国の野球を証明したいという思いが強いが、米国人はメジャーリーグが身近にあるし、メジャーリーガーのほとんどが米国人だから、そういう思いは他国に比べると薄い。ただ、歴史がまだ浅いWBCと違い、五輪となると盛り上がりも変わってくるとも思う。

野球の“国際化”へ…MLBが無視できない海外市場

 MLBが国際化を進めたい理由の一つには、米国内のスポーツビジネスが直面している厳しい現実がある。現在、米国のスポーツ放映権ビジネスは大きな転換期を迎えており、破産する地方スポーツチャンネルも続出している。球団の重要な収入源であった放映権料が脅かされているのだ。

 そんな状況下で際立っているのが、MLBにおける「日本マネー」の存在感だ。WBCでも、会場となったローンデポ・パークの外野フェンスに掲示された広告は日本企業だらけ。「大谷翔平」という圧倒的なアイコンの存在もあり、特に今は日本企業がもたらす経済効果は計り知れない。

WBC決勝の舞台となったローンデポ・パークの外野フェンスには、ずらりと日本企業の広告が並んだ【写真:上野明洸】WBC決勝の舞台となったローンデポ・パークの外野フェンスには、ずらりと日本企業の広告が並んだ【写真:上野明洸】

 米国内の経済状況が不透明な中、続々と日本企業とのスポンサー契約を結ぶドジャースのように、海外からの収入源を確保しておくことも米球界にとっては重要だ。国際大会を通じてメジャーリーグがもっと、本当の意味で国際的なリーグになれば、経済的な面でも助かる。

 MLBにとって、ビジネス的なメリットはすでに明白だ。米国のスポーツビジネスにおいて、これだけの巨大な経済効果とリーグの価値向上を見込めるイベントを、みすみす見逃す手はない。大谷翔平をはじめとする日米のスーパースターたちがロス五輪の舞台で激突すれば、メジャーリーグはさらに盛り上がる。

(ディラン・ヘルナンデス / Dylan Hernandez)

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