プロ14年も…野球界残らず「社会に出て独立」 元ヤクルト内野手が挑む故郷への“還元”

ヤクルト一筋14年…2023年限りで現役を引退した荒木貴裕氏
野球と醤油――。一見全く関係のない2つのジャンルでセカンドキャリアを邁進しているのが、2023年限りで現役を引退した荒木貴裕氏だ。ヤクルト一筋14年間の現役生活を終え、「生まれ故郷の富山に貢献できることをしたい」と異色の取り組みに乗り出した。
富山県小矢部市出身の荒木氏だが、高校は山梨・帝京三高に進学した。「県外に出てからの人生の方が長いですし、正直、現役時代にそんなに“富山愛”があったかといえば、当時はそんなでもなかったと思うんです。でも辞めるときに『それってどうなのかな』と思うことがありました。富山のものづくりや人はすごく優秀で、でもあまり知られていないんじゃないかなって」。
そんなとき、縁あって同じ小矢部市にあり実家からほど近い「畑醸造」と出会い、「何か一緒にやりましょう」と誘いを受けて醤油づくりのプロジェクトが始まった。自ら工場を訪れ、作業も経験。何度も味見して「肉に合う」「魚に合う」「野菜に合う」の3種類のオリジナル醤油が完成した。
富山ふるさと大使として地元の魅力を発信する。「今はまだ醤油だけなんですけど、今後いろいろな食材を取り扱えるように広げていきたいと思っています。その第一歩として畑醸造さんから始めさせていただきました。物、人、企業さんでも、富山のものなら何でもやっていきたいです」と思い描いている。
「僕は野球を辞めたら社会に出て独立するということを選びました」
ほかにも、現在は野球スクールを開いて子どもたちに自らの経験を還元したり、「運動は人生を豊かにすると思っていて、今まで野球しかやってこなかったので他の競技にも興味がありました」とピラティスのスタジオ経営も行うなど、幅広く活動している。
ヤクルトでは新人時代の2010年に、球団の野手では40年ぶりとなる新人開幕スタメンを掴み、通算685試合に出場した。現役引退を決めた際には球団に残る誘いもあったが、“あえて”違う道を選んだ。
「今まで野球しかやってこなかったのはすごく幸せなことだと思うんですけど、今後教えていく、伝えていくことを考えたときに果たして正解なのかなって考えました。もっと視野を広げたかったというのもあるし、早く社会に出て社会を知ることは大事かなと思ったので、僕は野球を辞めたら社会に出て独立するということを選びました。野球を辞めたあとの人生の方が長いですから」
ユニホームを脱いで2年が経った。「今後のビジョンはまだ探り探り」というが、揺るがない芯もある。「少しでも子どもがうまくなったり、富山の経済が回ったり、ピラティスで人生が豊かになったり、そういうことがあればうれしいし、その積み重ねかなと思います」。38歳となった今、多彩なフィールドで全力投球している。
(町田利衣 / Rie Machida)