山本由伸が行動で示した“超一流” 体現した「利他の精神」…養護施設をサプライズ訪問した理由

昨季ワールドシリーズMVPが「別格」と最敬礼を受ける背景…
ドジャースの山本由伸投手といえば、並み居るメジャーの強打者たちが口を揃えて「アイツは別格だ」と最敬礼する投手の1人だ。それは投げる球の威力や巧みな投球術だけを指すのではなく、マウンドで見せる存在感やチームや球界に与える影響力もまた考慮した上での敬意なのではないかと思う。
移籍2年目だった昨季は、ドジャース投手陣が相次いで負傷離脱する中、先発ローテーションを守り抜き、調子の波こそあれど30試合に登板して12勝8敗。そのうち18試合でクオリティスタート(6回以上自責点3以内)を記録したのだから、救援陣も大いに助けられた。
ポストシーズンに入ってからは、先発として2試合に完投したばかりか、台所事情の厳しいチーム事情を察して、自ら進んで先発翌日にブルペンへ向かう姿も。ワールドシリーズ第7戦でドジャースを2年連続世界一へと導いた救援登板は、お世辞抜きに神懸かっていた。自分を捨ててチームを思う心が、右腕が体に秘める可能性を最大限に発揮させたのだろう。

矢田先生の教え「利他の精神」を体現
山本が「先生」と慕う治療家の矢田修氏に2017年頃、話を聞く機会があった。人間は無限の可能性を秘めている。その可能性を少しでも多く活かすためには、体と心、頭をどう使ったらいいのか。いつまで聞いていても飽きない話の中でも、強く印象に残ったのが「利己ではなく、利他の精神で動けるようになった時、人間は自分が持つ力を惜しみなく発揮できるんだと思います」という言葉。そして、この言葉を体現しているのが、山本由伸なのだろう。
山本が持つ利他の精神は、野球以外の場でも発揮されている。ロサンゼルスでの生活に欠かせない相棒、愛犬・カルロスは動物保護シェルターから引き取った。球団が主催するチャリティイベントにも積極的に参加。昨年はシーズン真っ只中の6月に、ロサンゼルス近郊の小学校を訪問し、読み聞かせをした。
そして今年2月には、縁あって神奈川県藤沢市にある児童養護施設「聖園子供の家」を訪問する機会に恵まれた。個人的な慈善活動は初めてだったが、施設で開催されたイベントにサプライズ参加し、子どもたち一人ひとりに声をかけながら、心の交流を深めたという。施設では、児童養護施設や地域で困窮する子どもたちの現状と課題について、職員の説明にも熱心に耳を傾けた。山本は「励ますつもりで訪れた施設で、逆にパワーをいただきました。このパワーを今後につなげていきたいです」と、訪問時を振り返る。
今季はここまで6試合に先発し、2勝2敗、防御率2.87と安定したパフォーマンスを披露している。「今度はドジャースタジアムに子どもたちを呼びたいですね」と山本。チームの3連覇に向けて、そして新たなパワーを与えてくれた子どもたちのために、今年も「利他の精神」でマウンドに立ち続ける。
(佐藤直子 / Naoko Sato)