相川監督の言葉に…マウンドに集まった内野陣驚愕→突如起きた笑い DeNA野手登板の裏側、実は昨季もあった“構想”

1日のヤクルト戦で「野手登板」を果たしたDeNA・柴田竜拓【写真:産経新聞社】1日のヤクルト戦で「野手登板」を果たしたDeNA・柴田竜拓【写真:産経新聞社】

1日のヤクルト戦、8回2死一、三塁から柴田竜拓が“野手登板”

 左翼スタンドのDeNAファンが一番盛り上がった場面、といってもいいだろう。1日に神宮球場で行われたヤクルト-DeNA戦。8回に11点ビハインドとなったところで、柴田竜拓内野手が日本球界では珍しい「野手登板」を果たした。

 9連戦の4戦目。ヤクルトには試合前時点で今季5戦全敗を喫する中で、敵地でのカード初戦を迎えた。大事な先発を託されたのは平良拳太郎投手。しかし初回から4失点し、直後に佐野恵太内野手のソロで1点を返したものの、2回に岩田幸宏外野手に2ランを浴びた。

 3回に打席が回ってきたため、代打を送られ交代。2回58球を投げ6安打6失点KOは重すぎる結果だった。ベンチ入りしている救援陣は8投手。早くも継投策となった。

 3回からはロングリリーフを担う中川颯投手が登板した。強風吹き荒れるマウンドで3回こそ無失点も、4回にドミンゴ・サンタナ外野手に2ランを浴びるなど3失点。5回からは堀岡隼人投手が2回3失点、7回からはハンセル・マルセリーノ投手がマウンドに上がるも、宮本丈内野手に3ランを浴びた。

8回はマルセリーノがイニング跨ぎも…1失点してなおも2死一、三塁

 ベンチに残っていたのは勝ちパターンの伊勢大夢投手、山崎康晃投手、ショーン・レイノルズ投手、大事な場面を担うことが増えてきた中川虎大投手、前日4月30日に登板していた宮城滝太投手。マルセリーノの8回続投は当然のことだった。

 しかし、ヤクルト打線の勢いを止められない。8回2死から3連打で16点目を失った。これが20被安打目だが、ブルペンは誰も準備をしていない。そのとき、相川亮二監督がマウンドへ向かい、同時に蝦名達夫外野手がグラブを持って右翼の守備位置に向かって駆け出していった。

 マウンドに集まる内野陣。そこで発された指揮官の言葉に、目を丸くした。

「タツ、行くぞ」

 戸柱恭孝捕手ですら「そのときまで知らなかった」という「投手・柴田」。三塁を守っていたため肩はできている。慌てた戸柱が「タツ、何(の球種)投げられる?」と問いかけると、柴田は「真っすぐとチェンジアップ」という驚きの返答。「スライダーじゃないの? 無理だろ」と笑いの輪が広がり、少しだけその場が和んだ。

マウンド上で柴田竜拓に野手登板を告げるDeNA・相川亮二監督【写真:産経新聞社】マウンド上で柴田竜拓に野手登板を告げるDeNA・相川亮二監督【写真:産経新聞社】

 柴田は宮本に対して120キロ前後の直球を投げ込んでいく。カウント3-2からの6球目、外角球で左飛に封じると、ポンポンとグラブを叩いた。三塁ベンチに戻る柴田を誰よりも早く出迎えたのが、相川監督だった。

「リーグ優勝をするための作戦ならやるべき」

 2022年から4年間、三浦大輔監督のもとでコーチを務めていた指揮官。実は昨年までも、この日のような状況に陥った際に相川監督が野手登板を議論することはあった。三浦政権で実現することはなかったが、そのときから「もし投げるなら……」とされたひとりが柴田で、それは本人もわかっていた。主力選手のひとりは「今までだったらなかったけど、相川監督だから投手へのメッセージみたいなものもあるのでは」と推測した。

 メジャーではたびたび見かける「野手登板」だが、日本では行われるたびに賛否の声が噴出する。この日のDeNAもまた、そうだった。ある首脳陣は「もちろんその日の試合を勝つためにやっています。でも、一番はリーグ優勝をするため。そのための作戦ならやるべきだし、悪いことではないのでは」と話す。正解か不正解か、その答えが出るのは今ではない。この決断が今後にどういった影響をもたらすのかが、一番大事なことだ。

 柴田の登板時、ベンチではダヤン・ビシエド内野手がセットポジションから投球動作を繰り返していたのだという。野手でも残っていたのは山本祐大捕手とビシエドだけ。もしも柴田に何かあれば……そんな思いだったのかもしれない。柴田はこの件に関して多くを語ることはない。それでも、さまざまな人の思いが交錯した野手登板だった。

 宮本をアウトにしたボールは、フライを掴んだ勝又温史外野手から遊撃の京田陽太内野手のもとへ返った。京田はそのボールを「初めてのアウトの記念だから」とそっと柴田に手渡した。「家に持って帰りましたよ。飾ろうかな」と笑った柴田。どんな場面でも、内野全てを高いレベルで守る貴重なユーティリティプレーヤー。大敗の中で、チームをひとつにした“男気”は確かに光っていた。

(町田利衣 / Rie Machida)

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