大不振から急変…村上宗隆の適応能力 HR量産の裏に成長、相手投手に植え付ける“恐怖心”

Wソックス・村上宗隆【写真:ロイター】
Wソックス・村上宗隆【写真:ロイター】

フォーシームが打てないはずが…4月18日以降は打率.321、長打率.786と破壊

 もはや別人、と言っていいだろう。ホワイトソックス・村上宗隆内野手が本塁打王争いの中心にいる。一時は24打席連続ノーヒットと絶不調だったが、そこから5試合連続本塁打を放つなど、圧倒的な打棒を披露。渡米時から指摘されていた“課題”に対し、確かなアジャストをし始めている。

 村上は以前から「速いフォーシームが打てない」との指摘を受けていた。三振率の高さも含め、昨オフの移籍市場では、その明確な弱点から獲得に慎重な球団も少なくなかった。実際、開幕から3試合連発を放ったものの、4月16日(日本時間17日)までの19試合では打率.167、5本塁打、三振率33.3%。苦しい時期を経験した。

 ところが、4月17日(同18日)から様相が一変する。それまでフォーシームに対して打率.150、長打率.450、wOBA(加重出塁率).371と苦戦していたのが、以降は打率.321、長打率.786、wOBA.507まで急上昇。本塁打も一気に量産し始めた。

 一方で、三振率は32.1%。16日までの33.3%から劇的には改善していない。つまり、「コンタクト率が向上した」というより、“捉えた時の破壊力”が異常なレベルまで高まっているのである。そして、脅威のパワーを発揮する“場所”も、村上は完全に心得ているようだ。

 コース別の本塁打内訳を見ると、9分割のど真ん中から6本。ベルト付近から下のコースで計13本放っている。好球必打ないしローボールヒッターとしての資質が伺える。実際、村上のスイング軌道と得意コースが一致しているのも納得ではある。

 それゆえ、課題なのが「高め」だ。4月16日まではストライクゾーン高めに対して安打は0本、空振り率39.4%と完全な穴だった。成績が好転した17日以降を見ると、打率.200、長打率.400と、一見すると対応しつつあるようにも見える。しかし空振り率は45.9%。5月6日のエンゼルス戦は4三振を喫したが、2つは高めで仕留められたものだった。

 村上にとって、ベルトより上のゾーンは依然として克服すべき弱点であり、相手から当然のように突いてくる。しかし思い出してほしい。3・4月の投手月間MVPを受賞したソリアーノから打った14号は、ゾーン高めに外れた98.1マイル(約158キロ)のフォーシームだったことを。相手が狙ってきた村上のウィークポイントも、絶対の穴ではないと示した瞬間だった。

 何より他29球団にとって厄介なのが、高めを狙ったボールが少しでもベルト付近へと甘くなった瞬間、一瞬にして本塁打/長打という“悪夢”に変わるのだ。絶対的なツボを持っているからこそ、投手にとって投げミスを許されない恐怖心とも戦わなければならない。

 データ分析が進むメジャーでは、一度露呈した弱点は執拗に攻め続けられる。「フォーシーム」「高め」を狙われながらも、村上はわずか1か月の間で修正の兆しを見せている。しかし克服しようとすれば、またどこかの綻びを相手も見つけてくるはずだ。この“いたちごっこ”を制した先に、本塁打王というタイトルが見えてくる。

(新井裕貴 / Yuki Arai)

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