2023年に20勝をマークしたストライダー「倫理的、環境的な側面にも気づかされた」
今季復活を果たしたブレーブスのスペンサー・ストライダー投手は、独自の食生活とともにメジャーのキャリアを歩んでいる。ユニホームパンツがパンパンの大きな太ももから「Quadzilla(クアッドジラ)」のニックネームを持つ右腕だが、意外にもヴィーガンという側面を持つ。最速165キロを生み出す秘訣に迫った。
27歳のストライダーは、デビュー3年目の2023年に20勝を挙げてブレーク。先発投手として史上最速ストライクの102.4マイル(約165キロ)を叩き出すなど、ほぼ剛速球とスライダーの組み合わせで最多勝と最多奪三振のタイトルに輝いた。
ストライダーの代名詞ともいえるのが、タイトなパンツから浮き出る大きな大腿四頭筋だ。引き締まったボディを持つが、8年このかた植物性食品を中心とした食事をとり、肉は一切食べないヴィーガンだった。
「健康状態を最適化したかったんだ」
きっかけは大学時代、1度目のトミー・ジョン手術を受けた時だった。「肘の手術からの回復期で、そのプロセスを順調に進めたいと思っていたんだ。炎症を抑える食事にしたくてね。当時はタンパク質を重視しすぎて脂質を摂りすぎてしまって、多くの栄養素やビタミンを逃していた。誰かにプラントベース(植物性)を勧められて試してみたんだ」。当時は高血圧と診断され薬も服用していたが、それも食生活によって改善した。
ヴィーガンとなって8年。もちろんメジャーのキャリアは全期間この食生活で歩んできた。「調べていくうちに、ヴィーガンやプラントベースの食生活が持つ倫理的、環境的な側面にも気づかされ、非常に強く惹かれた。それで試してみたところ、自分に非常に合っていたんだ」。デビュー2年目には31試合に登板(21先発)、2023年は32先発と1年間ローテーションを守った。球界でも珍しいベジタリアンではあるが、シーズンを通して活躍できることを証明している。
たんぱく質の補給は日本でも親しまれる“食品”から
筋肉をつけるために、欠かせないのが肉製品から多く摂取できる「たんぱく質」だ。ベジタリアンの右腕は肉を食べない代わりに豆腐、テンペ、セイタン(植物性代替肉)、豆類、穀物を意識して食べているという。
「トウフはよく食べるね。あらゆる食べ物にたんぱく質は含まれていますが、(肉を食べる人と違って)特定の食品だけに頼れるほど十分な量ではないかもしれない。だから僕は非常に多様な食事を心がけているんだ。1回の食事でより多くの種類の食品を摂ることで、マクロ栄養素や9種類の必須アミノ酸をすべて満たせるようにしている。未精製のホールフードを多様に摂ることに集中していますね。やっぱりトウフやテンペは多いかな」
特にメリットを感じているのはリカバリー面だという。「体がより引き締まって、エネルギーも確実に増した。睡眠の質も向上したよ。不運な怪我の履歴はあるが、その多くは肘の手術に起因する構造的な問題だった。これほど厳格で健康的な食事をしていなければ、もっと多くの怪我をしていただろうし、それを最小限に抑えてくれていると思うね」。
「それに、良い選択をすることにも繋がるよね。夜遅くに空腹になっても、適当にチーズバーガーを買いに行くなんてことはできないからね。健康的な選択肢に限定されるわけだから、間違いなく有益だと思っているよ」
トレーニングの内容は「いろんなことをやるよ」…スクワットは「最大200kg」
ゴジラと大腿四頭筋(Quad)を組み合わせた「Quadzilla」と呼ばれる下半身は、どのようなトレーニングによって生まれているのか。
「いろんなことをやるよ。ランジ、ゴブレットスクワット、ピストルスクワット、リバースランジ……。特にシーズン中は、極端に重い負荷はかけないし、深くしゃがみ込むこともしない。より爆発的な動きや、浅い可動域でのトレーニングを重視している」
シーズン中は、投球動作に繋がるような動きや、瞬発力を意識したメニューを継続する。「試合で使う可動域に合わせてトレーニングすべきだからね。シーズン中に超重量を担いで深く沈むのは、必ずしも適切な方法ではない場合もあるからね」。
扱った最高重量については「バックスクワットでは450ポンド(約204kg)を2レップ(2回)かな。リバースランジでは550ポンド(約250kg)だね。こっちは(バックスクワットより)負荷をかけやすいんだ」と明かす。
立派は太もものサイズは「測ってないから分からないよ(笑)」と髭を触って微笑んだ。球界では珍しい食事スタイルとともに育った肉体から、剛速球が生み出されていた。
(上野明洸 / Akihiro Ueno)