指揮官絶賛も「それはお世辞ですね」 ドジャース封じの裏にあった“徹底ルーティン”…パドレス右腕が費やす「1人の打者に1時間」

  • 鉾久真大 2026.05.20
  • MLB
ドジャース打線を7回4安打無失点に封じたパドレスのマイケル・キング【写真:黒澤崇】ドジャース打線を7回4安打無失点に封じたパドレスのマイケル・キング【写真:黒澤崇】

パドレスのマイケル・キングがドジャース相手に7回無失点の快投

 試合はプレーボールのずっと前から始まっていた。18日(日本時間19日)、同地区のライバル・ドジャースとの今季初対戦で、パドレスが先発のマウンドに送ったのはマイケル・キング投手。7回4安打9奪三振、無失点の快投で1-0の投手戦を制し、地区首位返り咲きに貢献した。さかのぼること試合開始の3時間半前。クラブハウスで成功の秘訣を記者は目撃した。

 ドジャースの打者が何度も天を仰いだ。ストライクゾーンをギリギリかすめる投球に、球審の手が上がる。キングが奪った9つの三振のうち、実に5つが見逃しだった。左打者の外角いっぱいに決まるバックドアのスイーパー、逆に胸元をえぐりながらゾーンに入ってくるフロントドアのシンカー、ズバッとコーナーを捉えるフォーシーム……。巧みな球種選択と抜群の制球力で、強力打線を翻弄した。

 その精度の高さは、ABSチャレンジでより際立った。2回に6番マンシーから見逃し三振を奪ったスイーパーは、一度はボールと判定されたものの、捕手のデュランが即座にチャレンジを要求。本拠地ペトコパークの巨大スクリーンには、白球の4分の1ほどがゾーンにかかっていることが映し出された。

 4回の2番ベッツの打席でもデュランはABSチャレンジに成功。逆に4番タッカーが5回に見逃し三振判定に疑義を呈した時には、ボールの半分ほどがゾーンに入っていることが示され、本拠地は大歓声に包まれた。

 クレイグ・スタメン監督が「彼がパドレスに来てから最高の投球の1つ」と絶賛した快投。しかし、本人は「それはお世辞ですね。シンカーの制球はまだ本来の出来ではないですし、スイーパーも全然ダメでした」と苦笑いを浮かべた。それでもドジャース打線を制圧できたのは「デュランが素晴らしい配球をしてくれたおかげ」。7日(同8日)にデビューしたばかりの相棒を称えた。

ルーティン遂行「キム(ヘソン)が打線に入るかどうか分からない選手でした」

「ゲームプラン通りに投げられました」と胸を張った30歳のエース。試合開始の3時間半前には、クラブハウスの中で膝の上に乗せたPCをじっと睨んでいた。試合後に確認すると、やはり相手打線の特徴を確認していたという。

「だいたい1人の打者に1時間はかけますね」

 前日までにあらかじめ打線に入るであろう8選手を調べ上げる。「オオタニやベッツ、フリーマンらが入るのは分かり切っていますから。彼らのことは先発の日までに準備できます」。そして当日に発表されたスタメンを見て、残りの打者を研究するのがルーティンだ。

プラン通りにアウトを積み重ねていった【写真:黒澤崇】プラン通りにアウトを積み重ねていった【写真:黒澤崇】

「今日で言えば、キム(ヘソン)が打線に入るかどうか分からない選手でした。ロハスを出すこともありますし、エスピナルを出すこともある。なので今回は二塁手のところは空けておいて、スタメンが発表されるのを待ちました。だから今日はここでキムのことをたくさん調べていたんです」

 PCでの下調べが終わると、大きな手帳に持ち替える。ラインナップカードを手にしたデュランと膝を突き合わせ、念入りに攻め方を打ち合わせしていた。「彼と考えは一致していました。僕が首を振ったのは一度だけ。キムにシングルヒットを打たれた1球だけでした。そのことは話し合いましたが、彼は完璧な組み立てをしてくれました」。捕手との二人三脚を強調した。

 結果的にドジャース打線を7回4安打無失点に抑え、首位攻防の初戦勝利に大きく貢献した。「彼らと対戦するのはいつも楽しいです。とてもバランスが取れた打線で、同じ球種の繰り返しでは通用しません。多くの打者がボール球に手を出さないので、ゾーン内を攻め、狙い通りに投げ切ることを心がけていました」。1-0の接戦を制し、0.5ゲーム差で逆転首位に立った。

 徹底した事前の準備。それをしっかりと遂行する能力。メジャーの舞台で成功するためには、グラウンド外での努力も欠かせない。

(鉾久真大 / Masahiro Muku)

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