“普通の選手”から突如覚醒 2025年の大ブレーク→WBCではMVP、侍Jの夢を打ち砕いたガルシアが大切にする習慣

  • 佐藤直子
    佐藤直子 2026.05.21
  • MLB
2025年に大ブレークしたロイヤルズのマイケル・ガルシア【写真:ロイター】2025年に大ブレークしたロイヤルズのマイケル・ガルシア【写真:ロイター】

ロイヤルズでは2025年に大ブレーク、球宴選手になれた理由とは…

 3月に行われた第6回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で悲願の初優勝を果たしたベネズエラ。爆発力と緻密さを兼ね揃えた野球は世界の頂点にふさわしく、見ていて楽しい野球だった。その中心にいたのが、MVPに輝いたマイケル・ガルシア内野手(ロイヤルズ)だ。準々決勝の日本戦でも、勝負の潮目を変えるアーチをかけた26歳に、その安定した活躍の秘訣を聞いてみると意外な答えが返ってきた。

 所属するロイヤルズでは、不動の「1番・三塁」としてチームの攻撃のトーンを決める重要な役割を果たす。2022年にメジャーに昇格すると、足を生かしたスタイルで正三塁手の座を掴んだが、打撃においても、守備においても荒削りな印象があったことは否めなかった。ガルシア自身も「自分をあまりコントロールしきれていなかった」と振り返る。

 それが、2025年になると生まれ変わったかのように正確さを増した。打率はリーグ9位の「.286」を残し、本塁打は前年の7本から16本に倍増した。四球数も42から62に増え、守備では失策数が14から8へと減った。その結果、選手の総合評価指数にあたるWARは、“通常”のスタメン選手レベルの1点台からオールスター級の5点台に急上昇。実際に、ブランドン・ロウの代役ではあったがオールスターにも選出され、三塁手としてゴールドグラブ賞を受賞している。

2025年にはオールスターに選出されたガルシア(右)【写真:アフロ】2025年にはオールスターに選出されたガルシア(右)【写真:アフロ】

WBC準々決勝では隅田から反撃の狼煙上げるソロ弾

 この流れがあって迎えたWBCだ。全7試合で打率.385、1本塁打7打点3盗塁のパフォーマンスに不思議はない。その数字以上に光ったのが、カギとなる場面での勝負強さだった。特に決勝トーナメントでは、準々決勝の日本戦で隅田知一郎投手から放った反撃開始を告げるアーチ、準決勝のイタリア戦で放った勝ち越し打、そして決勝・米国戦での先制犠飛。「ペナントレースとWBCはまったく別物。WBCではすべての試合が決勝戦のような盛り上がりで、あの独特の雰囲気が力を引き出してくれた部分もあると思うんだ」と笑顔を見せる。

 ベネズエラ代表は、球宴5度のビクター・マルチネス(ベンチコーチ)、3冠王のミゲル・カブレラ(打撃コーチ)、サイ・ヤング賞2度のヨハン・サンタナ(投手コーチ)らが熱血漢のオマー・ロペス監督をサポートする豪華布陣。メジャーで酸いも甘いも噛み分けた強者揃いの首脳陣の存在が、戦術的にはもちろん、メンタル面でも選手にとって頼れる後ろ盾となっていた。ガルシアもまた、尊敬するレジェンドたちからのアドバイスが活躍を後押ししたのかと思いきや、「実は……」と話し始めた。

4年前から始めた習慣「自分の感情をコントロール

「実は、本なんだ。読書をするようになってから、ペナントレースはもちろん、WBCのような大舞台でも、感情的になりすぎずに落ち着いて自分の力を発揮できるようになってきた。だから、読書のおかげかな」

 本を読むようになったのは4年ほど前から。ジャンルは問わず幅広く読んでいるが、納得のいかないシーズンを送った2024年オフは貪(むさぼ)るように本を読んだという。この時はメンタルスキルや自己啓発に関する本を主に読み、状況によって焦ったり、興奮しすぎたりする自分の感情がパフォーマンスに影響を与えていることに気付いた。その結果、2025年にキャリアハイの活躍を生み出せたというわけだ。そして読書の習慣は、今でも続いている。

「去年読み終えた本だけど『Dominate Your Emotions』が面白かった。自分の感情をコントロールするための考え方やアドバイスが書かれていて、起伏なく穏やかでいることの強さに触れられている。最近のお気に入りはあの本かな」

 実際にクラブハウスで椅子に腰掛ける姿は泰然自若とし、インタビューに答える口調は穏やか。「本のおかげで色々なことが学べている」という言葉に深みが増す。

第6回WBCの準々決勝・日本戦で2ランを放ったベネズエラ代表のガルシア【写真:ロイター】第6回WBCの準々決勝・日本戦で2ランを放ったベネズエラ代表のガルシア【写真:ロイター】

WBC優勝で得た大きな自信「興奮しすぎずに…」

 もう一つ、今季に入り自分をより成長させてくれたと感じているのが、他でもない、WBCという舞台を経験した事実だという。「開幕前にWBCで自分の仕事を果たせたことは大きな自信になっている」と明かす。

「ロイヤルズではプレーオフやワールドシリーズで戦った経験がないので、WBCに出場し、あの興奮と緊張が混じり合わさった独特な雰囲気の中でプレーできたことは本当に大きな財産。あの特別な環境にあって、興奮しすぎずに気持ちを落ち着け、自分のやるべきことをしっかりとやり遂げる。WBCでそれができたんだから、もう大丈夫。だって、サルビー(サルバドール・ペレス)が『ワールドシリーズとWBCは別物だけど、どちらがクレイジーかって言えばWBCだ』って言っていたからね(笑)」

 今季のア・リーグ中地区は17日現在、首位から5位までが4.5ゲーム差にひしめく混戦となっている。シーズン中盤に差し掛かる中、ロイヤルズが勝ち進んでいくためには、読書を味方につけたガルシアの働きが一つのカギとなりそうだ。

(佐藤直子 / Naoko Sato)

RECOMMEND

CATEGORY