他球団は「悔し涙を流している」 ホ軍の元世界一監督も痛快…村上宗隆に重ねたジャッジ、トラウトらの“残像”

ホワイトソックスの快進撃を牽引する村上宗隆【写真:ロイター】ホワイトソックスの快進撃を牽引する村上宗隆【写真:ロイター】

貯金2は3年半ぶり…ホワイトソックスが送る「マジカルなシーズン」

 15日(日本時間16日)から始まったカブスとのシカゴ対決に2勝1敗で勝ち越し、2022年9月22日以来となる貯金2を記録したホワイトソックス。2023年からは3季連続で開幕2カード目にはすでに黒星が先行するシーズンを送っていただけに、地元シカゴでは5月に勝率5割を超える現状を「快進撃」「マジカルなシーズン」と半ば自虐気味に喜んでいる。

 今季開幕ロースター26人の平均年齢は約27.5歳で、ガーディアンズ(約26.2歳)、ナショナルズ(約26.9歳)に次いでメジャーで3番目に若い。低迷が続くだけにドラフト指名順は常に上位で、屈指の有望株たちが集まる。いったん歯車が噛み合えば期待以上の強さを見せるが、一方で負けが続くとなかなか立ち直れない脆さも合わせ持つ。ここ数年は脆さが先に立っていたチームだが、村上宗隆内野手の加入は状況が変わった大きな要因となった。

 49試合を終えた時点で、リーグトップの17本塁打。ホームランを打った16試合はチームも9勝7敗と勝ち越している。負けた試合であっても、大きなアーチが飛び出せばダグアウトは盛り上がり、チームの雰囲気は明るさを増す。シカゴでもまさに「村神様」となりつつある。

リーグトップの17本塁打を放つホワイトソックス・村上宗隆【写真:ロイター】リーグトップの17本塁打を放つホワイトソックス・村上宗隆【写真:ロイター】

「いいか、みんな忘れてやしないか? 人っていうのは、本当に忘れっぽいから困るんだ。日本の野球がどれだけレベルが高いか。それを考えたら、村上の活躍は何の不思議もない」

ホ軍を世界一へ導いたギーエン氏「本塁打、三振、四球が多いのは…」

 まくし立てるように話す声の主は、2005年にホワイトソックスを世界一へ導いたオジー・ギーエン元監督だ。現在は地元テレビ局の解説として、本拠地での試合はすべて球場で見ている。「日本代表チームのメンバーで、オリンピックでもWBCでも優勝している? そりゃ良い選手だって相場は決まってるんだ」と止まらない。

 昨冬にヤクルトからポスティングされた時、村上の長打力は高く評価されていたが、同時に高い空振り率を懸念する声が多く聞かれた。実際は、リーグ1位の本塁打数にリーグ2位の三振数(68三振)。前評判とそう変わらないが、本塁打がチームにもたらす効果の方が圧倒的に勝っているのは言わずもがなだ。

 リーグ4位の四球数(39)、ABSチャレンジでは63.6%(7/11)の成功率を記録する選球眼の良さも話題となっているが、ギーエン氏は「典型的なパワーヒッターの特徴だ」と解説する。

2005年にホワイトソックスを世界一へ導いたオジー・ギーエン元監督【写真:アフロ】2005年にホワイトソックスを世界一へ導いたオジー・ギーエン元監督【写真:アフロ】

「あのジャッジだって、初めて本塁打王になった2017年には52本塁打を打ちながら200三振以上(208)しているんだ。その後、彼はどうなった? さらに2度本塁打王になって、MVPだって3度受賞している。マイク・トラウトは? カイル・シュワーバーは? 本塁打、三振、四球が多いのは、村上がパワーヒッターであることの証。堂々と打席に立つ姿がいいじゃないか。三振を気にして小さく縮こまる必要なんてまったくない」

「これまでの日本人選手にはないタイプじゃないか?」

 ベネズエラ出身のギーエン氏は現役時代、遊撃手として活躍し、1985年には新人王を受賞。球宴にも3度出場し、1990年には日米野球で来日している。明るくフレンドリーな性格は天性のものだが、言葉や文化の壁がある異国でプレーする大変さは痛いほど分かる。だからこそ「驚くことが一つあるとすれば、移籍1年目のこんな早い時期に結果が出ていること。本当に対したものだ。まだまだ始まりに過ぎない。これからもっと安定感が増すだろう」と感心しきりだ。

「村上の何がいいって、本当に野球を楽しそうにプレーしている姿だ。楽しそう、ではなく、本当に楽しんでいるんだろう。チームメートとも冗談を言い合ったり、ダグアウトでは大声で気合を入れてみたり、勝負にかける熱意に溢れている。これまでの日本人選手にはないタイプじゃないか? まさにチームにピッタリの補強だったね」

ベンチでじゃれあう村上宗隆(左)とミゲル・バルガス【写真:ロイター】ベンチでじゃれあう村上宗隆(左)とミゲル・バルガス【写真:ロイター】

 そう言うと、ギーエン氏はいたずらな笑みを浮かべながら続けた。

「何チームが獲得に興味を持っているって言われてた? 5チーム、6チーム? みんな今頃、悔し涙を流しているんじゃないか。おかげでホワイトソックスは素晴らしい補強ができた。ここ数年は厳しい毎日が続いていたが、今年は軽やかな足取りで球場に来られているよ」

 若く才能ある選手が集まるホワイトソックスにとって、村上の加入は一時的ではない、真の起爆剤となるのか。ミラクルなシーズンの行方を見守りたい。

(佐藤直子 / Naoko Sato)

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