“自分中心”にならない村上宗隆に「とても感謝している」 間近で見てきたコーチ陣が証言…“周囲の予想より早く”順応できた理由

チーム関係者から「練習熱心」と評される村上宗隆【写真:ロイター】チーム関係者から「練習熱心」と評される村上宗隆【写真:ロイター】

試合前のトレーニング・練習予定は数週間先まで段取り済み

「Mune is a worker」(ムネは働き者・練習熱心だ)

 ホワイトソックス関係者に村上宗隆の話を聞くと、決まって登場するのが「練習熱心」という言葉だ。確かにクラブハウスがメディアに開放される間、その姿を見かけることはほとんどない。聞けば、トレーニングやスイングチェックなど、試合前にやるべきことの予定が数週間先まできっちり決められているという。

 この姿勢はチームに合流した2月からずっと変わらず。早くも地元メディアから“チームの顔”と認められながらも黙々と練習を続け、着実に成長を重ねる。そんな村上に舌を巻くのが、デレク・ショーモン打撃コーチと、内野守備を担当するジャスティン・ジャーシェリー三塁コーチだ。周囲の予想を上回るメジャーへの早い適応も、2人に言わせれば「当然のこと」でしかない。

弱点とされた「高め速球」だが、実際に対戦してみると…

 リーグ最多の18本塁打をはじめ、打点や四球でリーグ五指に入る打撃の観点から、ショーモン打撃コーチは「入念な予習」の効果を指摘する。昨年11月にポスティングされた当初、メジャー関係者の村上評は「高め速球が弱点」だった。だが、ゾーン別の空振り率を見てみると、内角高めが70%なのに対し、内角低めは65%、外約低めは76%と、特段高いわけではない。これについて、ショーモン打撃コーチは「ムネはまずは高め速球で攻められることを予測していたんだと思う」と説明する。

「ムネはメジャーでは何が正解となるのか、どうプレーすればいいのか、かなり予習を重ねてきたようだ。もちろん、最初は高め速球で徹底的に攻められたが、対応できると感じた対戦相手たちは、最近では変化球を使いながらバリエーションの幅を持たせた投球をするようになってきた」

 つまり、このオフに村上がしっかりと自己分析をし、自分の弱点を克服するべく重ねた予習が、初顔合わせする投手に対して“先手”を打つ形になったというのだ。

「入念な予習」の賜物…メジャー1年目から本塁打を量産【写真:ロイター】「入念な予習」の賜物…メジャー1年目から本塁打を量産【写真:ロイター】

 加えて、そもそも「打席での見極めが非常に優れている」と評価の高い選球眼に対しても、その精度を高める努力を惜しまない。「普段の練習の中でも、ボールかストライクかの判断にはこだわりを見せている」と打撃コーチ。今季から導入されたABSチャレンジでは、リーグで6番目に多い12回のチャレンジ(7回成功)を申し入れるなど、積極活用する姿勢が見られる。

村上の“ブレない強さ”の理由は「自分がどんな人間なのか…」

 もう一つ、打撃コーチが目を見張るのが、チームの攻撃方針を理解しようと努める意欲だ。村上と会話する時は、主な話題は自身の打撃ではなく、チームの攻撃理念やチーム全体としてのアプローチについてだという。

「自分の打撃だけにこだわるのではなく、チームの攻撃理念と自分の打撃理念とを組み合わせた考え方ができている。だからこそ、バットを振る・振らないの判断が上手にできるのだろう。初めて続きで戸惑いも多いと思うが、その中でもチームを念頭に置いたアプローチを取ることにはとても感謝している」

 移籍1年目ながらも、こうした視野の広い対応ができるのはなぜか。打撃コーチは「自分自身をよく理解しているからだ」と説明する。「自分がどんな人間なのか、好調な時はどういう状態なのか、俯瞰できているのだろう。その上で、自分が立ち戻るべき基準点を持っているから、ブレない強さがあるのだろう」と打者として持つ軸の強さを称えた。

自らノックを志願することも「とても教え甲斐のある生徒」

 守備の面でも、しかりだ。当初、打席での高め速球への対応と合わせ、村上の弱点とされていたのが守備力だった。ヤクルトでは主に三塁を守り、通算守備率.945は一般には「改善の余地あり」とされ、不安視されても仕方のないレベルと言える。だが、ホワイトソックスで任されることになったのは一塁手。日本ではプロ2年目と3年目に就いたポジションではあるが、過去3年では26試合に出場したのみにとどまっていた。

守備練習に励む村上宗隆【写真:荒川祐史】守備練習に励む村上宗隆【写真:荒川祐史】

 スプリングトレーニングから村上の守備力アップをサポートしてきたのが、内野守備を担当するジャーシェリー三塁コーチだ。全体練習前には毎日必ず内野手の誰かを相手にノックする。「内野守備は体で覚えることが一番。動きを繰り返しながら、頭で考えずに、手の感覚、足の感覚を掴むことが大事なんだ」と話し、選手が納得するまで練習に付き合う。村上もまた、練習に練習を重ねる1人だ。

「ムネからノックを受けたいと言ってくることもあるし、こちらから提案する時も『ぜひやりたい』と即答してくれる。打撃練習もそうだが、彼は本当に練習の虫。決して驕ることなく、実直に取り組んでいる。言われたことをこなすだけではなく、自分から積極的に質問をするタイプ。とても教え甲斐のある生徒だ」

 ここまで2失策を記録してはいるものの、村上の一塁守備について「試合を重ねるにつれ、だいぶこなれてきた。最初の頃に比べたら驚くような成長ぶりだ」と合格点を与える。

「状況によってポジショニングを調整し、必要な時に必要な場所へ適切な位置取りができている。ルーティンプレーはしっかりしているし、ショートバウンドした送球も素晴らしいキャッチで何度もエラーを防いでくれた。慣れればもっといいプレーが見られるはずだ」

 2人のコーチが異口同音に語るのが、「あれだけ熱心に練習をするのだから、今の活躍に何の不思議もない」ということ。ローマは一日にして成らず、ではないが、村上の活躍も一夜にしてならず。日々の練習の積み重ねに裏打ちされている。

(佐藤直子 / Naoko Sato)

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