名門ハーバード大出身も「勉強は好きじゃなかった」 “唯一のオファー”→MLBで11年…文武両道で極めた生き抜く術

  • 上野明洸
    上野明洸 2026.06.01
  • MLB
2026年からエンゼルスでプレーするブレント・スーター【写真:アフロ】2026年からエンゼルスでプレーするブレント・スーター【写真:アフロ】

36歳のベテラン左腕スーター、MLBでも珍しいハーバード大卒

 エンゼルスのブレント・スーター投手は、世界屈指の名門・ハーバード大を卒業して野球選手となり、メジャーで11年目のシーズンを迎えている。勉学と野球の両方で成功を収めるために、共通する必要なこととは――。

 スーターは2012年のドラフトでブルワーズから指名を受けてプロ入り。マイナーでの育成を経て2016年にメジャーデビューを果たすと、2018年には先発として8勝をマーク。トミー・ジョン手術を経て、2021年には中継ぎで61試合に登板。昨季まで5年連続で40試合以上に登板している。

 幼い頃から、夢はメジャーリーガーだった。「3歳の時、すぐにこのスポーツの虜になったんだ。ちょうど2歳から5歳くらいまでロサンゼルスに住んでいて、何度か試合を観に行ったりしたよ」。身長196センチの左腕は、シンシナティの進学校であるアーチビショップ・モエラー高校に進学。野球部でも活躍しながらバスケットボール選手としても活躍。4年連続の地区優勝、3年時には州王者にも輝いた。

 なぜ、ハーバード大に進学することになったのか――。プロ入りを目指し、志望したのはメジャーリーグのスカウトからの注目度も高いディビジョン1(D1)に所属する大学。高校生のスーターに声をかけた大学は多かったが、唯一D1だったのがハーバード大だった。

「他の選択肢は、ウォークオン(一般入部)や、低い奨学金の誘いばかりだった。あとはD3(3部リーグ)の学校だね。どうしてもいい学校で、D1の野球がしたかった。そして偶然にも、国で一番の学校が僕を欲しがってくれたんだから……迷う必要はなかったよ」

 リクルートされたとはいえ、入学するためには相応の学力が必要だった。「高校時代は一生懸命勉強して、いい成績をとった。SAT(大学進学適性試験)は2、3回受けていいスコアを目指したよ。スコアが高ければ高いほどあらゆる面で有利になるからね。高校時代も時間を無駄にせず真面目に取り組んでいた。遊びに行ったりもしたけど、やりすぎないようにしていたよ」。結果的に、勉強面では高校を次席で卒業した。

「大学には世界中のあらゆる人々が通っていた」成功するために大切なこと

今季ここまで22試合に登板しているスーター【写真:アフロ】今季ここまで22試合に登板しているスーター【写真:アフロ】

 世界屈指の名門大では、多くの課題が与えられるため、スポーツだけに集中することはできない。「授業以外では、少なくとも1日に2時間は(勉強を)していたと思う。大学で本当に身につけなければならなかったのは時間管理だった。学校にいる間は無駄な時間を過ごさないようにして、授業の合間の時間はすべて宿題や勉強にあてていた」。

 両親からは、勉強やスポーツにとにかく一生懸命取り組むことを教わったという。「常に一生懸命だった。テストや課題が常に重くのしかかっているような勉強が好きだったかと言われれば、ノーだね。卒業して野球だけをやれるようになった時は、本当にホッとしたよ。勉強は好きじゃなかったけど、一生懸命やったんだ」。

「それでも、素晴らしい大学でディビジョン1(1部リーグ)の野球ができたからね。最高の経験だったし、出会ったすべての人、教授たち、ボストンでの学生生活で得たすべての経験に感謝しているよ。素晴らしかったし、一生の思い出になる経験だった」

 大学では「環境科学と公共政策」を専攻。ブルワーズ時代(2016〜2022年)には、毎試合ダグアウトなどでプラスチックカップが大量に使われていることを問題視し、チーム内でボトルの使用を浸透させるなど、プロ野球選手になっても環境問題に積極的に取り組んでいる。

 勉学でも野球でもトップクラスの世界を見てきたスーターは、大学での学びが野球界を生き抜く上でも生きていると語る。

「大切なことは勉強と同じで、メンタルの管理。それから『人間関係』もそうだ。大学には世界中のあらゆる背景、人種、宗教、信条、社会経済的地位を持つ人々が通っていた。みんな同じ人間であり、みんなで一緒に物事を解決しようとしているんだということを学んだよ」。世界各地から様々なルーツを持つ生徒が集まっていた大学の環境は、キャリアをスタートさせたマイナーリーグと少し似ていた。

 両方で成功するために大切なことは、共通している。「『勤勉さ』だと思う。継続すること、一生懸命働くこと、時間を有効に使うこと、そしてメンタルの成長を活かすことだね。勉強で頭を鍛え、より強く良くしていくのと同じように、野球でもメンタルとの向き合い方は非常に重要なんだ」。

 年間50試合もマウンドに上がれば、抑えられる日もあれば打ち込まれる日もある。「肉体的な部分ももちろん大切だけど、メンタルが成熟していることはより大事。自分もここ6~7年くらいは力を入れているんだ」。世界最高峰の学び舎で培った勤勉さとメンタリティは、今日も腕を振り続けるベテラン左腕の武器となっている。

(上野明洸 / Akihiro Ueno)

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