野球部マネジャーの現実「キラキラした世界ではない」 見直される“在り方”…東京発のサミットが発信する「面白さ」
インタビューに応じる工学院大付野球部マネジャーの武藤里奈さん【写真:岡部直樹】西東京・工学院大付の塚本和也コーチの発案から広がった世界
東京の高校のマネジャーたちが口をそろえてその名を挙げる取り組みがある。学校の枠を超え、マネジャー同士が知見を共有し、ともに成長を目指す「マネジャーサミット」。その発起人が、工学院大付野球部で指導に当たる塚本和也コーチだ。なぜ一人のコーチがここまでマネジャーたちに向き合うのか。その答えは、彼が歩んできた野球人生と、マネジャーへの揺るぎない信念の中にあった。
塚本コーチの経歴で特筆すべきは、東京都高校野球連盟の審判部に長く籍を置いてきたことだ。春の大会決勝で三塁塁審を務めた経験もあり、「審判をやっていたときの方が、甲子園に近かったかもしれません」と笑う。現在は野球部の顧問にもなり、試合会場に行けば東西問わず多くの教員とつながりを持てる。そのネットワークが、後のサミット拡大を支える土台となった。
サミットの出発点は、当時のマネジャーが漏らした一言だった。他校と比べて自分たちにできることを探したい――。言われてからやるのではなく、自ら課題を見つけ、動こうとするその姿勢は、マネジャーとしてだけでなく、学ぶ者としての本質的な在り方を示していた。塚本コーチはその熱意を受け取り、すぐに都新宿の田久保裕之先生へ連絡を入れた。話はトントン拍子に進み、神奈川の立花学園や都狛江など信頼のおける先生方の学校を巻き込んで、第1回が開催された。
「マネジャーを雑用係やマスコットとして扱うつもりは毛頭ありませんでした。常に戦力になってほしいと思っていました」。その信念が、サミット立ち上げの推進力になった。
初回は7~8校からのスタートだった。第1回は各校の業務内容の発表会、第2回は「マネジャーが伝える高校野球の魅力、そこから新たな戦力確保に向けて」というテーマでの議論、第3回では「選手と指導者の潤滑油にマネジャーはなれるかなれないか」という深いテーマでグループディスカッションが行われた。現在は15校まで広がり、定着している。
工学院大付には男子マネジャーも在籍しており、ノックなどのグラウンド業務は彼らが中心を担う。そうした男女での役割分担は他校から「珍しい」と映るらしく、相互学習の契機にもなっている。実践学園の男子マネジャーも参加し、「数少ない男子同士で会うことができ、貴重な時間になった」と塚本コーチは振り返る。
「夏の涙」だけじゃない、365日の現実
工学院大付野球部マネジャーの武藤里奈さん【写真:岡部直樹】 今年1月のサミットで大きな刺激を受けたのが、新2年の女子マネジャー、武藤里奈さんだ。「都狛江の女子マネジャーがノックを打っていると聞いて、驚きました」。
(豊嶋彬 / Akira Toyoshima)