「三森の神走塁」が生まれた3つの理由 DeNA三塁コーチが明かした“根拠” 「ホンマに行きよった!」

楽天戦でDeNA・三森大貴が見せた好走塁が話題になっている【写真提供:産経新聞社】楽天戦でDeNA・三森大貴が見せた好走塁が話題になっている【写真提供:産経新聞社】

0-7から8回に同点に追いつき、9回に暴投でサヨナラ勝ち

 横浜スタジアムがどよめきと大歓声に包まれた。4日の楽天戦は、先発の東克樹投手が初回にまさかの4失点。8回には堀岡隼人投手が3点を失い、0-7と一方的な展開になった。

 打線がようやく奮起したのは8回だ。この日1軍に復帰した牧秀悟内野手が2本の適時打を放つなど、打者13人の猛攻で6安打を集中させ、一挙7得点。試合を振り出しに戻した。

 そしてドラマは9回に待っていた。先頭の度会隆輝外野手が四球を選んで出塁すると、代走には足のスペシャリストである三森大貴内野手が送られた。

 続く勝又温史外野手の打席。三森は牽制球で警戒されながらも初球にスタートを切り、余裕を持って二塁を陥れた。勝又は浅い中飛に倒れて塁を進めることはできず、京田陽太内野手が死球を受けて一、二塁となり、松尾汐恩捕手が中飛で2死まで追い詰められた。

 打順が伊勢大夢投手に回り、代打で神里和毅外野手が登場。カウント1-2からの4球目のフォークがワンバウンドして捕手のミットを弾いた。一塁側に大きく逸れ、さらに跳ねた際に方向が変わった。二塁走者の三森は一気に三塁を回ってホームにヘッドスライディング。一度はアウトと判定されたが、リクエストの結果、右手が先に本塁を触れており、サヨナラ勝ちとなった。

三森「『これは河田さんのせいにもできるし、行くか』という感じで」

 ヒーローとなった三森は「行こうか行かないか微妙だったのでどうしようかなと思いながら三塁を回って、でも(三塁コーチの)河田さんがすごくいい声で『いけ、いけ』と言っていたので『これは河田さんのせいにもできるし、行くか』という感じで行きました。全て河田さんのおかげです」と笑った。

“神走塁”はなぜ生まれたのか。河田雄祐1軍外野守備走塁戦術・育成兼ベースコーチが3つの理由を明かす。

 まずは、捕手が逸らしたボールが跳ねたこと。「普通に逸らしただけじゃなくて、方向が変わった。だからこれ、行けるんちゃうかって」。2つ目は、本塁カバーが投手だったこと。「タッチが甘くなる可能性は非常に高い。投手はあれくらいになる」。そして3つ目が、神里の打席でのアプローチだ。

 相手はフォークを決め球としている西垣雅矢投手。神里は初球、2球目と外角フォークにつられて空振りしていた。3球目こそ見極めたが、これもフォークだった。

「神(里)の追い込まれるまでの過程が過程だったから。あの空振りを見せられては、フォークが来たら厳しい。仮にいいファウルをしていたら止めていたかも知れないし、カウントにもよるけど、あれ(空振り)を見て、追い込まれているから『行け行け行け』と回しました」

DeNAの河田雄祐1軍外野守備走塁戦術・育成兼ベースコーチ【写真:荒川祐史】DeNAの河田雄祐1軍外野守備走塁戦術・育成兼ベースコーチ【写真:荒川祐史】

“職人”河田Cも驚くレアケース「一度だけあったかな。でも本当に少ない」

 一瞬にしてこれらの要素を判断し、大きな声とともに右腕を回した。が、「回したけどさ、ホンマに行きよった」。タイミングはアウト。最初の審判の判定のアウトだった。「ホームに投げられた瞬間、これアウトやって。『あ、やっちゃった』って思ったわ」と振り返るが、そこには三森の技術が詰まっていた。

 サヨナラで勝敗が決すると、歓喜の表情で三森とハグした河田コーチは「みも、あいつ可愛いんだよ。本当に神の手だったなあ」と喜んだ。


サヨナラ勝ちで牧秀悟に水をかけられる三森大貴(右)【写真提供:産経新聞社】サヨナラ勝ちで牧秀悟に水をかけられる三森大貴(右)【写真提供:産経新聞社】

 河田コーチは2003年に西武で1軍打撃コーチ補佐に就任してから、広島、ヤクルト、DeNAでコーチを歴任し、ベースコーチも20年ほどにわたって務めている“職人”だ。「一度だけあったかな。田中広輔。あいつも二塁から暴投で帰ってきたな。でも本当に少ない。レアケースだよ」。滅多にお目にかかれないシーンが、試合を決めた。

 三森自身は「投手野手、4時間くらい守って攻撃してくれていたのに、僕5分くらいでヒーローはすごく申し訳ないです」と茶目っ気たっぷりに振り返っていたが、わずか5分でも正真正銘、勝利の立役者だった。

(町田利衣 / Rie Machida)

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