巨人24歳が見失った持ち味「うまくいかない」 指揮官が短い言葉で押した背中…掴んだ復調の兆し

ロッテ戦に出場した巨人・中山礼都【写真:加治屋友輝】
ロッテ戦に出場した巨人・中山礼都【写真:加治屋友輝】

中山礼都が5打点の大活躍、巨人は交流戦7勝3敗と好調キープ

■巨人 8ー2 ロッテ(5日・東京ドーム)

 巨人・中山礼都外野手が5日のロッテ戦(東京ドーム)で自身初の5打点と躍動した。5月31日の日本ハム戦以来、4試合ぶりのスタメン出場。5回1死一、三塁で先制の左犠飛を記録すると、3-0の6回2死満塁では左翼フェンス直撃の走者一掃3点二塁打を放った。この活躍で、巨人は交流戦のロッテに8-2と快勝。橋上秀樹監督代行は、就任以来最長となる4連勝を飾った。中山は、開幕スタメンを果たしながら、打撃不振で2度も2軍に落とされていた。様々な葛藤を乗り越え、長いトンネルから脱出した。

 ヒーローインタビューの大歓声を背に、中山はベンチ裏へと姿を消した。ファンの目が届かない、ベンチ裏のミラールーム。報道陣が待つ場所に着き、一息つくと、中山は静かに、声を絞り出すようにして取材に応じた。表情は、明るいとは言い難い。安堵にも似た色を浮かべながら、その奥には、まだ苦しさがにじんでいる。5打点という結果を残してなお、決して満たされることはない。そんな感情が、確かに伝わってきた。一言、一言。言葉を選ぶ姿は、苦しかった日々を、ひとつずつ手繰り寄せているようだった。

「何をしてもうまくいかなかったんです」

 その一言に、長い低迷のすべてが滲んでいた。5月13日、広島戦の舞台となった福井。「8番・右翼」で先発した中山は、5打数無安打に倒れた。北陸遠征から帰京した当時の阿部監督は中山に2軍降格を命じていた。バットは振りに行けず、自分の持ち味さえ、いつの間にか見失っていた。「どうすればいいのか……」。もがけばもがくほど、打球は思い通りに飛ばなかった。

 焦りが、打撃を狂わせている。ヒットを打ちたい思いが先走るほど、打撃のタイミングは合わなくなる。手応えのある一打は、遠かった。ただ、それでも、救いだったのは孤独ではなかったこと。ファームでは、石井琢朗2軍監督が、大田泰示、金城龍彦の両打撃コーチらが、繰り返し練習に付き合ってくれた。3人だけではない。名前を挙げればキリがないが「支えてくれた人たちのために、結果を残したい」。その一念だけは、手放さなかった。

 立ち返った原点はシンプルだった。「間」を作り、思い切って振る。細かな技術的な部分はあるが、ヒットへの渇望が奪っていたのは、その一拍の余裕だったのかもしれないことに気がついた。そして、この日。指揮を執る橋上秀樹監督代行は、振るわぬ数字の中山を、それでもスタメンに据えた。起用の意図をこう説明する。

橋上監督代行は「なんとかきっかけをつかんでほしい」と背中押す

「ただ、若い選手だけに、なんとかきっかけをつかんで大きく飛躍してほしい」。試合前、振りすぎる癖を見抜いた指揮官は、短く声をかけた。打席に入る前も「楽にいけよ」と助言を送った。指揮官の言葉は大きかった。追い込まれる前に浮いた球を、迷わず叩く。間を取り、思い切って振り抜いたバットは、面白いように快音を響かせた。左翼へ打球は伸び、犠牲フライに二塁打と、気づけば2安打で5打点。2か月ぶりの打点は、いきなりの大暴れだった。

「一番ほっとしたのは、本人だろう」。橋上監督代行は目を細めた。「これで少しは、地に足をつけてやれるんじゃないかな」。

 何をしてもうまくいかなかった一日から、何をやってもうまくいく一日へと状況は変化した。2軍に2度も行った男は、3週間後、自身初の5打点で試合を決めた。長く暗いトンネルの終わりは見えた。それでも、ミラールームでの表情が晴れきらなかったのは、この一日が終わりではなく、始まりにすぎないと、本人が誰より分かっている。

(楢崎豊 / Yutaka Narasaki)

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