侍Jに必要な“新ポスト” 強豪国との決定的な違い…求める改革、黒田博樹氏のススメ

新ルールの採用で広がるメジャーと日本の違い
ベネズエラが悲願の優勝を達成した2026ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)から約2か月が経った。日本では侍ジャパンを率いた井端弘和監督が契約満了に伴い退任。2028年のロサンゼルス五輪出場と優勝を目指し、次期監督の選出が進められている。
これまで国際大会になると必ず、MLB球に準じる大会公式球とNPB公式球の違いが取り沙汰されていたが、今回のWBCではNPBで未採用のピッチクロックやピッチコムへの適応という新たな課題が加わった。昨年11月の宮崎強化合宿から導入し、対策に取り組んだが、結果は準々決勝敗退。数ある要因の一つとして、ピッチクロックやピッチコムといった不慣れなルールへの対応も挙げられるだろう。
MLBでは今季から新たに「ロボット審判」と呼ばれるABS(Automated Ball-Strike System)チャレンジが採用され、投手、捕手、打者が球審の判定直後に意義申し立てをできるようになった。まだ発表はされていないが、これまでの流れを考えれば、ロサンゼルス五輪でロボット審判が導入される可能性は極めて高い。
黒田氏が指摘するWBC4強に見る共通点とは…
また、今回のWBCでもたびたび言及されたのが、各選手の所属チームから代表チームに伝えられている出場条件だ。開催時期が開幕直前ということもあり、特に投手は投球数や投球間隔について所属チームから“申し送り”をされているケースがほとんど。日本に限らず各国代表は、所属チームの意向を酌み取りながら選手起用を考えることに腐心した。
「その中でもベスト4入りしたチームには共通点が見えると思います」と話すのは、第6回大会ではマイアミが舞台となった決勝ラウンドを現地で解説した元ドジャース、ヤンキース、広島の黒田博樹氏だ。日米通算203勝を誇る黒田氏は「それぞれのチームにメジャー球団と交渉ができるGMのような存在がいた」と指摘する。
確かに今回ベスト4入りしたチームには、GMまたは交渉術に長けた人物がいた。想定外の快進撃を見せたイタリアは元ドジャースGMのネッド・コレッティ氏、優勝候補筆頭とされたドミニカ共和国ではメジャー通算464本塁打を誇るネルソン・クルーズ氏、米国代表では元マーリンズGMのマイケル・ヒル氏がGM職に就いた。そして、優勝国ベネズエラでは「メールやショートメッセージではなく、私と直接会話をさせてほしい」と交渉術に深い自信を滲ませるオマー・ロペス監督だった。
プエルトリコ代表ではメジャー通算435本塁打のカルロス・ベルトラン氏がGMを務めるなど「メジャーに精通し、各球団と交渉して細かい契約を結んでいくポストがしっかりしていました」と振り返る。一方で「日本はすべて監督任せな部分が多かったのでは」と指摘するように、表立って選手や球団の交渉役を務めていたのは井端監督だった。
編成、交渉はGM、現場の指揮は監督、に
黒田氏は「メジャーではグラウンドレベルでの指揮は監督、チーム編成や交渉はGMという色分けがしっかりしていますが、今回のWBCでも役割が明確になっているチームが多かったように思います」と話し、侍ジャパンでも監督とGMの役割分担を明確にしながら、それぞれの役割にスペシャリストを置くことを勧める。
2028年のロサンゼルス五輪は7月28日から16日間の日程で開催予定だが、その頃は日米球界ともにシーズン真っ只中。春先とは違い、選手は100%の出力で試合に臨めるだろうが、一方でペナントレースが本格化し、所属チームとしては選手に過度な負担がかかったり、怪我のリスクが高まったりするようなことは避けたい。
日本はまず、五輪出場権を手に入れることが最大の目標となるが、その先も見据えた上でも、「編成や交渉のプロであるGMという存在をより明確にし、監督との両輪で走らせることが、日本野球をさらに高いレベルに押し上げるのではないかと思います」と話す。
野球=baseballではあるものの、新ルールの登場によりMLBとNPBの間に生まれた“違い”が徐々に大きさを増している今。選手起用を巡る各球団との契約や交渉、そして主要な国際大会がMLBルールに準じる形で実施されることを考えると、監督はもちろん、そのタッグパートナーでもあるGMに誰が就くのかが、日本野球の未来を握るカギとなりそうだ。
【写真】豪華レジェンドが集結…黒田博樹氏写真ギャラリー
(佐藤直子 / Naoko Sato)