19歳での初勝利も「達成感なかった」 向き合う配置転換…158キロ剛腕が描く“その先”

春季キャンプ終盤に西口監督が通告「いい場面で使うつもりだから」
高卒2年目、19歳にして進境著しいのが、西武の篠原響投手だ。昨季は2軍で先発陣の一角を担い、今季1軍では主に中継ぎを任され、19試合で1勝1敗1セーブ13ホールド、防御率1.47(成績は9日時点、以下同)。最速158キロのストレート、新球キックチェンジ、スライダーを武器に、4月から5月にかけて12試合連続無失点をマークするなど輝きを放っている。球界ではドジャース・山本由伸投手になぞらえる声も上がっている。
背番号52が躍動している。昨季は2軍の先発ローテンションを担い、8勝5敗、防御率2.20の好成績。シーズン終盤には1軍に昇格し、先発で2試合に起用された(0勝1敗、防御率10.29)。しかし今春キャンプ終盤、西口文也監督からリリーフへの配置転換を告げられた。
「『今季は後ろ(リリーフ)で使う。使うからには、いい場面で使うつもりだから』と言っていただきました。先発をやるつもりでオフシーズンを過ごしてきたので、いろいろな気持ちはありましたが、まず1軍でやることが今季の目標だったので、1軍の戦力として見てもらえるなら、中継ぎでも全然いいかなと思いました」と当時の心境を明かす。オープン戦では5試合に登板して防御率1.50。無事開幕1軍入りを果たし、好投を続けている。
一方、いずれは先発で……との思いも強い。4月25日、敵地での楽天戦では、5-5の同点で迎えた7回に登板し相手打線を3者凡退。直後に味方打線が決勝点を取ってプロ初勝利を挙げた。それでも「形としては初勝利を挙げることができましたが、先発で1勝することが目標なので……達成感はあまりなかったです」と語るほどだ。
そんな篠原について、山本由伸との共通点を指摘する球界関係者もいる。山本は2016年ドラフト4位で宮崎・都城高からオリックスに入団。篠原同様、1年目に先発で1軍デビューを果たし(5試合1勝1敗、防御率5.32)、2年目にリリーフに転向して54試合32ホールド、防御率2.89の大活躍。翌3年目から先発に戻り、一気に日本を代表する投手、そしてメジャーリーガーへと駆け上がっていった。
2人は体格も似通っている(篠原は178センチ、81キロ。山本は178センチ、80キロ)。篠原は「それほど意識するところではありませんが、山本さんはメジャーの最高峰でやっている投手ですし、目標にしている投手の1人です」とうなずく。

子どもの頃は小柄「コントロールを意識して磨くしかなかった」
愛知県名古屋市出身で、小学生から投手を始めた篠原だが、「中学に入学した時は、身長が149センチで、チーム(愛知尾州ボーイズ)でも小さい方でした」と振り返る。「チームにはすごく体の大きい子、球の速い子がいたので、自分が生き残るためにはコントロールを意識して磨くしかなかった。そのお陰で、今があると思っています」。“ハンデ”をプラスに変換してきたからこそ今がある。
中1からはジムに通い、初動負荷トレーニングに取り組んだ。専用マシンを用いて、可動域や神経と筋肉の協調性を高めるトレーニング法で、イチロー氏(マリナーズ会長付特別補佐兼インストラクター)が現役時代から採り入れていることでも知られている。
篠原は「ほとんど野球をやったことのない父(孝明さん)が、『いいのがあるらしいぞ』と調べてきてくれました」と語り、現在も継続している。篠原のしなやかな体の使い方は、初動負荷トレーニングに由来するのかもしれない。
高校は福井工大福井高。「地元の愛知は強い学校が多くて、甲子園に行きたかったので、愛知は避けようと思いました」と苦笑する。1年生の春からベンチ入りを果たしたが、残念ながら甲子園出場には届かなかった。
ドラフト5位で入団した西武では、今井達也投手(アストロズ)が昨季オフに海を渡り、平良海馬投手、高橋光成投手もメジャー志向を公言している。篠原も「将来的に憧れる場所ではあります」とうなずく。
特に心惹かれるのが、メジャーを代表するクローザーで最速104.5マイル(約168.2キロ)を誇るパドレスのメイソン・ミラー投手。今年3月のWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)でも米国代表の準優勝に貢献した右腕だ。「103マイル(約165.8キロ)を連発するピッチャーで、日本にはいないですし、WBCを見ていて、世界にはこういうピッチャーがいるのだということを知ることができて凄く良かったと思いました」。普段マウンド上でポーカーフェイスをあまり崩さない篠原の言葉に、熱がこもった。
昨季とは見違えるような雄姿を見せている若獅子が、今後どこまで伸びていくのか、想像も及ばない。
(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)