三木谷オーナーが覆す“プロ野球の常識” 16年ぶりの登壇…電撃人事に懸けた「本気」

楽天・三木谷浩史オーナー(左)と新監督に就任した吉井理人氏【写真:井上学】
楽天・三木谷浩史オーナー(左)と新監督に就任した吉井理人氏【写真:井上学】

シーズン中の監督招聘は「この1年間を無駄にしないという意味」

 異例づくめの監督交代劇だ。楽天は17日に前ロッテ監督の吉井理人氏の新監督就任を発表し、仙台市内で三木谷浩史オーナーも出席して就任会見が開かれた。日本プロ野球でシーズン途中に、内部昇格でなく、外部から新監督が招聘されるのは極めて異例。さらに三木谷オーナーが就任会見に同席するのも異例のことだった。

 日本プロ野球では過去、シーズン途中に監督が退任もしくは休養した場合、コーチが監督や監督代行となって残りのシーズンの指揮を執ることが多い。中には2024年途中の西武で松井稼頭央前監督が休養した際、当時の渡辺久信GMが監督代行を務めたように、フロントから選ばれることもある。いずれにせよ球団内部の配置転換以外では、終戦直後に復員によるケースがあった程度で、なかなか前例が見当たらない。

 球団サイドに「まっさらな新監督には低迷中のチームを背負わせたくない」という配慮が働くのが理由の1つ。就任する側も、キャンプからオープン戦を通して、じっくり自分のスタイルを浸透させ、既存の選手らとコミュニケーションを深めた上で戦いたいと考えるのが普通だ。

 三木谷オーナーは「いいじゃないですか、初めてというのは!」と相好を崩す。「まだ6月ですから、この1年間を無駄にしないという意味で、このタイミングでの就任をお願いさせていただいた」と説明した。吉井新監督は19日に敵地ZOZOマリンスタジアムで行われるロッテ戦から今季残り79試合の指揮を執る予定で、確かに全143試合のシーズンはまだ半分以上残っている。

 さらに三木谷オーナーは「今年の成績を追い求めるだけでなく、中・長期的な改革に取り組む中で、われわれが以前から注目していた吉井さんにお会いさせていただき、いろいろなお話をさせていただいたところ、ご決断いただけた」と“泥縄式”の人事ではないことを強調した。

新監督就任会見に同席した楽天・三木谷浩史オーナー【写真:井上学】
新監督就任会見に同席した楽天・三木谷浩史オーナー【写真:井上学】

「最終的にはオーナーの責任ということになる」

 また、プロ野球では異例でも、三木谷オーナーが会長を務めるヴィッセル神戸が所属するサッカー・Jリーグでは、シーズン中の外部招聘による監督交代も頻繁に行われている一面がある。そういう意味では“サッカー的”な人事と言えるかもしれない。三木谷オーナーは「(日本プロ野球でも)過去からの伝統は当然尊重しつつ、そこにとらわれず、新しい取り組みをしていきたいと思います」とうなずく。

 吉井新監督も就任の決め手として「三木谷オーナーが熱心に誘ってくれて、本当に野球に対する思いがすごく強いと感じ、これは引き受けなくてはいけないと思った」と説明。「(シーズン途中からの就任要請には)初めは『えっ!?』と思いました。常識的には、この期間は準備に当て、来季から指揮を執るのが普通ですから。しかし徐々に、今季の残り期間がもったいない、早くやりたいという思いに変わりました」と応じたのだった。

 一方、三木谷オーナーは自ら「私がイーグルスの記者会見に出させていただいたのは、(2010年10月の)星野仙一監督の就任(会見)以来かなと思います。本気度を皆様にお伝えする意味もあって、出させていただきまいた」とも明言した。監督以外では2021年1月、田中将大投手(巨人)がヤンキースから8年ぶりに楽天復帰した際にも、会見に同席しているが、いずれにせよ、本業で多忙な三木谷オーナーが自ら出席した意味は小さくない。

 球界では現場の監督以上に、長年編成トップを務めている石井一久GMの責任を問う声もある。しかし三木谷オーナーはこれにも、「スカウト、編成面で他球団には何十年もの歴史があり、ネットワークができている。その点、われわれは(球団創立から)23年たちますが、いまだ構築途中と考えています。石井GMだけではなく、編成面に関しては、良いこともあるし、正直言って改善しなくてはいけないこともある」と理解を示す。そして「誰か1人の責任ということではなく、最終的にはオーナーの責任ということになると思います。今後しっかり親会社としてサポートできることがあると思います」と力を込めた。

 新監督との契約スタイルを含め、三木谷オーナーのカラーが色濃く投影された人事であることは間違いない。実際、三木谷オーナーも自身を含む親会社のバックアップを約束した。パ・リーグ参入から昨季までの21年間で、優勝は日本一まで駆け上がった2013年の1度のみ。“本気”の三木谷オーナーが招いた新監督の下、今後どんな飛躍を見せることができるか──。

(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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