3年連続5位以下→セ・パ交流戦優勝、リーグ首位の原動力
西武は昨季までの3年連続5位以下の低迷から一変、今季はセ・パ交流戦で初優勝し、ペナントレースでも首位を走っている。大きな原動力の1人が、高卒6年目で成長著しい長谷川信哉外野手だ。交流戦MVPを獲得し、リーグ4位の打率.297、9本塁打30打点をマーク。26日の日本ハム戦では、1打席で自打球を2度当てるアクシデントに見舞われたが、好調のチームを牽引し続けることができるだろうか。
本拠地ベルーナドームに衝撃が走った。1-3とリードされて迎えた7回、1死一、二塁の好機で長谷川が打席に入る。まずはカウント2-2からの5球目、真ん中のスライダーを引っ掛けた打球が左足の甲付近を直撃し、苦悶の表情を浮かべた。痛みに耐え、打席に戻ったが、フルカウントの8球目にも、ほぼ同じ箇所を再び打球が直撃。今度はうずくまったまま、しばらく動けなくなった。
それでも長谷川は打席に戻った。仮にヒット性の打球を放ったとしても一塁まで走れるのか疑わしい様子だったが、9球目にワンバウンドになるスライダーを見送り四球で出塁。ここで代走を送られ、ベンチに退いた。
この四球が続く4番タイラー・ネビン内野手の同点2点適時打を呼び、9回にはアレクサンダー・カナリオ外野手のサヨナラソロが飛び出した。西口文也監督も「あそこでよく見て、四球を選んだことが、その後につながりました」と長谷川を称えた。
1打席で2度の自打球…病院から戻った長谷川の言葉
それにしても、攻守に活躍中で打順も3番に定着しつつある長谷川が、仮に戦線を離脱することにでもなれば、チームにとって一大事。記者は試合が終わると、交代後に病院へ向かった長谷川が戻ってくるのを待った。
トレーナーに付き添われ、左足を引きずりながら戻ってきた長谷川は開口一番、「骨には異常がないみたいです」と安堵の表情で明かした。そして「1打席で2度の自打球なんて初めてです。でも、あそこ(フルカウント)で代わるわけにはいきませんから。(打球を前に飛ばしていたら)気合で走るつもりでした。二塁までは無理でも、一塁までは何としても走ろうと思っていました」と強い口調で語った。打線の中軸を担う者の自覚と責任感が伝わってきた。
「状態は明日になってみないとわかりませんが、腫れが引けばプレーはできるかなと思います」。長谷川は気丈にそう続けた。確かに、ここで離脱するのはチームにとっても、本人にとっても、痛すぎるほどの活躍を続けている。今季は打撃好調に加え、守備では一塁、左翼、中堅、右翼の4ポジションを器用にこなしている。貢献度は絶大である。
昨季、プロ入り後初めて規定打席をクリアしたが、打率はパ・リーグの規定打席以上22人中、最下位の.225に終わった。今季は見違えるようで、「相手投手の失投を1発で仕留めることができていると思います」と確かな手応えを感じている。
仁志敏久コーチも認める成長「今は自分自身の形がはっきりしている」
しかも、短期間限定の“打撃好調”ではない。本人は「どうして打てているのか、公にはあまり言えませんが、自分ではわかっています。調子が悪くなった時も、原点というか、練習で“戻って来られる場所”が見つかりました」と自信をうかがわせる。
仁志敏久野手チーフ兼打撃コーチも「今季は力任せに振ることがなくなりましたね。力任せに振っていた時は、自分のやるべきこととか、自分の目標が薄っすらとしか見えていなかったのではないでしょうか。今は多分、自分自身の形だとか、どうならなきゃいけないのか、どうなってはいけないのかが、ある程度はっきりしていると思います。客観的に見ていても、『もったいない』とか、『どうして、そんな振り方をするのだろう』という風に見られることがなくなりました」と高く評価している。
京都市出身で、言葉遣いが丁寧で明瞭なのは、かつて舞妓(まいこ)をしていた母・りかさんの教えが行き届いているお陰のようだ。「『知っている人に対しては、あいさつをしっかりしなさい』と言い聞かされました。普段から人見知りをしていると、いざピンチに陥った時、振り返ってもらえないし、助けてもらえませんから」と語る。「ただ、接客業をしていた母は話すことに長けていますが、僕には話す能力があまりない。せめて、ゆっくり丁寧に話すことを心がけています」とも付け加える。
一方で、お立ち台では「マーベラス(素晴らしい)!」を連発し、自身のキャッチフレーズとしてアピール中。このままスターダムに駆け上がることになるのだろうか。
(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)