イチロー氏が語る野球の“変化” 団体から個人の戦いへ…W杯で実感「うらやましい」

「第2回 イチロー DREAM FIELD DAY」に登場したイチロー氏【写真:藤岡雅樹】
「第2回 イチロー DREAM FIELD DAY」に登場したイチロー氏【写真:藤岡雅樹】

球速や飛距離、打球速度に「今はフォーカスされがち」

 レジェンドが野球とサッカーの魅力を語った。マリナーズの会長付特別補佐兼インストラクターを務めるイチロー氏は27日、東京都新宿区のMUFGスタジアム(国立競技場)で行われた体験型スポーツイベント「第2回 イチロー DREAM FIELD DAY(ドリームフィールドデイ)」に参加。トークイベントでは現在開催中のサッカーのワールドカップ(W杯)北中米大会にも言及し「サッカーがうらやましい」と漏らす場面もあった。

「W杯も見ていますけどサッカーは凄く“チームのために”という感じがする。完全にチームプレーで役割があって、ゴールするために流れがあります。それが凄くうらやましいです。野球でも“チームのために”と言いますけど、そんなことを言っていたら、やってられない部分もあるんです」

 同じ団体競技でも、得点に至る過程は大きく異なる。サッカーはピッチの選手全員が1つのボールをつないでゴールに迫る。もちろん得点者は称えられるが“プロセス”にも注目が集まる。野球も単打に犠打やエンドランなど小技を絡め、つないで得点するスモール・ベースボールは日本のお家芸。ただ、ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)での大谷翔平投手の活躍など、近年は個々の力で打破するシーンも目につく。

 イベントには元サッカー日本代表でJFLのアスルクラロ沼津でクラブ・リレーションズ・オフィサー(C.R.O.)を務める中山雅史氏、陸上の北京五輪400メートルリレー銀メダリストである末續慎吾氏も参加。2人とのトークの中で、イチロー氏は「サッカーのような流れが今の野球にあるか考えることがある。野球は今、個人として能力を発揮する陸上競技に近づいている感じがします」とコメントした。

 末續氏から「球が速いとか、遠くに飛ばすとかですか?」と振られると「打球速度とかもですね」と返答。「今は割とそういうところにフォーカスされがちです。以前の野球はサッカーっぽい感じでしたけど、今は陸上競技の要素が強い。自分との戦いだと思っている選手が増えていると思う」と続けた。

子どもたちと交流したイチロー氏【写真:藤岡雅樹】
子どもたちと交流したイチロー氏【写真:藤岡雅樹】

小中学生165人と交流「好きなものを見つけて」

 団体競技である以上、1人の選手の力が突出していても勝利できないのは野球もサッカーも同じ。厳しい勝負の世界で、技術をより向上させたい思いにも、変わりはない。それでもイチロー氏には、最近の野球界の“変化”に思うところがあるようだ。

「個人で成績を出さなかったらボロカス言われてクビにされちゃう。みんな“チームのために”と言うけど、本当にそんなことを思っている選手はなかなかいないんじゃないでしょうか。だから見ていて“チームのために”と感じるサッカーがうらやましい。野球ももっとそうありたいけど、そうも言っていられないんです」

 結果が出なければ契約が切られるプロの世界で戦い続け、自身は2006、2009年と侍ジャパンの一員として日本代表のWBC連覇に貢献。チームの勝利に貪欲であり続け、チームのためにプレーしてきた自負があるだけに、なんとなくもどかしさも感じているようだ。

「チームとして負けたらモチベーションが上がらない。つまらないから、勝つためにやらないといけない。その中で個人として突き詰めることもできる。両方の要素があるところは、野球の特徴であり魅力でもあると思います」

 衣料品メーカー「ユニクロ」の協力で、次世代の夢を育む活動として実施されたイベントには小中学生165人が参加。「僕としては野球を好きになってほしいけど、子どもたちには何でもいいから好きなものを見つけて取り組んでほしい」。野球の現状と魅力を伝えたイチロー氏には、その願いが常に根底にある。

(尾辻剛 / Go Otsuji)

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