阪神を「舐めてたなぁ」 “若気の至り”を猛省…直後に謝罪「監督が行けって」

ヤクルト時代の飯田哲也氏【写真提供:産経新聞社】
ヤクルト時代の飯田哲也氏【写真提供:産経新聞社】

元盗塁王の飯田哲也氏、鷹・周東の本盗は「凄い。リードされている状況で」

 プロ野球はレギュラーシーズン折り返し地点まで辿り着いた。前半戦で印象に残ったシーンに、ソフトバンク周東佑京外野手の単独でのホームスチールを挙げるファンも多いのではないか。盗塁王を獲得するなどヤクルト、楽天で走攻守3拍子揃った外野手として活躍した野球評論家の飯田哲也氏は「僕も成功させた事があります」と振り返る。なかなかお目にかかれない本盗について伺った。

 5月10日のロッテ戦(みずほPayPay)。3回1死から周東は1点差に詰め寄る三塁打を放ち、2死後の事ことだった。マウンドにはルーキーで左投手の毛利海人、捕手は22歳の松川虎生。左バッターボックスに柳田悠岐外野手が立った。サードの寺地隆成はベースから離れ、三遊間寄りに位置していた。

「条件が揃っていましたね。狙ってもおかしくないプレーでした。サウスポーなので三塁走者の動きが背中越しで見え辛い。左打者だから右打席、ホームへの走路が空いています。もちろんキャッチャーからは左バッターだと走者はよく見えるけど、滑り込み易い。それに僕らの時代と違ってコリジョンルールもあるので、より積極的に行けますしね」

 毛利が柳田に対してまだ1球も投じていない中、周東は大きくリードを取って駆け出した。松川は右手を挙げると、それを見た毛利がボールを放る。前に出て受けた松川がヘッドスライディングの周東にタッチし、球審はいったんはアウトのジェスチャー。しかし、ミットからボールがこぼれ落ちており、奇襲が決まった。流れを引き寄せたホークスはこの試合に8-3で勝った。

「リードされている状況でホームスチールというのが凄い。いきなり走ったのが成功できた理由だと考えます。1、2球目で何か狙っている雰囲気が出たら警戒されちゃう。三塁ベースコーチの本多(雄一)も多分ベンチに『行かせていいですか?』と確認しているはず。その上で周東に『行っていいよ』と。誰もが走ってくるとは思ってない場面なので、ランナーの勝ち。気付いてない時に行く。それが走者の基本です」

阪神バッテリーから成功も「嫌な奴だなぁって思われちゃう」

 飯田氏はホークスでコーチ経験があり、周東を指導した。実は周東が生まれる前の1992年8月4日のヤクルト-阪神戦(神宮)で、ホームスチールの“お手本”を示していた。「今回の周東と全く同じなんですよ」と回想する。

 スワローズは初回に先頭の飯田氏の中前打を足場に無死二、三塁の先制機を築いた。古田敦也捕手、広沢克己内野手は連続三振。続くは左バッターのジャック・ハウエル内野手だった。相手投手はサウスポーの仲田幸司投手で、カウント0-2から飯田氏はホームへと頭から突っ込んだ。山田勝彦捕手が低めにきた球を掴んでタッチ。判定は最初はアウトのコールも、ボールがこぼれセーフに切り替わった。ヤクルトは4-3で勝利。足で稼いだ得点が効いた。

「この時はですね、三塁コーチの水谷(新太郎)さんから『(野村克也)監督が仲田はモーションが大きいから行けって言ってるぞ』と伝えられたんですよ。僕は『えっ、いいんですか?』と驚いた。でも首脳陣から『いいよ』って言われたら、そりゃ行くでしょ」

 飯田氏は球史に残る走塁を披露してきた。“単独ホームスチール成功”も輝かしい勲章の一つと思えるのだが、当のご本人はそうでもないらしい。

「良い経験ですけどね。その時は一生懸命やって『よっしゃー』となりましたが。選手をその後長くやってコーチとかも経験してきた今は、よく考えると……。舐めてたなぁ、僕も若くて調子に乗ってたなぁと思います。確かに隙を突いた好走塁かもしれないけど……。何かこうね。やり過ぎた? うーん、まあそういう感じはあります」

 後には仲田ら阪神の関係者の所へ足を運んだという。「相手からしたらムカつく奴ですよね。目を付けられるタイプ。お詫びに行きましたよ。『監督が行けって言うから行ったんです。すみませんでした』みたいな。嫌な奴だなぁって思われちゃうかもしれないじゃないですか」。心優しき飯田氏は笑うのであった。

(西村大輔 / Taisuke Nishimura)

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