続いた低迷に「もう後がない」 10年目の復権、日本ハム・堀瑞輝を変えた“開き直り”…消えた悲壮感

節目のプロ10年目で躍動する日本ハム・堀瑞輝【写真:加治屋友輝】節目のプロ10年目で躍動する日本ハム・堀瑞輝【写真:加治屋友輝】

昨季は自身最少2登板で防御率16.20…今季ここまで14登板で3年ぶり白星も

「今年はすごく明るいよ。よく喋るようになったしね」。日本ハム・武田久投手コーチが目を細めた先にいたのが、堀瑞輝投手だ。節目のプロ10年目。近年の“暗闇”を抜け、28歳は復権のシーズンを歩んでいる。

 2016年ドラフト1位左腕は「もう、後がないと思っているので」と今季に懸ける思いを明かす。広島新庄高時代はU18のエースとして活躍。ルーキーイヤーに1軍デビューを果たし、3年目の2019年に53試合に登板して中継ぎとして頭角を現すと、2021年はチーム最多の60試合に登板して防御率2.36、42ホールドポイントで最優秀中継ぎのタイトルを獲得した。

 華々しかったプロ生活は、左肩の故障により暗転する。2023年は5登板で防御率9.00、2024年は10登板で同8.64、2025年はキャリア最少の2登板で同16.20。「怪我をしてからなかなか1軍で戦うことができず、自分の持っている球も投げられず、何て言うんですかね……悔しい数年を過ごしていました」と苦い記憶をたどった。

 迎えた今季は、5月6日に1軍に昇格すると、ここまで14登板で2勝0敗5ホールド、防御率2.38。5月20日の楽天戦(エスコンフィールド)では6回に同点とされてなおも1死満塁からマウンドに上がり、代打の入江大樹内野手を1球で右飛に仕留め、さらに右翼手の万波中正外野手が本塁へ好返球して併殺。3シーズンぶりの白星を“1球勝利”で手にした。

「楽になったというか、変に考えることがなくなって…」

 昨季は2軍では33登板で同1.65の好成績を残しながらそれを1軍で出せなかった形だが、今季は2軍13登板で同1.42の好調さをそのまま発揮できている。背景には、思考の変化がある。

「これまでは四球をすごく避けていたなって思います。四球が嫌で、頑張って減らそう、減らそうとして、しっかり投げても真ん中に集まってしまうことが多かったです。でも今は、あまり良くはないかもしれないけど『四球を出しても大丈夫』と思えるようになって、そこからまたしっかり投げられている。いつも通り投げてきた球を1軍でもしっかり投げられているのは、そういうところかなと思っています」

 投手にとっての四球は、決していいものとは言えないことが多い。しかしそれも、考え方ひとつだ。

「四球って見え方も良くないじゃないですか。でも『いや、もともとこんな四球を考えるような投手じゃないよな』と思って。だから言い方はあれですけど『どうでもいいや』って。四球を1個出そうが単打と一緒。そう考えるようになったら楽になったというか、変に考えることがなくなって、いい意味で流せるようになりました」

 堀にとってはその“開き直り”が、いい方向に動いた。5月20日から9試合連続無失点投球。再び勝ちパターンにも名を連ねるようになった。

充実の表情で1軍のマウンドに立ち続ける【写真:町田利衣】充実の表情で1軍のマウンドに立ち続ける【写真:町田利衣】

「悔しかったけど、それを活かして1軍の舞台に立てているのは楽しい」

 そばで見守るブルペン担当の武田コーチは「昨年はちょっと暗かった。悲壮感というか、やはりちょっと自信をなくしていたのかもしれない」と明かす。それが今は「明るくなったね。抑えて、自信を取り戻して、腕も振れる、そういういい循環になっているように見える。もともと実績はあるし、やはりすごい球を投げるから。本当にいい戦力になってくれています」とうなずいた。

 ブルペン陣では阪神からトレードで今季から加入した島本浩也投手、上原健太投手と左3人が切磋琢磨を続ける。「(堀も)もう勝ちパターンでしょう。本当に頼もしい。左が今3人頑張っているし、まだファームにもいるし、贅沢な悩みですね」とうれしそうだった。

 チームは現在3位ながら、首位のソフトバンクとは3ゲーム差。堀にとっては久々に、しびれる毎日を過ごしている。その心境について尋ねると、穏やかな笑みを浮かべた。

「楽しいですよ。悔しかった時期がありましたけど、それをしっかり活かして1軍の舞台に立てているというのは、やっぱり楽しいなって思います」

 取り戻した明るさと、充実の表情が何よりの証。「今は本当に怪我なく、まずはこのまま1軍でシーズンを完走できるようにということしか考えてないです」という言葉通り、殻を破った堀瑞輝が最後まで駆け抜ける。

(町田利衣 / Rie Machida)

RECOMMEND

CATEGORY