単身海を渡った“楽天”唯一の日本人チア 夢実現へ「全てを変えた」…現地で感じた違い

「個」が輝く台湾チア…日本とは異なるエンタメの形
楽天グループの冠協賛ゲーム「楽天スーパーナイター」として、楽天-西武戦が6月22日に開催された。楽天の本拠地・楽天モバイル最強パークまで足を運べないファンに向けた特別な一戦に、台湾プロ野球「Rakuten Monkeys」の公式チアグループ「Rakuten Girls」がゲストとして来場した。
来日したメンバーのなかには、チーム唯一の日本出身である高橋佳帆さんの姿があった。楽天の公式チアリーダー「東北ゴールデンエンジェルス」での活動を経て、単身海を渡った高橋さん。語られたのは、異国に飛び込んだ女性の強い決意と覚悟だった。
高橋さんは3歳から18歳まで地元の静岡県でクラシックバレエを習い、大学では応援団チアリーディング部に所属した。2023年に「東北ゴールデンエンジェルス」へ加入し、活動の一環として台湾の試合に出演した際、ベンチ上のスタンドでチアリーダーがダンスやコールで盛り上げ、ファンも歌い踊る独自の応援スタイルに感銘を受けた。これが台湾での活動を志すきっかけとなった。
念願の「Rakuten Girls」への加入を果たし、今年で3年目を迎える。日本とは異なる台湾プロ野球チアの魅力についてこう語る。
「メンバーそれぞれにオーラや個性があって、個々が目立つ『アイドル』という感じが台湾チアならではの魅力だなとあらためて感じています。台湾ではすでに芸能キャリアがある方がプロ野球チアになるのが王道。メンバーはそれぞれ別の芸能事務所に所属していて、試合の日は集まって活動し、普段は各々でタレント活動をするという形です」
勝敗に関係なく球場で楽しめる側面も大きな魅力だという。
「私たちが試合中に踊る目の前の席では、ファンの皆さんがカメラを構えて撮影を楽しみ、それがSNSで拡散されてさらに熱を帯びる。チア自体が、ひとつの大きなエンターテインメントとして確立されています。スタンドでのダンス中のアドリブやポーズなど『個人の表現力』も欠かせないのが台湾流。自由度が高い分、難易度も高いのかなと感じています」
「生活も言葉もすべてを変えた」異国での挑戦を支えるもの
自らアプローチを重ねて道を切り開いた高橋さんは、「たくさんの方がつないでくれたご縁のおかげで、今の私があります」と語る。やりがいについて質問すると、異国の地で夢を追う並々ならぬ熱量が伝わってきた。
「台湾での毎試合が、私にとっては本当に意味のあるものなんです。台湾で生まれ育ったメンバーとは違い、私は『どうしても台湾でチアになりたい』と決意して、日本から海を渡ってきました。だからこそ、人一倍強い思いを1試合1試合にかけてきました。 この夢のために生活のすべてを変え、言葉も学んできました。その決意や覚悟は、きっと仕事に向き合う姿勢に表れているはずです。それがファンの皆さんにも伝わり、応援してくださる方が少しずつ増えていく。それが今の私にとって何よりのやりがいです」
台湾行きが決まった際、家族には事後報告だったという。
「お父さんは『死ぬなよ』と背中を押してくれ、お母さんは娘の意思を尊重しつつも、やはり違う国へ行ってしまう寂しさをにじませながら送り出してくれました」
この日、高橋さんの母親の姿もあった。試合前のファンミーティングでは、最前列で娘のグッズを掲げ、涙ぐむ母の姿が。高橋さんは「見たら泣いちゃうから、絶対に見ないようにしていました」と、少し照れくさそうに微笑んだ。

古巣への凱旋、そして未来への野望
今回の「楽天スーパーナイター」は、高橋さんにとって古巣への凱旋でもあった。多忙なスケジュールの中、胸を熱くする再会もあったという。
「今回、共演した東北ゴールデンエンジェルスのNOAちゃんとKOTOHAちゃんは、私が東北ゴールデンエンジェルス時代にチアダンススクールで教えていた教え子なんです。その2人と一緒にひとつの演技を作り上げられたことは、すごく感動的でした」
「台湾チアとして日本の試合に出演するのがひとつの夢だった」と語る高橋さん。今後の野望についても明かしてくれた。
「今、台湾では韓国プロ野球(KBO)チアのブームがすごい勢いなんですが、それに負けず劣らず、日本人チアとして存在感を出していきたいです。私が日本の楽天イーグルスから台湾の楽天モンキーズへ来られたのは、本当にすばらしいご縁のおかげなので、今後は日台の楽天同士でもっとたくさんの交流ができたらいいなとも思っています。 そして、いつか台湾のコンビニの商品のパッケージに自分の顔が載るくらい、台湾のなかで有名な日本人になれるように頑張りたいと思っています」
最後に、ファンに向けて次のようにメッセージを送る。
「台湾の野球文化、チア文化は、今お話ししただけでは語りきれないほどの魅力があります。皆さんぜひ台湾に遊びに来てください! そして高橋佳帆を探しに来てください。待ってます」
異国での孤独や重圧を跳ね除け、言葉の壁を越えてファンを魅了し続ける高橋さん。弾けるような笑顔の裏には、「すべてを懸けてここに来た」という揺るぎない覚悟がある。日本とは一味違う球場の熱気とエンターテインメントを味わいに、台湾の球場へ足を運んでみてはいかがだろうか。
(「パ・リーグ インサイト」編集部)
(記事提供:パ・リーグ インサイト)