迫る決断の時…佐々木麟太郎に“冷徹”な現実 NPB1位も、MLBで評価を分ける「残酷な理由」

  • MLB
  • 2026.07.11
スタンフォード大・佐々木麟太郎【写真:栗木一考】
スタンフォード大・佐々木麟太郎【写真:栗木一考】

「2026 MLBドラフト presented by Nippon Express」が12日に開催

「2026 MLBドラフト presented by Nippon Express」が11日(日本時間12日)に開催される。スタンフォード大の佐々木麟太郎内野手の動向を巡っては、日本だけでなくドラフト前日に米スポーツ専門メディア「ジ・アスレチック」が特集するなど注目の的だ。一方で、昨年のプロ野球ドラフト会議で2球団が競合した逸材だが、事前の予想では“低評価”の声も少なくない。改めて、その立ち位置を考察していきたい。

 先月開催された「ドラフト・コンバイン」の実技において、佐々木が見せたパワーは間違いなく一級品だった。打撃練習では打球速度115.4マイル(約185.7キロ)、飛距離458フィート(約139.6メートル)という驚愕の数値を叩き出し、右翼席へ豪快なアーチを連発。日本で高校通算140本塁打を放ったその長打力が、木製バットでもメジャー級であることは証明してみせた。

 しかし、米ドラフトにおける最終的な見通しは決して芳しいものではない。現時点で佐々木の名前は、権威ある「キース・ローのトップ100」や「MLBパイプラインのトップ250」のプロスペクトリストに含まれていない。MLB公式サイトにいたっては、上位指名とはほど遠い「7~12巡目(全体194位から373位付近)」での下位指名を予想しているのが冷徹な現実だ。

 昨秋のNPBドラフトではソフトバンクから1位指名を受けた怪物が、なぜ米国ではこれほど厳しい立場に置かれているのか。最大の要因は「一塁手限定」という守備位置の価値(ポジショナル・バリュー)の低さにある。

 MLBのドラフト1巡目は、遊撃手や中堅手、投手といったいわゆるプレミアポジションの選手が重視される傾向にある。野手においては、アマチュアレベルで遊撃などを守れていないと、よりレベルの高いプロでは通用しないというのが定説だ。逆に少し遊撃守備が平均以下だとしても、二塁や三塁に移って花開く選手もいる。言葉は悪いが“潰しがきく”といえる。では、一塁手や指名打者の選手はどうか。

 一般的には他のポジションに転向することは難しく、圧倒的な打棒を発揮できない限りは貢献度が高くないと見られる。これは、メジャーで最も重要視される勝利貢献度「WAR」の概念にも反映されている。例えば、ドジャース・大谷翔平投手は打者に限ればDHでしかプレーしていないものの、守備をしないマイナス分を大きく帳消しにするほど打撃で上積みができる。また、フィリーズのカイル・シュワーバー外野手はドラフト時(2014年の全体3位)は捕手としてプロ入りした。その後、守備面で厳しくなり、左翼や指名打者に移っている。

スタンフォード大・佐々木麟太郎【写真:荒川祐史】
スタンフォード大・佐々木麟太郎【写真:荒川祐史】

16HR&OPS.952でも「アピール不足」のワケ

 また、佐々木の評価を難しくしているのが、米大学野球(NCAAディビジョン1)での実際の成績が、事前の高い下馬評に対して「物足りない」と映っている点も大きい。今季は54試合で16本塁打、OPS.952をマークしたものの、打率は.262にとどまり、50三振に対して45四球と確実性に課題を残した。さらに本塁打数はリーグ20位圏外、OPSも同50位圏外となっている。

 環境適応に苦しんだ1年目のOPS.790や、昨夏のケープコッド・リーグでの打率.107という低迷も、「ジ・アスレチック」によれば、米スカウト陣には「アピール不足」として記憶されている。

 こうした背景もあり、日本では1位指名を受けたにもかかわらず、米国では低評価となる乖離が生まれた。そして、佐々木の目の前にある「3つの選択肢」をより複雑にしている。

 1つ目は、日本に戻りソフトバンクに加入すること。2つ目は、MLBドラフトで自身を指名した米球団と契約してマイナーでプレーすること。そして3つ目は、スタンフォード大に残留して3年生のシーズンで評価の急上昇を狙う道である。もっとも、MLBドラフトは「年齢」にもシビアだ。大学が1年変わるだけで、求められる成績のハードルはぐっと高くなる。

 とはいえ、佐々木に対しては「D1Baseball」が全体43位と評価するなど、ポテンシャルに対して期待をする声も少なくない。事前の予想は4巡目以降が“定説”ともいえる状況だが、あくまで予想は予想。MLB30球団が高く評価している可能性もある。

 果たして佐々木に対してMLB球団はどのような評価を下すのか。そして実際に指名を受けた時、佐々木自身はどんな決断をするのだろうか。

(新井裕貴 / Yuki Arai)

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