大谷なき球宴で消えた怒号 17番グッズは“一等地”も…敵地で示した「不在の存在感」

ドジャース・大谷翔平【写真:荒川祐史】
ドジャース・大谷翔平【写真:荒川祐史】

大谷は左膝の治療のためオールスター戦を欠場した

 ドジャース・大谷翔平投手が左膝の治療のため、今年のオールスター戦を欠場した。お祭り騒ぎの真ん中に二刀流のスーパースターがいない。どこか寂しさと拍子抜けした空気が漂う、そんな球宴となった。

 シチズンズバンクパークのグッズ売り場に足を運ぶ。出場選手たちのユニホームがずらりと並ぶ中、ドカンと中心に置かれていたのは、やはり大谷の17番ユニホームだった。球宴を記念して選出選手を描いたペナントやマグネットも、大谷が中央に描かれていた。

 ここは全米屈指の熱狂度を誇り、ビジターに対して極めて冷酷なことで知られるフィラデルフィアだ。その本拠地で、リーグの覇権を争うライバル球団の、しかも欠場する選手のユニホームが“一等地”を占拠していた。

「オオタニ本人はいないけど、やはりよく売れているね」。実際に飛ぶように売れていたのかまでは分からないが、主力商品に変わりないようだ。球界のビジネスの中心には「大谷翔平」が厳然として存在している。この歪なほどの光景が、今のメジャーリーグにおける規格外の立ち位置を何よりも雄弁に物語っていた。

 オールスター恒例の、前日会見の取材スタイルも、昨年とは様変わりした。これまでは大谷の言葉を一つでも多く拾おうと、取材エリアはまさに戦場だった。会見場のゲート前には1時間前から並び、ゲートが開けば記者たちが大谷のもとへ全力で走る。それが当たり前だった。「押さないで!」。警備員の怒号が響くのも日常茶飯事だったが、今年はそんな声は一切なかった。

ジャッジも不在…米メディアはオールスター戦のTV視聴率の低下を危惧

「今年は走らなくていいな」。誰に言うでもなく、他の取材者がポツリとつぶやいた。その声には、体力の消耗を避けられた安堵よりも、熱狂の中心を失った寂しさが混じっているように聞こえた。

 さらに今年は、ヤンキースのアーロン・ジャッジ外野手も右肋骨の疲労骨折のため、オールスター戦を欠場した。現代のMLBが誇る二大巨頭を同時に失った真夏の祭典に、米メディアからはテレビ視聴率の低下を危惧する声が上がっている。2大スターに依存しすぎる危うさが、奇しくもこんな形で露呈してしまった。

 様変わりした取材エリアと主役不在のまま「大谷一色」に染まるショップ。姿はなくても、そこにあるのは間違いなく大谷の影だった。

 大谷のオールスター欠場について、同僚の山本由伸投手は「そんなに深くは会話していないですけど、いつも一緒なのですごく違和感があります。一番の選手だと思うので、このオールスターにいないのは寂しいですね」。

 ホワイトソックスの村上宗隆内野手も「一緒に出たかったなっていう思いはありますし、でも大谷さんはいつまでも大谷さんなので、あんまり気にしてないです」と語った。“不在の存在感”の大きさだけが、重く、確かに残っていた。

(小谷真弥 / Masaya Kotani)

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