ショートで100試合以上に先発出場したのは2019年の大和が最後
2度の2軍落ちを乗り越え、定位置への歩みを進めている。DeNAのドラフト3位・宮下朝陽(あさひ)内野手(東洋大)が攻守で光を放ち、ここまで32試合で打率.228、2本塁打、10打点の成績を残す。月間打率は4月が.120、5月が.143だったが、6月は3割を超え、7月は15日時点で.292をマークしている。
202回1/3を守って、いまだ失策はゼロ。1200イニングあたりのUZR(守備指標)は、200イニング以上守っている遊撃手で4位に名を連ねる。トップから滝澤夏央(西武)、友杉篤輝(ロッテ)、源田壮亮(西武)で、セ・リーグトップであることを考えれば安定感は疑いようがないだろう。
チームは近年、ショートのレギュラーが不在の状況だ。スタメンを見てみると、2025年は京田陽太の47試合を筆頭に、石上泰輝が37試合、林琢真が33試合、森敬斗が23試合、柴田竜拓が3試合守った。
2024年は森の51試合が最多で、京田が37試合、林と石上が19試合、大和が14試合、西浦直亨が3試合。1人が100試合以上先発したのは2019年の大和までさかのぼり、143試合フル出場は2017年の倉本寿彦以来、現れていない。
プロ初昇格からわずか6日…GG賞3度の藤田コーチが驚いた姿
“扇の要”をルーキーが射止める可能性は――。藤田一也1軍内野守備走塁戦術・育成兼ベースコーチと大村巌1軍打撃育成コーチに分析してもらった。
まずは守備。現役時代、3度のゴールデングラブ賞に輝く名手だった藤田コーチが「1年目にしてはすごく落ち着いてプレーできています。元々、肩は強いので。現段階では十分すぎるくらいいいものを見せてくれています」と評価する。
驚かされたこともあったという。宮下がプロで初めて1軍に昇格したのは4月11日。1週間も経たないうちに、同17日、19日の広島戦(マツダスタジアム)に遊撃で先発出場した。
「いきなり来て天然芝は、人工芝で慣れている選手からしたら普通は嫌なんです。でもそういうところも見えず落ち着いてできていた。守備は安定していて、こちらも安心して見ていられます」
一気に積み重ねることができない“経験”を埋める術「本当に野球に夢中に…」
技術とともに太鼓判を押すのが「ちょっと大人な感じ」という性格面だ。「うちはガヤガヤした選手が多いですけど、宮下は喋っていても落ち着いているというか。本当に吸収しようというのがあるのは伝わります」と目を細めた。
一方で「1歩目の速さとか、スピードというのはまだまだない」と指摘する。「特にショートは打つより守れないとダメだと僕は思うので。今のところはしっかり守れていますけど、これを継続しながら、成長してもらいたい」と願った。
プロに入って、誰もが直面するのがシーズンを戦い抜く過酷さだ。ほぼ毎日試合があり、加えて移動もある。「やっぱりしんどいと思うんです。そういうところも自分で考えていかないといけない。朝来てセルフケアをするとか、そういうのもまだまだ足りない部分はあると思います」と藤田コーチ。プロで戦い抜く術を得ることも、大切な要素だ。
レギュラーになるために必要なものには「経験が一番大事」と断言する。経験は一気に積み重なるものではないが、藤田コーチは説く。
「例えば(DeNAの試合を除くと)セ・リーグならあと2試合、パ・リーグを含めてもあと5試合あるわけですよね。そういう中でもニュースを見ていたらいろいろなプレーがあって、『自分だったらどうするか』というところまで本人が本当に野球に夢中になっていかないといけない。まだ経験は少ないから予測の部分での引き出しは少ないと思うので、そういうところは大事かなと思います」
大村コーチ「将来的には本塁打も打ててチャンスに強い打者になってほしい」
続いて打撃面。大村コーチは「思い切りがよく、空振りを恐れない。右中間にも強く打てるところが強みだと思います」と評価する。4月12日の広島戦(横浜)で放ったプロ初アーチは、まさに逆らわない打撃で右中間席に運んだものだった。
また「自分で練習できて、自分を持っていると思います。言われたことは短期間で改善できる選手です」とも。周りに流されず己を貫けるという強さも兼ね備えている。
現在は相手先発が左投手のときのスタメン起用が多く、右投手のときはベンチスタートになることが多い。今後右投手との対戦で結果を残せるかどうかがカギになる。大村コーチは「右投手を多く経験して、将来的には本塁打も打てて、チャンスに強い打者になってほしいと思っています」と思い描いている。
長年抱える“ショート問題”を解決する存在となり得るか――。その素質があるのは明確。「レギュラーを掴むか掴まないかは本当に自分次第。今年頑張るんじゃなくて、10年、20年とできるような選手になっていかないといけないですから」という藤田コーチの言葉通り、宮下にとって勝負の夏場を迎える。
(町田利衣 / Rie Machida)