「僕は違う」 たった20球でマウンド譲った屈辱のKOからの再起…オリックス・山岡泰輔が抗った“投球のトレンド”

復活を目指し奮闘を続けるオリックス・山岡泰輔【写真:加治屋友輝】復活を目指し奮闘を続けるオリックス・山岡泰輔【写真:加治屋友輝】

5月24日の西武戦で今季初先発も2/3回を2失点で降板…続いた2軍での調整の日々

 かつてのエースが、もがき苦しみながら復活を目指している。2026年の成績は1試合に先発し、2/3回3安打2失点、防御率27.00――。これまでにないシーズンを過ごしているのが、オリックスの山岡泰輔投手だ。

 プロ10年目を迎えた背番号「19」は今季、3年ぶりに先発投手としてスタートをきった。オープン戦では結果を残せず開幕1軍は果たせなかったが、虎視眈々と1軍のマウンドを目指し鍛錬を積んだ。ようやくチャンスを掴んだのは5月24日の西武戦(ベルーナドーム)。2023年7月9日以来1050日ぶりの先発マウンドは、わずか20球で幕を閉じた。

 先頭のアレクサンダー・カナリオ外野手に先頭打者アーチを浴び、連打で無死二、三塁とされると、タイラー・ネビン内野手には勝ち越しの中犠飛。さらに四球で1死一、三塁となり平沢大河内野手を左飛に抑えたところで降板となった。1回持たず2/3回を2失点。あまりに早いKO劇だった。

 失意のマウンドの翌日には出場選手登録を抹消され、再び2軍での調整となった。先発として足りない部分を見つめ直すことになったが、現在はリリーフでの登板が続いている。2軍降格直後の5月31日の日本ハム戦(杉本商事BS)では先発して3回2失点だったが、以降は1イニングを任せられることもあれば、6月18日のソフトバンク戦(タマスタ筑後)では3番手で4イニングを投げた。7月9日のソフトバンク戦(みずほPayPayドーム)、同10日の阪神戦(杉本商事BS)ではビジターからの移動ゲームにも関わらず連投をこなした。

2019年には侍ジャパンにも選ばれ「プレミア12」の優勝に貢献した【写真:荒川祐史】2019年には侍ジャパンにも選ばれ「プレミア12」の優勝に貢献した【写真:荒川祐史】

出力を求め、自身の投球スタイルを見失う悪循環

 降格後の山岡の立ち位置はリリーフを含めた“便利屋”にも見える。本来なら登板機会に飢えた若手が担うポジションだ。2019年には13勝4敗で最高勝率のタイトルを獲得し、開幕投手や侍ジャパンも経験した右腕のプライドはズタボロに違いない――。それでも、本人は愚痴一つ吐かず、自身の立場を理解している。

「正直、僕もあんまり(先発か中継ぎか)分かってない部分はありますが、とりあえず今は中継ぎとして結果を出していくしかない。投げるところでゼロに抑えるしかない」

 まだ、30歳。老け込む年ではない。昨年は全て救援で41試合に登板。復活の兆しを見せていたが、本人が求める投球はできていない。先発再転向が決まった今年、春季キャンプから自身を苦しめているワードは「出力」だ。現在は高校生でも150キロが珍しくない“スピード全盛時代”。周囲は山岡のピッチングスタイルとは真逆を求めている。

「まだ、思い描く投球はできていない。3年ぶりの先発で調整も難しい部分もありました。『出力、出力!』と言われたところで、僕はそこは違うと思っていて。出力を上げようとした結果、力みだったりとか、球速は出るけど打たれる。そうなるとコントロールできない悪循環が生まれる。143、4キロとかでも、コーナーに投げられれば抑えられるところを、スピードが出ていない。そこの出力を求めにいくとどうしても体にブレが生じる。それで甘くなったら結局147、8キロ出ても打たれる。それがどっちつかずだったので」

7月18日に1軍に合流、シーズン後半での巻き返しを図る【写真:加治屋友輝】7月18日に1軍に合流、シーズン後半での巻き返しを図る【写真:加治屋友輝】

「僕は自分のスタイルで抑えるしかない」

 172センチ、68キロ。入団当初から小柄な体を操り、キレのある直球と、伝家の宝刀・スライダーやチェンジアップを交えながら強打者と対峙してきた。チームには2軍を含め150キロを超える投手が、ぞろぞろ控えている。周囲と比較することはないが、もう一度原点に帰り、本来の姿を取り戻すつもりだ。

「今のトレンドは球速がある投手だと思う。でも、僕は自分のスタイルで抑えるしかない。もう、そこで結果を出す以外はないと思っています。プロは結果が求められる世界。やるしかないんです」

 シーズン前半に首位争いを続けていたチームは、投打ともに故障者が相次ぎ、気がつけばBクラスに転落。チームもファンも山岡の一日でも早い復活を願っている。

 コマ不足に苦しむ投手陣の救世主になるべく、7月18日、1軍には山岡の姿があった。1回持たず、わずか20球のKO劇から2か月半。厳しさを増す夏の日差しが照りつけるマウンドで、原点回帰を誓った“小さな大投手”の逆襲がここから始まる。

(橋本健吾 / Kengo Hashimoto)

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