高打率の一助となっている快足…77安打中、18.2%に当たる14本が内野安打
意外な選手が、パ・リーグの打率ランキング上位にいる。西武・滝澤夏央内野手だ。現在12球団の選手で2番目に低い身長164センチの小兵だが、打率.301(256打数77安打)で、日本ハムのフランミル・レイエス外野手の.324に次ぐ2位につけている(17日時点)。成長著しいプロ5年目の22歳に、コーチ陣はシーズン打率3割、ひいては首位打者獲得の可能性も感じ取っている。
チームきっての俊足であることも、高打率の要因の1つだろう。16日に本拠地ベルーナドームで行われたロッテ戦。1点ビハインドの6回無死一、二塁で打席に入った滝澤は、初球に送りバント、2球目にバスターを試みるも、いずれもファウル。カウント0-2に追い込まれたが、3球目の外角のナックルカーブを強引に引っ張ると、高いバウンドの一塁方向への打球となり、ベースカバーに入ったロッテ・毛利海大投手が一塁に到達する前に、ヘッドスライディングで内野安打をもぎ取った。
滝澤は「初球に送りバントのサインが出ていたのに、ミスしてしまった。とにかく走者を次の塁に進めたいという気持ちで、一、二塁間を狙って引っ張りにかかった結果、うまく引っ掛かってくれました」と少し不本意そうに振り返った。盗塁数もチームトップ(リーグ4位)の10個で、77安打のうち俊足を生かした内野安打が14本(18.2%)を占めている。
もっとも、滝澤を指導する立花義家打撃コーチは「足が速いからどうこうではなく、打ち方が良くなりましたよ」と強調する。
昨季は打率.234に終わり、規定打席にも5打席足りなかった。今季も4月末の時点で打率.200と低調だった滝澤に、立花コーチは「体の開きが早過ぎる分、バットが出てくるのが遅れている。先に手を出せ」とアドバイスを送ったという。滝澤は今も、体の開きを抑える感覚を染み込ませるため、試合前のティー打撃ではツイスト打法(インパクトの瞬間に、腰を逆方向=捕手方向に回す打ち方)を取り入れている。
「8月の暑い時期を乗り越えることができれば、そこで3割を打っておけば、シーズン3割を打つでしょう」というのが、立花コーチの見立てだ。というのも、昨季は7月の月間打率が.222(63打数14安打)、8月に至っては.136(66打数9安打)と落ち込んだ。
そこは滝澤自身、「そのために昨年のシーズンオフから体力強化をしてきました。今年はどんどんいきたいと思います」と力を込める。「今年は体重も増やして臨んでいます。実は最近少し減ってきているのですが、僕の中では想定内にキープできています」と自信をのぞかせる。
チームトップの四球&犠打数…仁志コーチ「打数が増えず、打率が下がりにくい」
近年、日本プロ野球では3割打者の価値が高まっている。昨季、パ・リーグで規定打席をクリアしてシーズン3割をマークしたのは.304のソフトバンク・牧原大成内野手ただ1人。セ・リーグも.309の広島・小園海斗内野手、.301の巨人・泉口友汰内野手の2人しかいなかった。
仁志敏久野手チーフ兼打撃コーチは「シーズン打率3割の可能性は十分あります。それこそ、首位打者だって狙える位置にいます」と高く評価する。「昨年は規定打席にわずかに足りず、本人としては年間を通して戦ってみないと、どうなるかわからないという不安があると思いますが、あいつの場合は四球、送りバントも多いので、打数が増えず、打率が下がりにくい。1打席を大事にする選手なので、最終的にいい成績が残せるだろうと思います」と付け加える。35四球、15犠打もチームトップの数字だ。
巨人での現役時代に強打の二塁手として活躍した仁志コーチは、惜しくもシーズン打率3割を達成できなかったが、1999年と2000年には2年連続で打率.298。いずれも、あと1本凡打がヒットに変わっていたら、3割に到達していた。そんな経験を踏まえ、「滝澤には(シーズン3割を打つと)宣言した方がいいぞと言っているのですが……あいつは性格的にしないですね」と笑う。
選手間投票でオールスターに選出
守備では遊撃で44試合、二塁で28試合にスタメン出場している。どちらを守っても、忍者のような身のこなし、強肩、広い守備範囲でスタンドを沸かせる。ゴールデン・グラブ賞7回を誇る名手・源田壮亮内野手を差し置いて、遊撃の守備に就くケースも増えているほどだ。
昨年監督選抜で初出場したオールスターにも、今年は二塁手として選手間投票で選出された。普段からチームメートとして、あるいは敵として滝澤のプレーを目の当たりにしているプロの多くが、リーグナンバーワン二塁手と認めていることを意味している。
小柄な体格も「この体でやっている以上、小さくてもプロでできるってところを見せることが、僕の使命だと思っています」とポジティブにとらえる。スターへの階段を軽やかに駆け上がっている。
(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)