佐々木朗希が「苦笑い」した意味 剛速球ショーに感じた“余裕”…濃厚で濃密な2年目の戦い

ヤンキース戦に先発したドジャース・佐々木朗希【写真:黒澤崇】
ヤンキース戦に先発したドジャース・佐々木朗希【写真:黒澤崇】

佐々木朗希は後半戦初戦で5回2/3で5奪三振5安打1失点の好投

【MLB】ドジャース 2ー1 ヤンキース(日本時間18日・ニューヨーク)

 あの苦笑いは何を意味するのか。

 ドジャース・佐々木朗希投手の試合後の囲み取材。ヤンキースのエース・コールとの投げ合いを終えたばかりの剛腕に、報道陣から「来年はオールスターに?」という問いが飛んだ。ちょっと気の早い質問に、24歳はフッと思わず吹き出した。

「フッ(笑)。そうですね、はい、まぁ頑張ります」

 照れ隠しのような笑みを浮かべ、短く言葉を紡いだ。しかし、その言葉の裏には、メジャーという最高峰の舞台で、一歩一歩這いつくばりながらサバイバルを生き抜いている24歳の、リアルな実感がこもっていた。

 この日のマウンドは見事なものだった。初回2死、大砲ゴールドシュミットへの初球で放ったフォーシームは、メジャー自己最速となる「101.8マイル(約163.8キロ)」を叩き出した。終わってみれば、フォーシーム41球のうち100マイル(約160.9キロ)超えが実に21球。投げ込んだストレートの半分以上が160キロを超えていた計算になる。まさに「剛速球ショー」だった。

 さらに、この日の佐々木を支えたのは代名詞のストレートだけではない。30球を投じたスプリットでも15球でスイングを誘うなど、切れ味は抜群だった。5回2/3を投げて5奪三振、5安打1失点。あと1死でクオリティスタート(6回以上、自責点3以内)というところでマウンドを譲り、勝利投手こそつかなかったものの、その内容はかつてないほど濃密だった。

ヤンキース戦に先発し、6回途中でマウンドを降りたドジャース・佐々木朗希【写真:黒澤崇】
ヤンキース戦に先発し、6回途中でマウンドを降りたドジャース・佐々木朗希【写真:黒澤崇】

メジャー自己最速163.8キロ「力強さはあった。強い真っ直ぐが投げられてるなと思っていました」

 本人も手応えを口にする。「セカンドに牽制した時に(電光掲示板に表示された)後ろの数字が見えて、力強さはあった。強い真っ直ぐが投げられてるなと思っていました」。この日、マスクを被ったのは若き捕手ラッシング。その巧みなリードにも感謝を忘れなかった。「ボール先行になったけれど、キャッチャーが上手くリードしてくれて早めにカウントを立て直せた。変化球自体も今日は良かった」。

 今シーズン、佐々木は決して順風満帆だったわけではない。4月までは試練の連続だった。1勝2敗、防御率6.35。22回2/3を投げて15四死球と制球力が影を潜め、マウンド上で苦悩する姿が目立った。しかし、夏を迎えて変貌を遂げる。7月はここまで14回2/3を投げて13奪三振、与えた四球はわずか「4」。劇的に投球内容を向上させている。

 その要因を本人は「下半身の使い方を見直した」と語る。「1試合だけなので完全に良いとは言えないですが、下半身の使い方を見直して、トレーニングから意識づけをしてきた。フォームが(良い位置に)あったから、強く投げても結果的に押し込めたし、ストライクを取りにいった時もスピードが落ちなかった」。

 後半戦の開幕投手を任されたことについても、「オールスター前のローテーションの兼ね合いや、順番的な問題もあると思う」と冷静に分析しつつ、「少し(球宴中の)休みがなくなったな、と思いながら(笑)」と、ジョークを交える心の余裕も出てきた。

 とはいえ、ドジャースの先発ローテーション争いは、これからさらに激しさを増していく。左肘の手術を受けて戦線を離脱しているエース左腕、ブレイク・スネルが18日(同19日)にマイナー戦で実戦復帰する予定だ。順調にいけば8月中にはメジャーの舞台に戻ってくる。

 冒頭のやりとり。サバイバルの日々を送る24歳にとって、1年後という「そんなに先の話」は見通せないのが正直なところだろう。毎日が自らの価値を証明するための戦いであり、一喜一憂している暇などない。だからこその「苦笑い」だったのだと思う。

 それでもだ。昨年は右肩のインピンジメント症候群で約4か月の戦線離脱を経験したが、この日はサイ・ヤング賞右腕のコールと互角に投げ合い、そしてスネルの復帰を背後に感じながら、メジャー最強軍団のローテーションを守っている。他球団ならエースを張れる男たちがひしめくドジャースだからこそ、1試合の重みは日本時代とは比べものにならない。将来のエース候補と期待される剛腕が、今まさに「濃厚で濃密なメジャー2年目」を全身で吸収しながら送っていることは間違いない。

(小谷真弥 / Masaya Kotani)

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