DeNA時代に抱え込んだ重責、今永昇太の告白「自分で自分の首を」 “エース”の肩書きを外して3年…カブスで見つけた立ち位置

カブス・今永昇太が語った「ビジョン」とは【写真:ロイター】カブス・今永昇太が語った「ビジョン」とは【写真:ロイター】

前半を終えて5勝8敗、防御率4.17…「やるべきことが明確なんで」

 横浜から海を渡って3年目。今永昇太投手を擁するカブスは、貯金を12に増やして前半戦を終えた。32歳左腕は19試合に先発し、5勝8敗、防御率4.17。取り上げられやすい成績は決して満足いくものではないが、その一方で自身が目指す「監督のニーズにうまくフィットする」役割は十分に果たしていることを別の数値が示している。今永の目に映る「この世界(メジャー)で活躍するためのビジョン」とは……。

 開幕から1か月半ほどが経過した5月中旬。本拠地リグレーフィールドで、あるいは敵地で、次の登板に向けて準備を重ねる今永の姿は、“伸び伸び”という形容詞がぴったりハマる印象を受けた。正直なところ、5月は8失点(18日ブルワーズ戦)、7失点(24日アストロズ戦)、5失点(29日カージナルス戦)と大量失点が続き、マウンド上で何度首を捻ったことか。それでも“伸び伸び”を貫けたのは「やるべきことが明確なんで」と理由について説明する。

「自分がもっとこうなれば、この世界で生き残れる、活躍できるっていうビジョンが見えているので。できるできないは別にして、これを継続していれば活躍できるっていうビジョンが見えている。だから、見る人からすると、そういう風に見えているのかなと思います」

 左腕の目にはどんな「ビジョン」が見えているのか。今永は「普通に怪我なくシーズンを戦えたら、絶対数字はついてくる。まずは162試合を怪我なく投げきることが大事」と切り出した。

「メジャーリーグって、もちろんプレーオフの勝たなきゃいけない試合で投げる、そこで力を発揮することも大事ですけど、やっぱり162試合を戦いきるための1ピースとして、監督の頭を悩ませることなく存在しているだけでも、それも十分な貢献になるんじゃないかと思うんです。いろんなタイプ、いろんなパターンがあっていいと思うので、僕はやっぱり監督の、チームのニーズにうまくフィットする、そういう選手になる必要はありますね」

19先発、108投球回、QS7回が示す価値とは…

 

 5月18日(日本時間19日)の本拠地ブルワーズ戦。自己ワーストタイの8失点を喫し、4回1/3で交代を告げられた左腕は、首を横に振りながらダグアウトへと引き返した。「球数的には7回くらいは投げられた。そういうところでのチームへの貢献ですよね。もちろん負けちゃダメ。でも、点を取られたら取られたなりに、自分が(チームのために)できることはあったのではないか。それができなかったのが、ちょっと悔しいですね」。試合後に、こう振り返っている。

 その言葉を頭に置きながら前半戦の成績を見てみると、今永は自身が目指す方向にしっかりと歩を進めていることがわかる。19先発、108投球回、クオリティスタート(6回以上を投げて自責点3以下・QS)7回、105奪三振は、いずれもチームトップ。そして、9回あたりの与四球数(BB/9)は先発投手で最少だ。こうした数値が示す投手像とは、まさに左腕が描く「開幕から怪我なく先発ローテを守り、前半戦を戦いきるために監督の頭を悩ませることなく存在した投手」と言える。

 確かに5勝では物足りないと感じる人もいるかもしれない。それでも、先発ローテの顔ぶれが一人、また一人と入れ替わる中、5試合に一度、必ずマウンドに上がってくれる姿は、クレイグ・カウンセル監督にとって心強いものだっただろう。

 はたして、DeNAにいた頃も同じ考え方をしていたかというと、「チームのため」という気持ちは一緒でも、少し性質を異としたようだ。「日本の時は、やっぱりこう、良くも悪くも背負いすぎていたっていうのはありますね」と横浜での日々を振り返る。

今永はDeNA時代を「背負いすぎていた」と語った【写真:荒川祐史】今永はDeNA時代を「背負いすぎていた」と語った【写真:荒川祐史】

 2015年ドラフトで1位指名を受けて入団したDeNAでは、ルーキーイヤーから即戦力として活躍。気が付けば“エース”と呼ばれる存在になっていた。誰から言われた訳でもないが、真っすぐにチームを想う気持ちが増すとともに、日々の勝敗に対する責任を感じる自分がいた。

「自分に関係のない、自分が投げていない試合だったとしても、何か自分がやれることがあったんじゃないかっていう風に思っていました。そういう考え方は間違いじゃないと思うんですけど、やはり自分で自分の首を絞めてしまって、責任を負いすぎたところもあったので」

メジャー移籍後に消えた気負い「自分が何か背負いすぎる必要はない」

 カブスに移籍し周りを見渡すと、それまで出会ったことがない素晴らしい才能の持ち主がここかしこに溢れていた。自分が求められる役割とは何か、自分の存在が評価される役割とは何か。そう考えた時に見えたのが「生き残るためのビジョン」だった。

「メジャーではたくさん素晴らしい選手がいますし、自分が何か背負いすぎる必要はないと感じているんで、自分のできる仕事にフォーカスしています」

 目指すべき姿が見えているからこそ、1年契約の現状に焦ることはない。シンプルだが、まずは怪我をしないで1シーズン戦い抜くこと。「もっと上手くなりたい」と投球を磨き続けること。その積み重ねが成績となって数字に表れ、監督やチームからの信頼を獲得することにも繋がる。

「現状に満足していたら、多分これからのプロとしての寿命は短くなってしまうと思うので。もっともっと上手くなりたい、なるためにはどうしたらいいかっていうのは、考え続けていく必要はあるなと感じています」

 17日(同18日)から始まる後半戦も、ビジョンと向上心を持って、今永はマウンドに上がり続ける。

(佐藤直子 / Naoko Sato)

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