山本由伸を「心配する必要なかった」 自己ワースト失点→初完投…専門家が見た「アドレナリン分泌」

日本ハム、ダイエーなどでNPB通算89勝を挙げた武田一浩氏
【MLB】ドジャース 8ー2 ヤンキース(日本時間20日・ニューヨーク)
ドジャース・山本由伸投手は19日(日本時間20日)、敵地で行われたヤンキースとのダブルヘッダー第1戦に先発し、9回2失点でレギュラーシーズンではメジャー移籍後初の完投を果たし、今季10勝目(6敗)を挙げた。前回登板の11日(同12日)のダイヤモンドバックス戦では自己ワーストタイの6失点(6回)を喫していたが、わずか8日間でいかにして“復調”したのだろうか。
この日は前日18日(同19日)の同カードが雨天中止となったことを受けて、ダブルヘッダーで行われた。その第1戦を1人で投げ切り、リリーフ陣を第2戦へ温存することができた山本の貢献度は大きかった。
もともと、前回登板での6回6失点についても、現役時代に日本ハム、ダイエー(現ソフトバンク)などでNPB通算89勝を挙げた右腕で、メジャー中継の解説などを務める野球評論家・武田一浩氏は「不運な当たりのヒットが多く、ボールは悪くなかった。心配する必要は全くない。年間30試合先発していれば、こういう日もあります」と断言していた。
加えて、この日の山本について「ストレートが良かった。少し甘いコースでも押し込めていたので、打球が飛んでいなかった」と武田氏は評し、9回4安打7奪三振無四球2失点の快投を称えた。
武田氏は「山本も、2日前の佐々木朗希も、非常にいい投球でした。敵地とはいえ、ヤンキースタジアムは日本人から見ると野球の聖地みたいな存在ですから、アドレナリンが分泌されるのではないでしょうか。彼らは松井秀喜さんがヤンキースで活躍するのをテレビで見ていた世代でもありますから、ヤンキースタジアムというのは特別でしょう」と指摘する。確かに、佐々木も17日(同18日)の同戦で5回2/3を5奪三振1四球1失点(自責点0)に抑える“今季1番の投球”を披露。山本はメジャー初年度の2024年6月7日(同8日)にも、ヤンキースタジアムで7回2安打無失点の快投を演じている。

ワールドシリーズで過去12回対戦、ドジャースもかつてはNYが本拠
この両チームの対戦は、両監督にとっても特別だ。ドジャースとヤンキースはワールドシリーズで、大谷翔平投手や山本が活躍した2024年を含めて過去12回対戦し、ヤンキースがそのうち8回世界一の座に就いている。ドジャース自体が1957年オフにロサンゼルスへ移転するまで、ニューヨークのブルックリン地区を本拠地にしていた因縁もある。
特に2日前の試合と、この日の第1戦に連敗したヤンキースのアーロン・ブーン監督は、3タテの危機に立たされていた第2戦では必死だった。1点リードの8回に同点とされ、なおも1死一、二塁のピンチで大谷を打席に迎えると、守護神のクローザーのデービッド・ベッドナー投手を前倒しで投入。相手に勝ち越しを許さず、逆にその裏、ジャズ・チザムJr.内野手の14号ソロで競り勝った。武田氏は「リーグは違うとはいえ、宿敵のドジャースにスイープされようものなら、ファンやメディアが黙っていないでしょうからね」とうなずく。
一方、ドジャースのデーブ・ロバーツ監督も、1点ビハインドの4回の守備で、この回から登板したエドガルド・エンリケス投手が2死一、三塁のピンチを背負うと、すかさずジャック・ドライヤー投手にスイッチ。2連勝後にもなお、スイープに執念を見せていた。
ロバーツ監督はレッドソックス現役外野手時代の2004年、ヤンキースとのリーグ優勝シリーズに臨み、0勝3敗で迎えた第4戦、1点ビハインドの9回無死一塁の場面に代走で出場し、初球に二盗成功。同点打、延長12回サヨナラ勝ち、以後4連勝でヤンキース撃破、さらにはレッドソックスにとって86年ぶりの世界一へと繋げたことは、今も語り草だ。
武田氏は「ワールドシリーズもやはり、この対戦を見たいですね。主砲のアーロン・ジャッジ(外野手)を故障で欠くヤンキースは非常に厳しい状況ですが、いずれ復帰するでしょうし、ここから補強もすると思うので、まだわかりませんよ」と指摘する。選手の熱量、力量が“ワンランク上がる”ワールドシリーズの実現を楽しみに待ちたい。
(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)