お尻に死球も笑顔だったワケ「せっかくなので…味わいたい」 大山悠輔にとっての“藤浪晋太郎”

DeNA・藤浪晋太郎から死球を受け、笑顔を見せた阪神・大山悠輔【写真提供:産経新聞社】DeNA・藤浪晋太郎から死球を受け、笑顔を見せた阪神・大山悠輔【写真提供:産経新聞社】

同学年の藤浪晋太郎と対戦した大山悠輔「阪神時代、僕は後ろを守っているだけでしたけど…」

 甲子園での再会に懐かしさを感じながら、打席では真剣勝負を挑んだ。阪神の大山悠輔内野手が、22日に甲子園で行われたDeNA戦に「5番・一塁」で出場し、3打数1安打2打点の活躍。6回に一時勝ち越しとなる2点適時打を放ち、試合後はお立ち台に上がり歓声を浴びた。3打席目まで快音は響かなかったが、相手先発・藤浪晋太郎と対峙した時間は感慨深い打席になった。

 つくば秀英時代は高校通算27本塁打を記録し、投げても140キロを超える直球を武器に1年生から活躍した。「僕も甲子園、甲子園と口にしていましたが、そこには届かなかった」。最終学年となった3年夏は県大会の初戦で敗れ、甲子園の地を踏むことはできなかった。

 高校野球を引退した大山が迎えた、少し早い夏休み。ふとテレビをつけると、同級生のライバルたちが甲子園で死闘を繰り広げていた。2012年夏の甲子園。決勝戦は大阪桐蔭が7-4で光星学院を破り、史上7校目となる春夏連覇を達成。後にチームメートになる藤浪、北條史也が脚光を浴びていた。

「僕も高校時代にある程度、自信を持っていました。当時はプロに行きたいという思いも強かったです。でも、同世代の選手が活躍する姿を見て、これじゃダメだと実感しました。このレベルが甲子園なのかと……」

藤浪と高橋のマッチアップに甲子園は異様な空気に包まれる

同世代の元チームメートとの対決。思い入れもある【写真:イワモトアキト】同世代の元チームメートとの対決。思い入れもある【写真:イワモトアキト】

 この年代は“大谷・藤浪世代”と呼ばれ、そのなかでも「最強世代」大阪桐蔭のエース・藤浪は圧倒的な存在感を放っていた。「同世代で野球をやってる選手だったら、誰もが憧れた選手。僕らの世代だけじゃなくて全ての野球ファンがそう思っていますよ」。当時の大山にとって、藤浪はプロになるための指針を示してくれた相手だった。

 そして迎えた7月22日。DeNA・藤浪は2022年9月18日ヤクルト戦以来、約4年ぶりに甲子園のマウンドに上がった。古巣相手には初登板。エース・高橋遥人とのマッチアップということもあり、球場は試合開始前から異様な空気に包まれていた。

 プロ入り後も高卒から3年連続2桁勝利を挙げ、メジャーリーグの舞台にも立った右腕との初対戦。「そういう選手といざ、こういう世界で同じチームで野球ができましたし。阪神時代、僕は後ろを守っているだけでしたけど、今度は敵チームとして戦えるというのは嬉しいこと」。普段は寡黙な男が、少しだけ頬を緩めた。

「うーん……楽しむとは少し違いますけど。なんだろう。もちろん、試合なので勝つために戦う相手。でも、そういう意味では、せっかくなので1球1球を味わいたい」

2打席目はすっぽ抜けたカーブが左臀部に直撃も笑顔で応じる

藤浪が安打を放ち、一塁ベースで大山と並ぶ場面も【写真:イワモトアキト】藤浪が安打を放ち、一塁ベースで大山と並ぶ場面も【写真:イワモトアキト】

 注目の対決はいきなり訪れた。初回2死一、二塁の好機で迎えた第1打席。カウント2-2からの6球目。外角低めのカットボールにバットは空を切り、三振に倒れた。

 2打席目は3回2死。2球目のすっぽ抜けたカーブが左臀部に直撃。スタンドからは大ブーイングが起こったが、帽子を取って謝る藤浪に対し、大山は左手を挙げ笑顔で応じた。3打席目は5回1死から真ん中高めの151キロ直球をはじき返すも、遊ゴロに倒れた。

 計3度の対決は2打数無安打。軍配は藤浪に上がったが、大山にとっては感慨深い打席になった。今後、再び対戦する可能性もある。「そこでまた打てるようにしっかりやっていきたい」。チームを支える虎の主砲は、淡々と対戦を振り返っていた。

 試合後、超満員のスタンドから降り注ぐ歓声を浴びながら、その表情は充実感に満ちていた。歩んできた道は違えど、交わった運命の糸。かつての指針であった男を超え、さらに力強い打球を飛ばすために、大山のあくなき探求心が尽きることはない。

(橋本健吾 / Kengo Hashimoto)

RECOMMEND

CATEGORY