メッツは地区最下位と低迷、今夏のトレード市場では売り手に
メジャーリーグは8月3日(日本時間4日)のトレード期限まで残り10日を切った。大富豪スティーブ・コーエン・オーナーの潤沢な資金力を背景に「常勝軍団」の構築を目指してきたメッツが、今まさに大きな岐路に立たされている。
鳴り物入りで集められた3億5470万ドル(約579億円)の巨大戦力が期待通りの結果を残せず、借金18の地区最下位と低迷。編成の舵取りを担うデビッド・スターンズ編成本部長の表情には、隠しきれない落胆と苦悩の色が滲む。24日(日本時間25日)に会見場に現れたスターンズ編成本部長は、厳しい現実を真正面から受け止めていた。
「今シーズンが私たちが期待していた通りに進まなかったこと、そしてこのような状況に置かれていることに対しては、非常に落胆していますし、失望しています」
フアン・ソト外野手を中心に豪華なロースターを組み上げながらも、シーズンを通して投打の歯車は噛み合わなかった。「原因がたった一つのことだとは思いません。期待外れの成績は、複数の要因が重なり合い、互いに悪影響を及ぼし合った結果です」と語るスターンズ編成本部長。「感情に浸っている時間はない」と自分に言い聞かせるように言葉を続けた。
「(個人的な感情を抱く)段階がどうであれ、今は非常に忙しい時期なので、個人的な感傷に浸る時間はありません。今の私の仕事は、組織の利益を最優先に考えて動くことです。デッドラインまで残り9〜10日という段階であり、現時点でいかなる選択肢も排除するつもりはありません」
球団首脳陣が下した決断は、かつての主力や実績あるベテランたちを手放す「売り手(セル)」への舵切りだった。
「僕のコントロール外」 渦中のホームズが明かす本音
解体の足音が近づくクラブハウス内にも、独特の緊張感が漂う。今季終了後にフリーエージェント(FA)となり、トレード移籍の筆頭候補と目されているのが、故障からの復帰間近となっている右腕クレイ・ホームズだ。
リハビリ登板を終えたホームズは、「またマウンドに戻れて、メジャーでの試合復帰に近づいていること自体はすごくワクワクしている」と前置きしつつも、自身の不透明な去就について複雑な胸中を明かした。
「(別のチームで投げる可能性があることは)確かに妙な感覚だよ。怪我のタイミングもそうだし、今のチームの置かれた状況も含めて予期せぬ出来事が重なった。自分の将来に何らかの影響があることは分かっているけれど、どこで投げることになっても最高の投球をすることだけに集中したいんだ」
メッツとの契約延長交渉が進んでいない現状についても覚悟を決めている様子。「選手としては『去る時には、来た時よりも良い状態にしてチームを去りたい』という思いがある。僕がいつ去るにしても、ここでの時間が良いものだったと言えるようにできる限りのことをしたい」と静かに語った。
グリーン監督代行「目の前の試合に集中するのが一番だと理解しているけど」
2007年に日本ハムでプレーしたアンディ・グリーン監督代行もまた、揺れる選手たちの精神面を気遣っている。連日のようにメディアで移籍の噂が報じられる過酷な環境下で、指揮官は選手たちに寄り添う姿勢を見せる。
「家族が関わってきたり、住む場所や自分の生活がかかってくると、どうしてもそういったことが頭をよぎってしまうのが人間というものだ。選手たちも『目の前の試合に集中するのが一番だ』と理解しているけど、人間の性だから完全に頭から追い出すのは簡単ではない」
スターンズ編成本部長は「2027年にも競争力を維持することを念頭に置かなければならない」と語り、チーム解体が単なる後退ではなく、数年後の再建に向けた「苦渋の決断」であることを強調する。フランシスコ・リンドーア内野手ら一部の主軸を「チームの核」と位置づけつつも、その他の実績ある高額年俸選手たちを放出し、若手有望株の獲得へと動く構えだ。
巨額の資金を投じた「ドリームチーム」の夢は破れ、メッツは再び厳しい現実に直面している。激動のトレード期限に向け、スターンズ編成本部長の苦悩は続く。
(小谷真弥 / Masaya Kotani)