30回目を迎えたもう一つの“球宴” きっかけは淡路大震災…主催者がレジェンドOBに託す思い

86歳の張本勲氏は申告敬遠で出塁、77歳の川藤幸三氏は打席に立つも…
プロ野球のレジェンドOBが集結する「サントリードリームマッチ」が27日、東京ドームで行われ、3万5196人の観客が詰めかけた。サントリーグループが主催し、毎夏の恒例となっている同大会の観客動員は、通算125万1266人(1試合平均約4万363人=1998年には東京、大阪で計2試合開催。2011年は東日本大震災発生、2020年は新型コロナウイルスの感染拡大で中止)に上り、今年はYouTubeとX(旧ツイッター)でライブ配信、BS日テレで生中継が行われた。長年にわたって人気を博している理由は、どこにあるのだろうか。
レジェンドOBが2チームに分かれ、一夜限りの“オールスター戦”を繰り広げるスタイル。今年は「ザ・プレミアム・モルツ球団」が9-7で「ドリーム・ヒーローズ」に競り勝った。
サントリースポーツ株式会社・経営企画部の江澤尚紀課長は「人気の理由の1つは、現役を引退したばかりの若いOBに毎年加わっていただけていることだと思います」と分析。「30回の長い歴史によって、若いOBの方々に“憧れの大会”と思っていただけているようです。今年初出場の澤村拓一さん(元巨人、ロッテ、レッドソックス)などは『少年野球をやっていた頃憧れていた選手に、会える場所』とおっしゃっています。選手同士で写真を取り合う姿もよく見られます」と語る。
第1回から参加している79歳の山本浩二氏(元広島)が、ザ・プレミアム・モルツ球団の監督を務め、代打で打席にも立った。一方、澤村氏、和田毅氏(元ソフトバンク、カブス)、坂口智隆氏(元近鉄、オリックス、ヤクルト)、平石洋介氏(元楽天)は初出場。選手としてプレーしなかった原辰徳氏(元巨人)、江川卓氏(同)もユニホーム姿でオープニングセレモニーに参加した。試合前のグラウンド上で、下柳剛氏(元日本ハム、阪神など)が恐縮しながら原氏に声をかけ、満面笑みでツーショット写真に収まる一幕もあった。
86歳の張本勲氏(元巨人、ロッテなど)は代打で登場し、申告敬遠されて出塁。77歳の川藤幸三(元阪神)氏は口に含んだ水をバットに吹きかけて代打で打席に立ったものの、初球の前に“代打の代打”を送られてベンチに下げられ、爆笑と歓声を巻き起こした。
上原浩治氏は両チームにまたがり登板、G.G.佐藤氏は落球披露
第1回が行われたのは、1995年7月6日。同年1月17日には阪神・淡路大震災が発生していた。前出の江澤課長は「阪神・淡路大震災の発生をうけて、野球界の皆様の方から『被災者のために何かできないか』とお声がけをいただき、当社も一緒に始めた経緯があります」と説明。「当時は売り上げの一部を消防署へお送りし、その後も東日本大震災、熊本地震などの復興などに協力させていただきました。今年は子どもたちが野球を続けられる環境を整えるため、少年野球教室の開催、木製バットの素材となるアオダモの育成基金への寄付などに売り上げの一部を当てています。こうした姿勢に、選手の皆様から共感をいただいているのではないかと思います」と見解を示した。
ファンを楽しませる“仕掛け”も年々、完成度を増している。上原浩治氏(元巨人、レッドソックスなど)は5回、ザ・プレミアム・モルツ球団のリリーバーとして登板し1イニングを無失点に抑えると、その裏に“緊急トレード”でユニホームを着替え、ドリーム・ヒーローズの一員としてマウンドへ。こちらも1回無失点に抑えた。また、2008年の北京五輪に野球日本代表として出場し、2度フライを落球したG.G.佐藤氏(元西武、ロッテなど)が、今大会で落球を披露するのも毎年の定番となりつつある。
今年は野球日本代表「侍ジャパン」監督就任が発表されたばかりの井口資仁氏(元ダイエー、ホワイトソックス、ロッテなど)が、4安打2打点の活躍でMVPを獲得。「就任のお祝いをいただいたと思っています」と感慨深げだった。
温かい声援と拍手に包まれ、「この雰囲気でジャパンの試合ができたらいいのですが、なかなか、こういう雰囲気ではできませんよね……」と苦笑した井口氏。この大会がプロ野球OBにとって非常にインパクトのある存在として続いていくことは、間違いなさそうだ。
(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)